松本零士インタビュー〈パート2〉 | アディクトリポート

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しばらくお休みのはずでしたが、パソコンを借りて、書きかけだったものを仕上げてアップしました。
明日も更新できるかは未知数です。

パート1はこちら

パート2『松本零士ユニバース』

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--ご自身で一番の代表作と思われる、マンガのタイトルは?

まず『男おいどん』というのがあって、『ヤマト』『999』『ハーロック』『クイーンエメラルダス』『千年女王』と続くわけです。
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--海外のファンは『男おいどん』に、なじみがありません。なぜ代表作と思われますか?

舞台がなんであれ、テーマがなんであれ、何のためにこれを書くかという目的意識に目覚めたのが、この作品なんです。

--ご自身で一番の代表作と思われるアニメ作品は?

アニメなら『ヤマト』、『999』、『ハーロック』。
これが一番大きなウエイトを占めます。

--アメリカのマンガの読者やアニメファンは、先生の作品では、作品ごとにキャラ設定が微妙に異なったり、ドラマが必ずしも首尾一貫していないことに戸惑うことも多いようです。
先生の作品の「時の環の接するところ」というコンセプトを知らないのも一因でしょうが、この概念を海外のファンに、どう説明すればいいのでしょう?


○(まる)か0(ゼロ)を書いて、説明すればいいんです。
終わりのない時の環。
ゼロは私のペンネームでもありますが、終わりがないという意味ですから。

私はある意味で、全部の作品が、一つの大きな物語で、それを意識しながら書いてるんです。
だから最後に、全部を一まとめにして書く予定です。
しかしそれを書き始めたら、「こいつもうすぐ、くたばるぞ、死ぬぞ」と思われるし、自分自身だってそれを意識する。
だからまだ、やりたくないんですよね。

--メーテルというのは、ロシア語で雪風(雪嵐=ブリザード)の意味らしいです。不思議な偶然ですね。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-めてる

メーテルというのは、メタから始まる、マザーの語源です。
メタ、メータ、メーテール、マザーという変遷が、自分の中にはありました。

--『銀河鉄道999』の発想の原点や、執筆の動機はどういうものだったのでしょう?

『宇宙戦艦ヤマト』から『銀河鉄道999』への経緯は、ざっとこんな具合でした。
『ヤマト』が26話で打ち切られた後、子供の頃から探検隊が好きで夢見てた、アフリカへ行ってみようという話になりました。
それでアフリカに旅立つ間際に、新連載のタイトルと名前を教えてくれと乞われて、訊かれてわずか一秒で浮かんで、「タイトルは『銀河鉄道999』、ヒロインはメーテル、男の子は星野鉄郎」と、たちどころに答えました。

アフリカではキリマンジャロを見たり、サバンナをライフル抱えて走り回りまして、ライオンと決闘しようと思ったんですが、さすがにそれはかないませんでした。

アフリカの大地の上から見る星空が、どんなに美しいか。
サバンナって言うのは平地のように見えますけど、標高が高いですから、星があまり瞬かないんです。
そして天空全面に星が出る。
金星なんかもう、サーチライトのように光ってるんです。
アフリカの大地に立って、レオパードロックという名の小高い丘の上から、彼方にキリマンジャロを臨んで。
全天周ですね、空と大地が接しているのを見て、悟りを開いたんです。

オレが生まれる前から、これはここにあった。
オレが死んだ後も、これはここにあると。
視聴率が何だ。
人気がどうした。
そんな細かいことはもう、どうでもいいとね。

$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-あふふ
インタビュー3日後、松本氏はNHKの「スタジオパークからこんにちは」に出演し、アフリカ旅行の話に合わせて、この写真も披露した。

そういうことをやって、元気いっぱいになって帰って来て、『999』にトライしたんです。

また運命の分かれ道といいますか、ちょうど私の年代が、アフリカをライフルを持ってウロウロ歩ける、動物保護条約が発効する直前だったんです。歴史上、最後の瞬間ですね。

自分が上京する時、九州ですから、乗って来たのが最後の蒸気機関車でした。
24時間かけて東京に来てるわけです。
全てそういう、自分自身の体験が物語に息づいてるわけです。

