1835年に刊行された、サマセット・モーム世界の十大小説 に選んだ小説です。バルザックはまだ読んだことがなかったので、まずこれを読んでみることに。
 
 善良にして中流下宿の住人、年収600フランの老ゴリオ氏、年収5万フランの娘たちに全財産を巻き上げられ、野垂れ死にする
 簡潔にあらすじを説明すると、その通り。
 一言で言うと、父性愛がテーマで、2人の娘を異常なまでに可愛がり、娘が全てであったゴリオ爺さんの悲劇です。
 見ていて(読んでいて)、痛々しくなるというか・・・
 もう、ここまでくると愚かな父親としか言えません。

 「娘たちは馬に乗り、馬車を持ち、まるで裕福な老貴族の妾のような暮らしぶりであった。ひどく金のかかる望みごとでも、それを口にしさえすれば父親はいそいそとかなえてくれた。

 こうした贈物の代償としてゴリオが期待したものは、ただすこしばかりの愛撫を娘たちから受けることであった。」


 しかし、彼が娘たちに惜しげもなく注いだ愛情は彼女らの心の底までは届かず、死の間際にも、傍にいてくれない。

 彼は最期のその瞬間までも、娘たちのことしか考えていませんでした。

 2人の娘(デルフィーヌとアナスタジー)は父親に似ても似つかず、美しい顔立ちをしています。言ってみれば、それだけが取り得な気も・・・

 よくシェイクスピアの戯曲 リア王と比較されますが、読んでみてそれは納得。

かなり似ている、とは言えないものの類似している点は多いですね。

 盗作、とまで言われたそうです。

 ご存知の通り、リア王は3人の娘がおり、末娘のコーディリアの愛に気付けなかったことによる悲劇なのですが・・・そもそも、愛を量ろうとするから。

 ゴリオ爺さんは娘は2人ですし、完成度の高さから言っても、やはり『リア王』の方が私は好きです。(そのうちレビュー書きます)



 でもゲーテの『ファウスト』のメフィストフェレスとファウストとも対比されることも多いそうですが、私はそうは思いませんでした。(それにしても『ファウスト』ってどこにでも出てきますね・・・)

 『ゴリオ爺さん』はバルザックの作品を特徴づけ『人間喜劇』を文学の中で孤高ならしめる手法、いわゆる人物再登場法を始めて本格的に採用した点で特筆されます。
 つまり、登場人物が他の小説にも登場する、ってことです。
 最近ではアニメや漫画でも見受けられるけど、繋がってる!これ、私知ってる!とか思えて嬉しくなったりしますよねニコニコ
 ただ・・・バルザックの場合度が過ぎるかも知れませんが、じゃあ、また別の作品も、と手が伸びやすくなるのは事実なので上手いことやったな、という気もします。
 『谷間のゆり』は好みだと思うので、いつかまたこちらも読んでみたいと思ってますラブ


 殆ど書いていませんが、この小説は上流階級に憧れた南フランスからパリにやってきたラスティニャックという青年が主人公で、ゴリオ爺さんの娘の一人、デルフィーヌに惹かれていきます。
 しかし、あまりにも悲惨なゴリオの死。
 彼の葬儀に参列したのは自分と、召使のクリストフ、それに二人の雇われ泣き男だけでした。
 虚偽に満ちたパリ社会の残酷な現実に直面するものも、それでもゴリオの墓地からパリを見下ろし、上流階級を目指し、デルフィーヌのところへ晩餐へ行くことを決めたのでした。
 彼の名は、出世のためならどんな手も使う野心家をさす代名詞となったそうです。

 でも、それはあまりにも・・・・言い過ぎではないかと思うんですけどねあせあせ


 一応「バルザックの長篇小説」となっているようですが、非常に短いです。せいぜい「中篇」くらいではないでしょうか。

 そして、スタンダール(アンリ・ベール)とかよりも読みやすい。

 上巻よりも下巻の方が引き込まれましたkirakria*



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