裏・アドベンチャーゲーム研究処アワード2009 | アドベンチャーゲーム研究処

アドベンチャーゲーム研究処

アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。

【概要】
前回の裏版。
単なる名指しの反省会とも言えるので、見た目よりポジティブな意味を含む。

裏・アドベンチャーゲーム研究処アワード2008

【埋もれてしまったADV賞】

西村京太郎トラベルミステリー 悪逆の季節 東京~南紀白浜連続殺人事件山村美紗サスペンス 京都鞍馬山荘殺人事件
PSP『西村京太郎トラベルミステリー 悪逆の季節 東京~南紀白浜連続殺人事件』
PSP『山村美紗サスペンス 京都鞍馬山荘殺人事件』
販売・開発 マーベラス・エンターテイメント

何故か今更3DOで発売された作家系ADVをPSPにリメイクしたものの、
案の定にセールスはこけて、見事なまでに埋もれてしまった作品。
それもこれも、DSで同じく山村美紗や西村京太郎などの、
サスペンスドラマなどで有名な原作者のゲームが好セールスを記録しており、
その状況に乗っかる形で発売されたのが原因なわけなのだが…。

そもそもPSPではこの手の作家系は全く発売されておらず、
アドベンチャー自体もキャラクターものを除けば不振を極めており、
その中で“これ”は、まさしく埋もれるべくして埋もれた作品だった。
「DSでも売れたからPSPで」という発想は、あまりにも安易だったわけだ。
マーベラス・エンターテイメントと言えば赤川次郎サウンドノベルという、
作家系でも有名なシリーズを持っているわけで、
なぜそちらではなくこちらを選択をしてしまったのだろうか。
新作でもなく今更3DOのリメイクという点を含めて、はっきり言って意味不明。

(候補 DS『金田一耕介シリーズ』『浅見光彦シリーズ』など)

【ブランド力を落としてしまったADV賞】

探偵 神宮寺三郎 灰とダイヤモンド探偵 神宮寺三郎DS 伏せられた真実
DS・PSP『探偵 神宮寺三郎シリーズ』
販売 アークシステムワークス 開発 ワークジャム

このジャンルではほぼ唯一の老舗に属する『探偵 神宮寺三郎』シリーズも
今年はハードを問わずにかなり活動が活発化したのだが、
如何せん発売スパンが短くなった関係でセールスが落ち込み、
DSiWareではランキングに登場したものの全体で見ればブランド力を落としてしまった。
それもこれもDSに入ってからは8.7ヶ月に一本の新作というハイスパンが原因。

PSP『灰とダイヤモンド』に至っては前作から6ヶ月で発売という、
ファンが付いていけるかも不明な異常なまでに短いスパンで発売され、
更には同時発売に『Ys』や『SaGa』など、
神宮寺と同じく20年近い歴史のシリーズを持ったが登場して層だだ被り。
それに加えて『428 封鎖された渋谷で』のPSP版も発売され、
PSPではただでさえ少ないADV需要も分散させた結果、
右肩下がりに歯止めが利かず見事なまでの埋もれっぷりを披露してしまった。
原因は明らかに神宮寺タイトルを粗製乱造させた会社の方針だが、
内容としては、ここ数年では一番充実していただけに一ファンとして残念。

【最低移植賞】

流行り神DS 都市伝説怪異事件流行り神2DS 都市伝説怪異事件
DS『流行り神DS 都市伝説怪異事件』
DS『流行り神2DS 都市伝説怪異事件』
販売・開発 日本一ソフトウェア

日本一ソフトウェアのアドベンチャーでは最も実績のあった、
『流行り神』シリーズをDS向けに移植した作品…だったわけなのだが、
開発の問題なのか、それとも元々やる気がなかったのか、
はたまた大人の事情なのか、このDSシリーズの発売に縫いこむように、
移植元や他機種の同内容のものを廉価版をリリースするという無茶を強行。
極めつけのフィニッシュブローとして完結篇の『3』が、
PSP向けに『流行り神2DS』の約1ヵ月後に発売されるという駄目押しつきと来る。
言うまでもなく『流行り神DS』のセールスは不振を極めたが、
これはもうどう考えても自身で呼び込んだものとしか思えない。

