いつもの鹿島、自爆のガンバ | サッカーの都

いつもの鹿島、自爆のガンバ

 
 フジゼロックス・スーパーカップが国立競技場で行われた。
 今年はリーグ優勝の鹿島と、天皇杯王者のG大阪が対戦。 
  
 G大阪は昨年12月に手術した二川、キャンプ中に右太腿前を打撲した加地と右アキレス腱痛のレアンドロ、そして股関節痛で離脱のチョジェジンが不在。
 「右サイドバック加地の欠場」+「山口・中澤と昨季のスタメンに加えて、即戦力の高木の加入」から3バックを選択した西野監督。これが完全に裏目に出た。 
 
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---11------10---
-------09-------
08------------05
-----07--06-----
**------------**
**-04--03--02-**
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**-----01-----**
11 ルーカス
10 山崎 雅人
09 遠藤 保仁
08 安田 理大
07 橋本 英郎
06 明神 智和
05 寺田 紳一
04 高木 和道
03 山口 智
02 中澤 聡太
01 藤ヶ谷 陽介
  
■3バック
 杉山茂樹氏の好著「4‐2‐3‐1―サッカーを戦術から理解する」を読んだ方ならば、今日の試合展開を予測できたのではないだろうか。
 
 前半のG大阪は、上記のシステム表における「**」の部分をアッサリと突かれてしまった。
 
 伝統のボックス型4-4-2を貫く鹿島には「左にダニーロ&新井場」「右に野沢&内田」という縦関係がある。これに加えて、機動力のあるマルキーニョスと興梠がサイドに流れて、うまくスペースを突いていた。
 G大阪の右サイドは、昨季13試合の出場にとどまった寺田。「先発なら佐々木ではないのか」と思っていたが案の定、寺田は鹿島のサイド2人に囲まれてボールを失う場面が。左サイドの安田は元々攻撃的な選手である上、日本代表の内田が対面するとあっては勝負にかかるだろう。
 この2人が長い縦のサイドラインを激しく上下動するはずもなく、ポッカリとスペースが空いていた。もちろん下がったままでは5バック状態になる。浦和がアジアを制した2007年は、サイドが下がってもリベロ・闘莉王のオーバーラップという飛び道具があったし、2人で勝負を決められるワシントン&ポンテがいた。今季のG大阪では、新加入のチョ・ジェジンとレアンドロが「独力で勝負を決められるタイプ」かもしれないが、ルーカス・山崎・播戸は周りを使い・使われるタイプ。
 
 昨季のほとんどを4バックの中央でコンビを組んだ山口と中澤、そして新加入の高木(清水でも4バックが基本だったはず)の3人で、マルキーニョス&興梠を何度もオフサイドに陥れるほどのラインコントロールを期待するのも酷。
 
 もっと悪かったのは「展開力がある鹿島が相手だったこと」だろう。
 鹿島の中盤には小笠原がいなくとも(ケガで離脱中)、中後がいなくとも(レンタルで千葉へ)、日本代表(候補、としておくべきか)の青木と本山がいる。この2人には、確かな攻守バランス調整力と展開力がある。これに加えて精確なロングフィードを持つCB伊野波がいる。
 マルキーニョス&興梠の決定力ももちろん見事だったが、このプロセスが見逃せない。前半のほとんどで丁寧に「**」のスペースへとパスを出しており、「2vs1」となっているサイドで鹿島が常に勝利した。
 
 もちろんG大阪が3バックのトレーニングを積めば問題ないかもしれないが、確かな展開力を持ったクラブと対戦すると簡単に崩される。もしくは5バックになって、得点を挙げる可能性がどんどん低くなるかだ。
 
京都には「大剛を左サイドバック起用?」「CBタイプが多いのに4バック?」と疑問の声が挙がったりするが、上記と同様の理由のため4バックで進めた方が良いと自分は考えている。

■試合をコントロールする鹿島
 「いつも通り」のプレーをしていたら3点のリードを奪っていた鹿島。あとは何も無理をすることはない。「4枚×2の“赤壁”」をゴール前に築き、前のFWもしっかりと守備をすればOKだ。
 
後半、G大阪はシステムチェンジ。
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-----11--10-----
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-09----------08-
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-----07--06-----
-05----------02-
-----04ー-03-----
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11 播戸 竜二
10 山崎 雅人
09 ルーカス
08 寺田 紳一
07 遠藤 保仁
06 明神 智和
05 安田 理大
04 山口 智
03 パク ドンヒョク
02 橋本 英郎
01 藤ヶ谷 陽介
 
 昨季の良い状態のG大阪に戻った。ただフィニッシュがGK曽ケ端の正面近くに飛ぶことが多く、ゴールラインを割ることができず。リードを奪った鹿島は当然、守備に重きを置いている。昨季は大分に次ぐ失点の少なさを誇っており、簡単に守備は崩壊しない。イレブンはほとんど変わっていないので、信頼関係・連携も十分である。
 
 そして本山を下げて、中後に代わる中盤の重要なサブプレイヤーになると見られる増田 誓志を投入。
 3点差があり、守備固めをしても良い時間…も過ぎた感のある87分になって先に投入したのは田代 有三。
 
 穿った(うがった)見方かもしれないが、これはオリベイラ監督の田代に対する気遣いではないだろうか。今季最大のルーキーと言えど、先に大迫 勇也が出たら田代は気分が良くない。鹿島での実績も経験も田代の方が上。実際に今季の間は、田代の方が出場時間も得点も多くなるだろう。
 「FWの優先順位は田代の方が上だよ」ということを示しつつ、大迫にもプロのピッチを(少しだけでも)経験させる…人心掌握術に長けるオリベイラ監督の思いはこうではないか、と勝手な想像をしてしまった。
 
 G大阪の先行きが不安とは言わないが、鹿島の将来は安定している、とだけは言えそうな試合だった。