ウルトラマンBタイプ/ 遅れてきたウル伝〈その6〉 | アディクトリポート

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前回は、ウルトラマンの最初のマスク(Aタイプ)が、軟質素材(ラテックス)でできていた理由と、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-@p@
↑Aタイプ最後のおつとめとなった、第13話のペスター戦。
それが傷んで、次のマスクが必要になった、というところまで。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-mama
↑14話で初登場したBタイプ。
先週までのボコボコさとは打って変わった「ビューティフォー」さに、当時の視聴者は驚いた?
(それとも、ウルトラマンは一人に決まってると考える子供たちは気づかなかった?)
いずれにせよ、この回でマスクがはっきり映るのは、ほんの一瞬。
※色味は正確ではありません。


で、マスクだけでなく、スーツごと新調されたのが、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-zんしん
いわゆる Bタイプ。
14話「真珠貝防衛指令」( ガマクジラ戦)から29話「地底への挑戦」( ゴルドン戦)まで。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-mkmkmk
太もも等の銀塗装の剥がれ、かすれた部分から、アメリカ製ウエットスーツ素材の本来の色(バーミリオン)が露出している。
身体の赤い模様は、下地の色を無塗装でそのまま生かした。

Aのスーツと比べると、肩に詰め物が入り、胸の厚みも増して、マッチョに仕上がっている。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-kashi
足先が扁平だったAタイプと異なり、バルタン星人のように尖った先端が反り上がっている。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-tate
↑黄色く変色した当時のプロマイドを色補正しましたが、正しい色味ではありません。

今でこそビデオ画面をキャプチャできるが、放映当時にはBタイプの写真は劇中スチルや円谷プロの資料写真がほとんどで、ウルトラマン(Bタイプ)が実際は身長40メートルの巨人ではなく、等身大なのだと意識させられることは、ほとんどなかった。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-だだ
↑三面怪人ダダにミクロ化されたウルトラマンは、人間の大きさに縮められてしまう。
(第28話「人間標本5・6」)
ウルトラマンが、本当は人間の背丈だとネタバレしてしまうこの場面は、当時5歳だった自分にも、ハッとさせられて衝撃的な瞬間だった。


最近よく見かける、古谷敏がBタイプスーツの「抜け殻」と並んで写っている究極のネタバレ写真も、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-びん
テレビ初放映当時は非公開、もしくは5歳の子供の目には触れなかった。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ひんj

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古谷 敏
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各少年誌でも、Bタイプの特写(=広報写真でなく、出版物のために別個に撮影すること)は、ほぼ皆無だった。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-のくら
↑「ぼくら」の表紙の、科特隊員の出で立ちでコクピットに収まる少年は、講談社の方で用意した特写だろうが、ウルトラマンBタイプの方は広報写真を使用している。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-444

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↓おまけに、類似ショットで何度も切り抜けている。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ぼくらです

↓知る限り唯一の、Bタイプ特写の例。別冊少年マガジン11月号(1966年)
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-まがじん
ウルトラマンの目が、黄色く着色されていたり、のぞき穴が、かなり盛大にくり抜かれているのが判明する、貴重な写真。


ところでこのBタイプのマスク、長いこと材質が異なるだけで、Aタイプと同じ型から抜かれたものとされていて、どうやら佐々木明氏の証言をもとに定説化されたようだが、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-この
ウルトラマン45周年の記念番組でも、佐々木氏はAタイプを裏打ちした硬質樹脂の型を、Bタイプを指して「これ(と同じもの)」と言っている。
疑義を唱える人が多かった。

実際に並べて見ると、同じ部分より、異なる部分の方が目立つ。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-はえつ

$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-えええ

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-あげ

作家集団Addictoe オフィシャルブログ-うつ

$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-juwa

$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-すぺ

だがこの、「AタイプとBタイプは同じ型」説は、現在では公式に否定されている。

このページによれば、「昭和41年ウルトラマン誕生」で、当時のスタッフが、「AとBは別の型」と証言しているそうだし、

昭和41年ウルトラマン誕生
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佐々木氏自身も、近年の対談で、AとBの形状の差異について言及している
(以下転載)
[佐々木]
Aだと目が丸いんですね。Bは、少し尖ってます。
Bのデザインでは、耳のところのアール(曲線)、ここだけは少し気にしていましたね。
----ウルトラマン創世記展図録「古谷敏×佐々木明」より


なのにどうして、佐々木氏は「同じもの」と言ったのか。

これは
*(細部は異なるにせよ)基本的には同じもの
とか、
*Bは完全新規作り起こしではなく、Aの型の流用・転用
という意味だろう。

これを理解するには、マスクの成り立ちを振り返る必要がある。

ウルトラマンの(平面)デザインを担当した成田亨は、
「ウルトラQ」で、
↓海底原人ラゴンや
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-らごん
「ウルトラマン」に登場した、巨大化したオスじゃなくて、メスの方ね。
↓ケムール人(誘拐怪人)を演じた、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-けむ
古谷敏の長身痩躯のプロポーションに惚れ込み、
ウルトラマン(と言う名前すら未確定だった最初期より)の演者には、古谷を想定し、デザインも彼のプロポーションで描いている。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-さえ

だからスーツ制作の際も、マスクは古谷の頭部を型取りして、その石膏型を元に造形された。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-あたいぷ
撮影の合間にAタイプのマスクを脱いで素顔を見せる古谷敏氏の貴重なスナップ2葉。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-redeswa

つまり佐々木は、
Bタイプの制作にあたって、わざわざ古谷の頭部をもう一度型取りなんかしなかったから、基本的にはAタイプと同じ型を使ったわけだし、FRP製の型を作ったのもBが初めてというわけではなく、Aタイプの芯(裏打ち)で、すでに使用実績があった。
という意味で、「同じもの」と言ったのだと推察される。

「同じ」「違う」つながりで行くと、このページでは、一見同じに見えるBタイプ一つ取っても、細かな差異があることを指摘し、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-さらき
Bタイプのスーツは複数あるのではという説が(京本政樹氏に)ささやかれたこともある。
※同様に、Aタイプも細かく見ると2タイプに分けられるらしい

だがこうした差異は、撮影中に破損したり傷んだ部分を、修繕、補修していくうちに自然に生じたもので、当時はウルトラマンのスーツを3着以上作る余裕は、とてもなかったという。

(再びこのページより転載)
[司会]
撮影のスーツのバックアップというか、スペアは用意されていたんですか?
[古谷敏]
予備はないんです。壊れたら直すだけですね。どこかのパーツが壊れてもその場で作ってしのぐ。Bタイプとかできても、スーツの予備はなかったです。文字通り、ウルトラマンのスーツって、一張羅だったんですよ。
[佐々木]
壊れたらノリでくっつける一張羅ですね(笑)
----ウルトラマン創世記展図録「古谷敏×佐々木明」より


マニアが指摘する「違い」は、制作現場では「同じ」と同意義だったということか。

なので、このページもあくまでもサービスでやってるんで、「それは違います」とツッコマず、生温い目でご覧ください。
(と言う割には、やたら細かいヲタ記事ですが…)

そんなこんなで、次回はCタイプ。

ああ、そういえば、今日はこの日ですね。

メリークリスマス!
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-uihuiu
↑もっともウルトラの父は、成田亨のデザインポリシーに大きく反したようだが、それはまた別の話。