アドベンチャーゲーム研究処アワード 2008 | アドベンチャーゲーム研究処

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アドベンチャーゲーム(AVG・ADV)の旧作から新作まで、レビュー+紹介を主として取り上げるブログ。(更新は不定期)
取り上げる範囲は家庭用のみです。

【概要】

2008年リリース作品を私が独断と偏見で選出。

対象となる作品は、2008年度発売の”新作”ADVであること。


【Best DS Adventure Game】


該当作 なし


2008年は2007年に『西村京太郎サスペンス』『逆転裁判4』などの大ヒットもあり

市場拡大に応じて月間平均3本以上のADVがリリースされることとなった。


しかし、それと反比例して今年を代表するに足る完成度を持った作品は無かったように感じる。

恐らく後々2008年のDSにおけるADVを語る折には、

ソフト内容よりも発売されたタイトルの多さの方に話題が集中するのではないだろうか。


候補作 『LUX-PAIN』『タイムホロウ』など。


【Best Wii Adventure Game】

Wii『428~封鎖された渋谷で~』


本年度のWiにおけるADVは『忌火起草 解明編』と本作のみのリリースだった。

発売されたタイトル数こそ少なかったが、チュンソフト懇親の一作『428~封鎖された渋谷で~』は

実質的な前作『街』で完成されたザッピングシステムにスピード感を与えることで

同じシステムにして異なるゲーム性、異なるテイストを持たせることに成功しており

その完成度、キャラクター性、チャレンジ精神、全てが基準値以上の出来。

文句なしで2008年度のWiiにおけるベストADV。


レビュー Wii『428~封鎖された渋谷で~』


【Best PSP Adventure Game】


PSP『インフィニットループ~古城が見せた夢~』


PSPにおいては新作のリリース数自体が少なく候補となる作品は本作しかないという状況だった。

だが、“ひとつしかリリースされていないから受賞”というわけではなく

解りやすい選択肢を撤廃しながら複数のキャラクターを※ザッピングさせるアプローチ

豊富なアニメーション、完成されたインターフェースなど、

ストーリーやザッピングポイントの作りこみの甘さなど不満点もあったものの

2008年度のPSPを代表するADVと言っていいほどのキャラクター性と

“チャレンジ精神”を感じる作品だったため、今回は本作を選出させてもらった。


キャラクターを操り、他のキャラクターに影響を与えることで物語を正しい方向に進めるシステム。


レビュー Wii『インフィニットループ~古城が見せた夢~』


【Best PS2 Adventure Game】


該当作 なし


市場として末期となっているPS2には、シンプルなキャラクターゲームが多くリリースされ

2008年の代表作として語られるに足りる完成度の作品は登場しなかった。

その流れには、スタンダードなADVはDSへ移行し

豪華さよりも手軽さが求められる様になった事を感じさせる年となってしまった様に思う。


候補作 『奈落の城 一柳和 2度目の受難』など。


【新人賞】

DS『采配のゆくえ』


発売前は『逆転裁判』と酷似した画面構成、キャラクター設定から

昨今氾濫する売れ筋作品への安直な模倣を行ったタイトルと思われていた作品。


実際に『逆転裁判』から模倣した部分もあり

ゲームとしても難易度が低く、それに伴いボリュームが不足しており

足止め要素が少なくADVとしては練り込み不足で、粗さが目立つ作品なのだが
ADVにして思考のプロセスとしてはSLG的なゲーム性、歴史という珍しい舞台設定など

今年リリースされた作品の中では最も潜在能力を感じさせたタイトルだったため選出。


レビュー DS『采配のゆくえ』


【Good Graphics Game】

DS『ナナシノゲエム』


本編のボリューム不足を筆頭に欠点が多く

ゲームとして評価すると粗がとても多い作品なのだが

立体音響や、2Dと3Dを使った新しい恐怖演出は2008年度に発売されたゲームの中では

演出を含めて最もグラフィックスを活かし、こだわりを感じれるソフトだった。


【Good Sales Game】

DS『レイトン教授と最後の時間旅行』


前2作の平均販売数は80万本を超える国内販売はもとより

『不思議な箱』は海外においても数々の賞を受賞しセールスも好調と伝えられており

能トレ的なゲームなものの、ADVというジャンルを世間に認知させている功績は大きい。


最新作である『最後の時間旅行』は50万本を超える販売を記録しており

年明け以降の伸びによる、国内販売のみでのミリオンセールスにも期待したい。


【大賞】

Wii『428~封鎖された渋谷で~』


アドベンチャーゲーム研究処アワード2008大賞作品は『428~封鎖された渋谷で~』。


10年以上もの間支持を集める『街』の実質的な続編

発売前の雑誌レビューにて満点を獲得など

前情報の時点であまりにも大きすぎる期待を一身に集めながら

前作ファンからも新規のプレイヤーからも高い評価を受け、その期待に答えている。


10年という歳月を経ながら支持を集めるほどの作品は

ファンが固定概念で凝り固まっていることが常であり

逆にファンに合わせると、新規のプレーヤーには意味不明と思われてしまう物なのだが

その様な事態が発生せず、それでいて新しいアプローチに成功しているのは

本作には両者共に納得させるに足る圧倒的な完成度を持っていたと言うことだろう。


その話題性、完成度、先進性を考えれば

2008年のADV、いや2008年のゲームを語る時には必ず取り上げられる作品と言って間違いない。


【総評】

2008年のADVは昨年のADVバブルもあって大量のADVが発売されたものの

それは、流れに乗っただけの安直な作品の氾濫も意味していた。


そんな中で、新規タイトルとして新しいADV方向性を見せてくれた作品もリリースされ

ジャンルとしても新しい世代のタイトルを感じされるものもあった。

しかし、2008年度のADVを10年後語られるとすればそのような新興作品ではなく

大賞作品である『428~封鎖された渋谷で~』ではないだろうか。


【コメント】

2008年は続編タイトルが選出されにくい傾向になりました。

これは私自身が新しいアプローチに対して評価する“癖”みたいなものが出てしまいましたね。


次回は今回の裏バージョンを予定。