エミリオ・サルガーリ関連行事 | MTFのAkemiのblog イタリア児童文学・皆既日食・足摺岬が好き

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私は、イタリア児童文学が大好きで、皆既日食も大好きで、足摺岬も大好きな、団塊の世代に属する元大学教員で、性別はMTFです。季節の話題、お買い物の話題、イタリア語の勉強のしかた、新しく見つけたイタリアの楽しい本の話題などを、気楽に書いていこうと思っています。

私の尊敬するイタリア文学者の長野徹さんから、文化行事の案内のお便りがありました。

行事というのは、イタリアで19世紀末から20世紀初めごろに活躍した冒険小説家エミリオ・サルガーリに関する行事で、2月7日と8日に東京九段(靖国神社の南)のイタリア文化会館で開かれます。

サルガーリ(サルガリと紹介されることが多いですが、サルガーリと「ガー」にアクセントを置くのが本来の呼び方だそうです)は、邦訳がほとんどないので、日本人にはあまり知られていませんが、代表作『モンプラチェムの虎』(別名『マレーシアの虎』)をはじめとする、異国の海賊が活躍する冒険小説をたくさん書き残した人で、イタリアの子どもたちのあいだでは、お説教くさい『クオーレ』のエドモンド・デ・アミーチスなんぞよりずっと人気の高い作家です。

『モンプラチェムの虎』の主人公サンドカンは、19世紀半ばのマレーシア人ということになっていて、イギリスの植民地支配者を向こうにまわして、英雄的に戦ってみせるのが小説の見せ場です。世界の海を支配したイギリス人に対して一矢報いてやりたいといった、当時のイタリア人の願望の具象化ではないかと思える面もあります。

日本人は、太平洋戦争の開戦前後の時期に、同じマレーシアを舞台に「ハリマオ」こと「谷豊」という伝説的英雄を生み出しましたが、「ハリマオ」はマレー語で虎の意味ですから、おもしろい符合です。谷豊は、日本人として生まれ、日本で教育を受けたけれど、幼少時以来マレーシアでの生活が長かったせいで、半ば現地人化しており、妹を殺した華僑の中国人に対する怨みから、現地の盗賊団のリーダーとなり、戦争の始まる少し前に、日本の軍人に説得されて日本軍の侵攻作戦を有利にするための特殊工作員となりました。そして、シンガポール陥落後まもなく、シンガポールの病院でマラリアのために若くして亡くなっています。「戦病死」した「軍属」と認定されて、靖国神社に祀られています。

当時、日独伊三国同盟が結ばれていたわけですが、日本人でイタリア語の読める人は今以上に少なかったですから、サルガーリの小説のことが谷豊の耳に入っていたとは思えません。谷豊が「ハリマオ」と名乗ったのは、まったくの偶然の一致と思われます。

2月7日には、18時30分から講演会があり、長野さんが「エミリオ・サルガリ~人と作品」というお話をされ、マリア・エレナ・ティシさんという方が「”船長”の日本への冒険と21世紀」というお話をされるそうです。

翌2月8日は、映画上映会で、19時から、1976年にイタリアで放映されたテレビドラマ「Sandokan」の、第一話と第二話が上映されるそうです。

入場は無料ですが、Eメールでの事前申し込みが必要です。申し込みのしかたは、イタリア文化会館のホームページに出ています。

サルガーリ関連の催し物は、この2日間だけではなく、2月7日から18日までの昼間にはサルガーリの本の表紙・挿絵のパネル展も開かれるそうです(ただし、日曜休館)。