ゲームのその出来に関しては、追加要素の隙間録が収録されていることを除けば、
シリーズファンがプレイする理由はないのだが、原作をプレイしていなければ楽しいかも。
ただし元々テキストのテンポがかなり遅いのでイライラする可能性もある。

【最低企画賞】

佐賀のがばいばあちゃんDS
DS『佐賀のがばいばあちゃんDS』
販売 トライファースト

この作品に関しては多くを語るまでもないのではないだろうか。
09年時点で明らかにブームは過ぎ去ってしまっている、
『佐賀のがばいばあちゃん』をゲーム化してしまうセンス。
(当時は2度目の映画化が決定していたが、そもそもそれ自体が注目されていなかった)
活字系の原作つきがDSでは売れなくなったピークの時期に発売しちゃうマーケティング。
そしてこの土産物のインスタントラーメンみたいなパッケージ。
正直、何を考えているのかも何を目的に発売したのかも良くわからない。
恐らく存在自体が今年のADV市場最大のミステリ。

【最低続編賞】

該当作なし。

(候補 『THE推理 2009新章』『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』など)

【最低ADV大賞】

ラストバレット超名作アドベンチャーDS レイモンド・チャンドラー原作 さらば愛しき女よ

Maker「FuRyu」

まさかのメーカーそのものが選出。
元々ケータイアプリで活動していた新興メーカーなのだが、
今年に入ってからDS市場に本格参入を発表し、合計3本のADVを発売。

当初発表された『ラストバレット』では、
キャラクターデザインに『狼と香辛料』のイラストで知られる、文倉十を起用。
同時にチャンドラーの世界的な名作『さらば愛しき女よ』のゲーム化も発表し、
新参なりにDS市場へ入り込む努力が見て取れたのだが…
デビュー作『ラストバレット』2作目の『さらば愛しき女よ』ともに、
3時間程度でクリア可能な上に、選択肢の分岐型にしてほぼ分岐なしという仕様で、
もはやアドベンチャーゲームであるべき推理性はほぼ放棄した状態。
どうやらパッケージのフルプライスにしてアプリのノリで作ってしまった様だ。
そのくせ『ラストバレット』では「ミステリー+狙撃+美少女」、
『さらば愛しき女よ』は「推理ゲームをやりつくした人へ…」という
それぞれピンポイントに狙ったキャッチフレーズで、
見事にピンポイントなプレイヤーに肩透かしを食らわせることに成功。
評判は今年デビューにしてかなり悪いものとなってしまった。

個人的に最も最悪なのは、『さらば愛しき女よ』であのフィリップ・マーロウの声が、
織田雄二の「キター」ものまねで御馴染みの山本高広が担当しちゃうそのセンス。
ハードボイルドで芸人の山本はどう考えてもない。有り得ない。
よりにもよって『世界ふしぎ発見!』のゲーム化を
(制作費の抑えられる)アドベンチャーにしちゃう企画力のなさもあって、
実はかなり早い段階でこの部門は「FuRyu」で決定していた。
そのくらい、この2009年では目だって駄目なメーカーだったので、
来年こそ巻き返しを願いたい。今予定してる『快感フレーズ』でな。

【総括】

今年は言っても昨年と比べてリリース数が減少した関係で、
企画時点で妙に独特な作品や、極端に質が悪い作品はそれほどなかった印象。
逆に言えば毒にも薬にもならない作品が多かったとも言えるわけだが、
昨年の『フリーライター橘真希』の様な作品が毎年出てきても困るわな。
本当は最も引っ張ったで賞として『東京トワイライトバスターズ』を入れたかったんだけど、
とうとう今年は発売されなかったので、来年に持ち越し。
えーっと、08年のトーキョーゲームショーで発表した作品だよね、あれ。

【コメント】
これから実家に帰郷するので今年の更新もこれが最後。
読者の皆さん。また来年もよろしくお願いします。



ということで今年のエンディングに相応しい歌を…
と考えた結果、この恐らく誰も知らないマイナーな楽曲を選択。
『銀河旋風ブライガー』の最終回エンディングで、確か歌い手は若き日の山形ユキオが担当。
次回作の『銀河烈風バックシンガー』のOPも歌っていたな。
ま、ちゅーことでこのブログも2009年という帰ることない時代も、
まぶしいばかりに輝いて振り向くこともなくFly Bye!ABAYO!(柳沢慎吾の声で)