ロボット刑事/キカイダーの後継者〈その3〉 | アディクトリポート

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これ(キカイダーの後継者〈その2〉)の続き。

たとえば一昔前のアイドルやジャニーズでも、
デビュー曲には気合いが入るが、
いったんヒット歌手の地位を手に入れると、
思い切り手抜きの「惰性曲」が、2~3曲目に来たりした。

松田聖子の「青い珊瑚礁」の

次に歌った、「風は秋色」とか。

同じ曲の3番とか4番かってぐらい、サビが同じ。

なんの話かというと、クリエイターの創作物は、
時期が重なると、
似通ってしまうのはしかたない、
----ということ。

石森章太郎(当時表記)は、
キャラクター創造の天才として、
後年には流れ作業的に、
デザインだけを供給するようになったが、

「秘密戦隊ゴレンジャー」の連載後半は、TVシリーズの軽いノリに合わせて「ひみつ戦隊ゴレンジャーごっこ」として路線を変更している。キャラデザ提供と、プロットやストーリー提供をわけるようになった転機。

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「仮面ライダー」の1971年から始まる、
東映特撮ヒーロー原作者としての当初は、
キャラクターデザインだけでなく、
作品世界観やヒーローの由来、
基本プロットまでをしっかりと整えて提案しており、
映像化の下敷きとなる、原作マンガ
※ただし映像作品とは趣が大きく異なる場合が多かった
も律儀に執筆していた。

中でもマンガ「人造人間キカイダー」には、
kikaiuda
相当に気合いが入っており、

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作画こそアシスタント任せでも、
よしき
「サンデー」連載の終盤は、土山芳樹(上下とも)、
細井雄二、山田ゴロのアシ3人ローテで、
週にたった8ページ連載だった。

よしき2
いかにも話の途中で終わってしまった
マンガ「仮面ライダー」
講談社「週刊少年マガジン」1971年16号~1971年52号
講談社「ぼくらマガジン」1971年16号~23号

の反省もあってか、
(かなり尻すぼみ気味ながら)
さんでー
きちんと「少年サンデー」での連載を完結させている。
小学館「少年サンデー」1972年30号~1974年第13号

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石ノ森章太郎
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「キカイダー」のテーマは、未完成のロボット(アンドロイド)。
不完全な良心回路のため、
時に悪の誘惑に惹かれてしまうジロー/キカイダーは、
まえあと
未完成だからこそ、
いつかはなりたいと憧れる人間(=不完全でいびつな存在)に、
より近い状態だという皮肉。

さて、
「ライダー」の連載が破綻した講談社への「おわび」代わりだろうか、
「キカイダー」のサンデー連載中に、
マガジンで連載が始まった、「ロボット刑事」
ろぼけい
「週刊少年マガジン」1973年1号から、テレビ版第1話の放送に約3か月先行して連載開始、
同年41号まで掲載された。



最後の一コマが衝撃的で唐突だが、
一応、話は完結しており、
作画はアシ任せにせず、
石森氏が最後まで主筆を堅持。

マンガの絵柄もさることながら、
実写版のマスク造形は、
明らかにキカイダーを模しているが、これはなぜか。
こあ
テレビ番組「ロボット刑事」については、ここでまとめました

仮面ライダーとキカイダーの共通点は「変身」
キカイダーとロボット刑事の共通点は「ロボット」

石森氏の頭の中では、
実はキカイダーとロボット刑事の発想の原点は、
同じだったのではないか?

未完成で内部のメカが透明カバーから透けて見え、
善悪の間(はざま)に揺れる、
悩めるヒーローがキカイダー。

ピノキオ(人形)は、願いがかなって、
人間になれるのか。
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それは物語の結末までわからない。

そのうち、フジテレビも石森実写特撮ヒーローをと言う話になった。
だったらキカイダーの「さらにその先」をやるのはどうか。

キカイダー完成形(ロボット刑事)は、
全身がフル装甲状態で、左右対称。
人間の感情(悲しみ)を理解する象徴に、
目の下の涙の筋も、そのまま引き継がれる。
ろぼけい

倫理観も完成しているので、
人間以上に警察官向き。
だから刑事になった。

ただし局もタイトルも違うから、
さすがにマスク造形も配色も、コスチュームの材質も、
キカイダーとは若干変えてあり、
こんな
↑左右対称という点では、キカイダーよりも、兄の01(セロワン・中)に、より近い。

マンガ原作通りなら、
ゼロワン=イチローは、キカイダーの先行モデルなため、
(良心回路がより未熟なので)かなりヤンチャなキャラのはずなのに、
ぜろわん
池田俊介の演じたイチロー(左)は、弟のジロー(右)以上に品行方正。

池田氏の前作「帰ってきたウルトラマン」(1971-72)の、
MATの南隊員役の、「いい人キャラ」が引き継がれてもいるのだろうが、
わっちゃ
そもそもどうして、いかにも善人の池田氏を起用して、
イチローのキャラ設定をマンガ原作と変更したのか?

NET(現テレビ朝日)としては、
「キカイダー」放送中に、
まるで姉妹編かスピンオフみたいな「ロボット刑事」が、
フジテレビで放送開始されたことに警戒感を抱き、
本家「キカイダー」の続編「ゼロワン」に、
「それは本来、ウチの企画ですから」と、
「ロボット刑事」の要素を、極力取り込んだ
おどり
----のかも知れない。

そう考えると、東映と石森(現・石ノ森章太郎)氏としては、
「ライダーもキカイダーもロボット刑事も、ウチの作品ですから」
のつもりで行った
↓この撮影会も、
さん
各局のせめぎ合いのようなものが垣間見えて面白い。

東映独自としては、
「まんがまつり」という単独展開もできたとはいえ。

↓この絵本については、こちらで。
さんるい

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「キカイダーの後継者」は、まだ続きます。