「就職活動後ろ倒し」について、少し書いてみる。 | アドマン3.0=人事になりました。

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サイバーエージェントで新卒採用責任者をしています。

恐る恐る書いてみます。

世の中的に10月1日に内定式が無事とり行われ(弊社は10月2日)、どこの会社もようやく2016年卒新卒採用が一段落し、2017卒にシフトしようとしている昨今。流石に1年で方針変更することはないだろう、と思っていたら、就活の面接解禁6月前倒しになりそうな兆しもあり、2017年も少々てんやわんやしそうでございます。


僕自身人事にきてまだ1年ですので、それまでと比較ができなかったのですが、2016年卒は確かにごちゃごちゃしておりました。

面接解禁が8月になったものの、(全てではないが)経団連未加盟の外資系やIT系などは要請に応じず今までどおりのスケジュールで採用活動を行う。優秀な学生はそこで内定が出てしまえば、8月まで就活を終えてしまう可能性が高い。そのような予想がたっておりましたので、日本的大企業は以下2つのことを強化すると言われておりました。(この辺りについては就活「後ろ倒し」の衝撃が詳しいです)

1. インターンシップの強化(という名の青田買い、ないし接点強化)
2. リクルーターの復活、強化(という名の青田買い、ないし接点強化)

ただどちらも会社説明を大々的に開いて母集団を集めるわけではなく、限られた人数にしかアプローチ出来ないため、

高学歴学生へのアプローチが集中する(逆に言えば、学歴のない学生へおアプローチは激減する)

ということが問題視されていました。他にも、結局学生は勉強しなかった(「後ろ倒し」はそもそも学生の勉強時間確保のため)」「中小企業の採用が苦戦した」「上位校以外の学生もまた苦戦」「オワハラなどの問題も浮上した」などなどの事象が問題として認識され、「後ろ倒し失敗が叫ばれております。

ただ僕は、けっこう良かった部分も多かったと思っています。

就職活動は義務教育と違うわけですから、優秀な会社が優秀な学生を採用する競争社会だと認識しています(間違ってたらごめんなさい)。したがって上位のような事象は致し方無いともいえます。(致し方無い上でも、完全に門が閉ざされているわけではないから、努力すれば良い)

事実、僕の周りの優秀な学生はまったく悲壮感なく就職活動を終えています。3年の夏過ぎからインターンなどを開始し、リクルーターなどを通じて社内の事情もよく理解し、その上で内定。8月までにほぼ結果が決まっていたので、8月1日に露骨に内定をもらっていた学生もいました。

また今まで日本企業はインターンシップを積極的にやっておりませんでしたが、このような自体になったので、日本的大企業もインターンシップを盛んに行うようになりました。これは人事にとっては負荷が増えて大変なことでは有りますが、学生にとってはメリットしかないことだと思います。今まではナビサイトでエントリー→会社説明会、という画一的なフローでしか理解できないほぼブラックボックス状態だったわけで、それよりもよっぽどか良いと思います。

もちろん、これらのインターンやリクルーター制度は青田買い的側面が強いため、結局優秀な学生(露骨に言えば高学歴な学生)しか享受できない可能性が高いわけですが、これも致し方無いといえます。あえて誤解と炎上を恐れずに言えば、もちろん偏差値の高くない学校の学生でも優秀な学生はたくさんいるものの、その出現率は高学歴の大学のほうが多くなるからです。

これは人事をやってみて改めて理解しました。僕は自分自身の学歴に自信がないため学歴なんて関係ないぜ!と叫び、社会人になっても必死で生きてきましたが、世間一般的には割りと関係あるんだな、と。当たり前ですが、実感させられました。

とある有名コンサル企業の人事の方が「仕事が忙しいため、東大生だけをターゲットにするのが最もROIが高い」というような話をされていたのを覚えていますが、採用活動は企業のリソースを活用して行うものである以上、ROI効率を目指すのは当然。批判されるべきものではないのではないか、と個人的には思います。

僕も青山学院大学という大学出身のため、その辺り苦労するところもありました。僕の目指していた業界は、いわゆる人気業界。最終面接に進むに連れ、横にいる学生が「東大」「慶応」ばかりになっていったのをリアルに覚えています。これが学歴社会か、と。

ただこれは僕が「東大」「慶応」に入らなかったのがいけないわけで、そもそも学歴に自信のない学生はこのビハインドを認識したうえで差を埋める努力をするべきだと思うんですよね、厳しいことを言うと。

また後ろ倒ししようが何しようが、勉強する学生はするし、しない学生はしない。むしろ早めにインターンを経験し、自分の至らなさを感じてからのほうが勉強と向き合える気もします。なので、早めに自身で気づき、早めに動くことのメリットは非常に高い。


そんなわけで、「就職活動後ろ倒し」によって、結果的にとってもフェア=弱肉強食な競争状態が作られているのではないか、と思ってます。世間で言われているほど「後ろ倒し」に否定的ではなかったりするのですが、皆さまいかがでしょうか?