『ジェダイ』版のAT-STも、
当初は『帝国』版のスカウト・ウォーカーを、
そのまま劇中に出す予定だったのに、
どうして変更されたのか。
フルスケールのセットの図面(ブループリント)は、
『帝国』用のスタジオモデル(撮影用ミニチュア)と、
同じプロポーションで、
完成全高は320インチ、約8.13メートルのはずだった。
しかし実際に、この寸法(プロポーション/バランス)で、
セットを建造するのは無理があった。
横並びの小窓2つから、キャビンは2人乗りと設定され、
そうなると、頭部はかなり大きい割に、
それを支える脚部は、あまりにも細長く、
華奢(きゃしゃ)過ぎた。
このまま建造したら、絶対倒れる!
そこでジョンストンは、AT-STの再設計に着手、
安定して立てるように脚部を縮めて、
全高を20フィート6インチ、6.25メートルに変更した。
このデカ頭・短足の新生AT-STのデザインでミニチュアを作り直し、
スケッチのポーズ(直立脚フル伸展時)で全高40センチ、
しゃがみ気味のポーズで全高38センチとなった。
そう、AT-STの全高に幅があって一定しないのは、
姿勢によって高さが変わるからで、
これがスケール問題をややこしくしている。
さらに通常、
スタジオモデルはスケールを考慮して制作するが、
今回はこの限りではない。
というのも、
『帝国』版のミニチュアを基本に変更点を反映すれば、
完成モデルの大きさは、おのずと決まるが、
その際にスケールは、まったく考えられていないから。
これで外形は固まったものの、
6.25メートルという全高は、再検討を迫られる。
というのも、
↓どうやらケナー社のフィギュア用ビークルを参考にしたらしい、
↓スケッチのウォーカー頭部と人間との対比では、
↑シナリオで用意されている、
巨漢チューバッカがコクピットに収まるなんて、
とうていムリ。
そこで全高6.25メートルというのは廃案に。
↓40センチモデルは、ストップモーション用なので、
↓ポール・ヒューストンが、破壊用の大型モデルを制作。
↑コクピットには、1/9スケール、立像で20センチサイズのフィギュアがおさまり、
↓安定のしゃがみ気味で、全高86センチ、
おそらく当初の背伸び気味の直立で、全高90センチになる設計で、大型モデルが完成。
これが1/9スケールってことは、
90センチ×9=8.1メートル。
なんのことはない。頭部が大型化され、脚が短くなっただけで、
全高は当初のブループリントどおりの、
320インチ、8.13メートル(脚部フル伸展時)に戻っただけのこと。
これに伴い、
40センチサイズモデルは、約1/20スケールと確定。
では、フルスケールのセットは、
しゃがみ気味の大型1/9スケールモデル、
86×9=7.74メートルに
合致するのか?
↓こちらが人物との対比がわかる写真だが、
↑人物の身長がわからない。
英米人の平均、180センチでやるしかないが、
正面写真の人物は、ILMのデニス・ミューレンで、
↓彼はベイダーと肩を並べる長身である。
ベイダー役、デビッド・プラウズの身長にも諸説あるが、
ミューレンも186~188センチは確実にある。
そこでミューレンの上下をゆとりを持ってトリミング。
縦225ピクセルが、190センチ相当とする。
AT-STは、縦927ピクセルだから、
225:927=190:x
x=782.8
ということで、約7.8メートルと、ほぼ妥当な数値が導き出せる。
●姿勢の違い
●デニス・ミューレンの身長が非公表
——という諸条件の割には、
けっこうイイ線ついてるんじゃないか。
AT-STの全高、直立8.1メートル/しゃがみ7.8メートル説を裏付ける立体製品に、
2009年に発売された、
↓コード3(スリー)のダイカストがあって、
全高12インチ(30.48≒約30.5センチ)で、スケールは1/26と公表されている。
30.48×26=792.48
つまりこの姿勢で7.9メートルだから、正確。
一方で、
バンダイの1/48スケールプラモ、
AT-STの完成見本を模型店の店頭で見かけたら、
思ったよりでかくて、なんだか間延びしていてガッカリした。
バンダイの発表では、プラモの全高は182ミリ。
182×48=8.736メートル
8.7メートル?
それって、ブループリントの全高設定、
かつ、ジェダイ版がうんと背伸びした8.13メートルより、
1/45スケールでも、
182×45=8190。
約8.2メートルと、まだでかい。
どうやら、現在のAT-STの全高設定が、
8.6メートルだからってことなんだろうが、
6年前に正しい全高=実測値に基づいて、コード3が出てるのに、
今さら公式設定の原則論に戻っちゃうのは、
責任回避としか思えないが?
結局、バンダイのAT-STは、ほんとの1/48スケールじゃなくて、
それよりかなりデカイんだから、
他の同スケールのプラモデルと並べたって意味がないし、
さらにバンダイの1/48スケール表示のXウイングは、
本来のサイズよりも小さいので、
ますます揃わない。
2015年にもなってこの失態は、
バンダイに真の設計者が不在なことのあらわれといえる。
どうやらネットに豊富にある、スケール関連情報が、
英語で書かれてる時点で、
バンダイ製品には反映されない体制なんじゃ?
もっとハッキリ言うと、
バンダイには、英語と数学(算数)のできる社員がいないらしい。
また何年かして、
バンダイの権利が消失して、
別メーカーが、「今度こそ正確です」と高らかに宣言して、
たとえそれがホントでも、
「じゃあ買おう」より、「もういいよ」の方が多いのでは?
いや、他社でなく、バンダイがガンプラみたいに同アイテムを何度も出し直すかもしれないが、
それはそれで、「最初のはなんだったんだ?」ってことになる。
日本って、ほんとにダメな国になっちゃいましたね、しかし。