1/48 Xウイング【後編】/バンダイプラモ(12) | アディクトリポート

アディクトリポート

真実をリポート Addictoe Report

これ(1/48 Xウイング【前編】/バンダイプラモ・11)の続き。

ama



前回は、パッケージングという外枠の話に終始したので、
今回はもっと肝心の、サイズとスケールについて。

1/48のXウイングと言えば、
2007年にファインモールドからスナップキットが出ているが、

1/48 STARWARS X-ウイング
1/48 STARWARS X-ウイング
posted with amazlet at 15.08.01
ファインモールド (2007-12-15)
売り上げランキング: 32,235




完成品のレビューで判明するのは、
8年前のファインモールド版が発売された時点で、
外形、プロポーションとディテールはすでに完成の域に達し、
塗装さえガンバれば、
じゅうぶんに満足行くXウイングを手にできていた、ということ。


制作記その1
制作記その2
制作記その3
制作記その4
制作記その5
制作記その6

1/48 STAR WARS X-ウイング ファイター (ゴールドメッキ製C-3POメタルフィギュア付)
ファインモールド (2008-08-31)
売り上げランキング: 275,485

このページによれば
バンダイ版も、大きさはファインモールド版とほぼ同じ。
となると、
基本的には同じものに、
電動ギミックを加えて出し直しただけ

の感あり。

つまり、今後はバンダイからしかSWプラモは出ないんだから、
ファインモールドで発売されたものは、
全部置き換えるという方針の一環に過ぎない。

260
バンダイ版の全長は、約260ミリ=26センチと公表されている。

ということは、
26×48=1248
12.5メートル設定ということで、
実機設定の13メートルより、50センチ短い。
プラモデル実寸で、約1センチも長さが足りない。

実機が13メートルなら、
260ミリはちょうど1/50換算。

つまりバンダイのプラモは、
ファインモールド版と同様に、
ホントは1/48ではなく、
1/50スケールだったというわけ。

というわけで、
虚偽のスケール表記のバンダイSWプラモが、
また一つ増えてしまいましたとさ。

既発売分で、正確なスケール表示は、
↓1/12スケールのR2-D2とR5-D4の2個セットだけ。

スター・ウォーズ 1/12 R2-D2 & R5-D4
バンダイ (2015-03-28)
売り上げランキング: 108

以上。

…というのもさすがに乱暴なので、
もう少し、ていねいに説明しよう。

毎度のことながら、
あてにならない公式設定の12.5メートルというのは、
1作目で、イギリス最大級のスタジオ、シェパートンに置かれた、
tech
フルスケールのセットの全長。
ということを、きちんと突き止めたグループがいる。

コトの発端は、2011年の5月。

2013年にベルリンで開催予定の、
スター・ウォーズ展に向けて、
ドイツ人有志で、実物大のXウイングを建設する案が浮上。

結局この展覧会自体が開催されず
建設計画も頓挫したが、
準備と検討は抜かりのないものだった。

まずは設計図が欠かせないが、
図面を引いたオールドマン(Oldman)が、誰に言われるでもなく自らに課した方針は、
みぃおん
*ILM製のスタジオスケールモデルの図面(ブループリント)を復元するつもりはない。
*参考にしたのは、ILMモデル、劇中画面キャプチャ、実物大セットの画像だけ。
つまり図面を引くのに、既製図面の類は一切参考にしなかった。
めck
*作業の流れは、実大セットの画像と現存する資料、データを基本に、足りない部分をILMモデルの通称“ブルー2”の画像情報で補完。
つまりILMモデルから実大セットへの転化プロセスを逆算する形で行われた。
かんぜん
※オールドマンが作図した、
1/48表示のブループリント最新第4版(バージョン4)のPDFファイルは、
こちらよりダウンロードできます

でもって、この解析作業の過程でオールドマンが突き止めたのは、
*『スター・ウォーズ』(1977)の実大セットは、ILMモデルのブルー2の忠実な24倍ではなく、
ゆゆゆ
『帝国の逆襲』(1980)版セットで若干是正されたが、それでも完璧な24倍寸ではない。

*公式設定の全長12.5メートルには、なんの根拠もない。
オールドマンは、ILMモデルの後端に、シャーマン戦車の車体のプラモ部品が貼り付いていることに着目。
でやねん
このプラモ流用パーツの寸法は容易に採寸可能なので、
nini
それを定規代わりに、ILMモデルは1/24スケールだと割り出した。

こうして、フルスケールのXウイングの寸法は、
●機体全長13.01メートル(42フィート8インチ)
●機体本体(主船体)の長さ11.89メートル(39フィート)
●翼水平時の全幅11.18メートル(36フィート8インチ)
●翼展開時の全幅10.42メートル(34フィート2+3/16インチ)
●着陸時の機体全高3.04メートル(9フィート11+5/8インチ)
●飛行時の水平翼状態で、全高2.45メートル(8フィート5/8インチ)
●飛行時の翼展開状態で、全高4.51メートル(12フィート9+1/2インチ)
——に確定。

*ただしこの図面が、劇中の複数異なるXウイングのモデルと完全に一致するはずなどありえないし、依然として細部に不明な点を残してもいる。

では次の疑問。

*ブルー2って何?
*実大セットは、なぜ基準となるILMモデルを単純に24倍した13メートルにせず、少し小さめの12.5メートルで作ってしまったのか。

ドイツ人グループは、これも突き止めている

実大セット建設を指揮した人物は、2012年の時点で81歳。
今年存命なら、84歳のはず。
装置担当のジョン・スティアーズ(John Stears)かと思ったが、
同氏は1999年4月28日に、ロスで脳卒中で死亡しているので、
この人とは別人。

