贖罪/イアン マキューアン
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 依然レビューを書きましたURLつぐない 』の原作です。

 あらすじはこちらに書いていますので、矢印を見ていただけると嬉しいです。



 いやー、すごいですね、これ!

 映画化は無理だろう、と思われたのは無理もありません。


 あとがきにもありましたが、私もイアン・マキューアンならこれがもっとも良いのではないでしょうか。

 ブッカー賞を『アムステルダム』で受賞しているけど、これでは受賞できていない。


 ・・・・なんで??

 調べてみたらこの年は『ケリー・ギャングの真実の歴史』というのが受賞したようです。


 文学好きの妄想癖のあるブライオニーが犯してしまった罪。

 赦してもらおうとは思っていないけれど長い月日を経て

 彼女なりの精一杯の努力をします。


 映画のブライオニーは・・・ちょっと好きになれなかったのですが(見ているだけでイライラする)

 原作のほうが共感が持てました。


 映画も原作に忠実なのですが、ぶちぶちカットされている部分があります。

 まぁそれは時間の関係上仕方ないことだけど、ひとつ、ここはカットしたらいかんだろう!!

 という箇所がありまして・・・。


 償おう、と、姉セシーリアと同じ看護師となるブライオニー。

 見習い看護師はとてつもなく、厳しい。


 戦場の描写なんて文学にはいくらでもありますが、

 看護師の視点からというのは少ないような気がします。『風と共に去りぬ』とかには一切描かれていないし

 あったとしても、深い部分までは描かずに、兵士と看護師の愛、のような。



 傷や怪我人の描写が生々しく、やっぱりこれって反戦意識なのかな?

 この4字で済ませてはならない何かがあります。

 


 ブライオニーは病院から自分の犯した罪をモデルにした小説を出版社に送ります。

 結局掲載はされないけれど、長い手紙が送られてくる、この場面。

 解説にもありましたが・・・・これを読んで読者は重大な”あること”に気付くのです。



 現代イギリス小説の傑作。

 イギリス文学を濃縮した小説。


 私はそう呼びたいです。

 いろーーーんな文学者が比喩などで登場します。


 『愛の続き』では理系の知識を見せてくれたマキューアン。

 小説家ということは、文系なんだろうなと思ったけれど、理系の登場人物をここまで描ける凄いひと。



 暗いし、異常なモノを描くのが得意。



 愛する人か、家族か。

 セシーリアは迷わず愛する人を選んだけど・・・・


 その過程がまったく描かれていないことも興味深いです。

 葛藤、ないわけないもの・・・・。


 哀しすぎて。

 ブライオニーも決して悪意があったわけじゃないの。

 色んな偶然が重なってしまって、

 人の記憶なんてすごく曖昧なもの。


 カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』と同時に読んでいたのですが、

 読後感がなんとも似ています。

 話は全然違うし、まったく違う作家さんなんですけどね。

 既にどちらもBEST BOOK2010ノミネートです。しかもどちらも現代イギリス、という珍しいこと。



 恋愛小説の類になるのかもしれませんが

 一筋縄にはいきません。

 必読。

 こちらも、強くお勧めします。



 最近『初夜』の邦訳が出たため、予約しようと思ったら予約件数凄いことになっているので暫らくは無理だなぁ。

 

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