ともかくこの人物は、建設計画メンバーのリサーチ作業中に、くしくもドイツ在住だったので、トーストゥン(Thorsten)なるメンバーの一人は、
この作例の、トーストゥン/トルステン・ショルツ(Thorsten Scholz)
ろすてん
同一人物かは不明です。

当時の貴重な話を聞いている。

その証言と提出された資料を総合すると、
しりょう1
りょう2
実大セットの請負業者は、
ラドレット(Radlett)に拠点を置く、
『007』シリーズの潜水艦等のプロップ制作会社で、
27年の社歴があるも、現在は解散。

私を愛したスパイ [Blu-ray]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2015-10-07)
売り上げランキング: 389,005

モイスチャー・ヴァッポレーター(moisture vaporator)等を手がけた、
オーグル社(Ogle Models & Prototypes)かと思ったが、
同社は健在なので、この会社とは別。

金属加工に特化した、ノーランク社(Norank Engineering)でもないらしい。

とにかくこの会社に初めて提供されたのは、
ILMの1/24スケール・スタジオモデル、ブルー2の、
角度を変えて撮った写真4枚のみ。

まだ見積もりの時点だったので、
アメリカからイギリスに模型を直接送らず、
モノクロ写真で代用されたわけ。
mit
↑サイズ対比のために並べられた人型の切り抜きは、
なぜか7フィート(2メートル13センチ!)という巨漢。
6フィート(※最下段に追加)だと小さすぎて、機体との対比がつかみにくいのと、
人型を7頭身で表しやすかったからではないかと推測。

この4枚の写真から、
600
●機体本体の長さ(※全長ではない)は、概算で11,500ミリ=11.5メートル
●翼幅は、おおよそ10,000ミリ=10メートル
——と、割り切った数字を出している。

理論値:実測値の関係式から、
11.5:11.9=x:1301
x=12.57....
となり、
実大セットの全長は、
12.5メートル強だったと推測できる。

でもって、制作にゴーが出たとき、
再計算をせずに、
この概算のまま図面を引いてしまい、
セットがほとんど出来上がった時点で、
↓ILMモデルがラドレットに到着していたものの、もはや手遅れ、
今さらわざわざ測り直しされるはずもなかった。
みうい
↑塗装前の外形完成状態。

やがてYウイングの1/24スケールILMモデルもイギリスに到着。
nini
これを参考にディテールと塗装が加えられ、
実大セットは完成した。

スター・ウォーズ 1/72 Yウイング・スターファイター
バンダイ (2015-07-25)
売り上げランキング: 69


実大セットは、発進シーンのためにクレーンで吊すため、
それに耐える重量と構造、材質が必要とされ、
tekku
きちんと実現した点において、立派なプロの作品と評価できる。

セットの機体全長が12.5メートルだった証拠は、
シェパートンスタジオの
↓反乱軍基地のステージ見取り図からも読み取れる。
さたら
機体を囲むフットライト環の直径は、28フィート(約8.5メートル)。

実大セットの見取り図上の機体アウトラインは正確でないため、
遠景用の“立て看(カットアウト)”で計算すると、

↓実物大は、Xウイング、Yウイング(部分)共に、1機しか作る予算がなかったため、
desuyone
↓奥の背景用に、両機の形に切り抜いた、立て看板が配置された。

pannza-

173:236=28:x
x=58.1965....
メートル換算で、
11.64
ということは、11.5メートルの機体長(主船体の長さ)で仮置きしていると判明。

となれば前出の関係式から、
機体全長はざっと12.5メートル
と判明する。

ちょいと乱暴だが、
どのみちこの見取り図から、
さすがに13メートルの全長は出て来ない。

ILMモデル用のブループリントも、
実大セット用のブループリントも、
セット自体も破棄され、
mama
現存していない。

オールドマンやトーストゥン等、
ドイツ人グループによるフルスケールXウイング計画は頓挫してしまったが、
意外なところで実を結んでいる。

2013年5月、
フルスケールのレゴ製Xウイングが完成

ニューヨークのタイムズスクウェアでお披露目された。



●全長13.1メートル(43フィート)→13.01メートル(42フィート8インチ)
●翼幅13.44メートル(44フィート)→11.18メートル(36フィート8インチ)
●全高3.35メートル(11フィート)→3.04メートル(9フィート11+5/8インチ)
(→以降は、オールドマンの図面データ)



全長以外はオールドマン案と大きく異なるのは、
肝心のそこが13メートルになるように、
製品版レゴXウイングの寸法を、単純に42倍しただけだから。


というわけで、2013年以降に、
Xウイングの全長設定を12.5メートルで製品化するのは、
調査不足や手抜きリサーチ、
「前例にならっときゃ、ウチの責任ってことにならないだろ」
という、企業の怠慢な姿勢の表れとしか受け取れない。

ようは50センチの誤差を、大したことないと取るか、
深刻に受け止めるかと言うこと。

映画を見ただけでこの差がわかる観客はいないから、
別に映画のセットとしては、
12.5メートルで支障はなかったわけだが、
反対に公開から37~38年も経ってるのに、
いつまでも仮置きの実大セットに責任をなすりつけるって、どうなのよ。

というわけで消費者の皆様におかれましては、
バンダイの1/48スケール表示のXウイングは、
事実上の1/50スケールと納得承知の上で、
お買い求めください。