その直後に、今度はアマゾンの源流、奥地へ行きましてね。
そこでも大地と接してる水に映ってる星空と、天空のジャングルから見上げる星空が、やっぱりものすごくきれいなんです。

南米ですから、リオデジャネイロからペルーのリマへ渡って、リマからアマゾンの源流へ入って。またリマへ戻って、今度はマチュピチュの一番てっぺんまで上がりました。

そういう体験が、自分の目を開かせてくれたんですね。

なぜそんな秘境に行ったかというと、まだ若くて元気なうちに、大自然の中に入って、ジャングルの奥地まで全部探検しておきたいと。
だからアマゾン川でも泳いで、ピラニアやワニにも食われずに、反対にこちらが食べちゃいました。

$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-あの
↑撮影は、「あの」パトリック・マシアス。

それで大都会に行ったのは、その後なんです。
アメリカ、中国、ロシア、フランス、イタリア等の欧米諸国の各都市、ルーブル美術館のような観光名所は、全部後回しでした。

高層ビルとか、子供の時から憧れだった200インチ望遠鏡のある、パロマ山天文台、自由に操作させてもらえました。

ナイアガラももちろん、グランドキャニオンは軽飛行機で通過しました。

コンコルドでフランスからダカールを経由して、リオへも行きました。
飛行中はずっと操縦席に居座らせてもらえて、機長さんと一緒に、墜落実験までやらせてもらえました。
お客さんを乗せたままですから、ムチャクチャですよ。
その頃は状況が緩やかだったんですよ。のどかでしたね。

私は個人的には世界中ありとあらゆるところをうろつき回りましたんで、あと行ってないのは、南北両極くらいのものです。

モスクワの街も、うろうろしましてね。モスクワからサンクトペテルブルグを列車で往復した際も、乗務員の皆さんとウォッカの乾杯をしながら、走って帰って来たんですね。
徹夜で寝ずに騒いでおりました。
夜の町中を徘徊しているから、なんで東洋人がこんなところをうろつき回っているんだって、不思議がられましてね。

それから、テロリストと間違われたことさえあります。
ヒゲを生やして、怪しげな恰好をしてるもんで、ペルーとかインドとかアフリカ、オランダでも御用になりました。

ところがマンガ家、カートゥニストだと答えると、がらりと待遇が変わりましてね。
撮影禁止だけど、あなたは撮っていいよとか、博物館のバックヤードまで全部、見せてくれました。

そうするとマンガというのは世界共通で、心の広い穏やかな世界だと言うのが、お互いによくわかるわけですよね。

そんなわけで、ガイドが「えっ、そんなところまで踏み込んだのか?」って驚くようなところまで、私は勝手に踏み込んでしまう。
自然に脚がむいちゃって、入り込んじゃうんですが、とくにおとがめなしで、みんなと仲良くやって、ハーイって気楽に手を振って、別れてきました。

世界中どこでも楽しかったですよ。

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--『銀河鉄道999』から、『銀河鉄道物語』への発想の転換はどうやって?

たしかに『銀河鉄道物語』というのも、枝葉としてはありますが、どこまで行っても根幹は、あくまでも999です。
999とは未完成、青春という意味です。
1000になると完成になる。
1000年女王というのはメーテルのお母さんですが、1000は完成で、大人を意味します。

--『ガンフロンティア』の発想のヒントは?

まず、西部劇の映画が好きだったというのが前提で、これは親友と共に旅をして、それぞれが悟りを開き、志を遂げていくという物語なんです。

『ガンフロンティア』の前に、宮沢賢治の物語で『天使の時空船』というのがあって、瀬戸内海で、ハーロックの先祖と出会う場面をすでに描いてるんです。

密輸船をやっつけて弾薬が破裂して、瀬戸内海で火柱が立つんですよ。
すると山の上にいたトチローの先祖が、それに気がつくわけです。
刀を抜いてかざすと、火柱が刀身に照り返して、「あそこに俺の生涯の運命の友達がいる」というわけです。
で、こっちも、「あそこに俺の生涯の運命の友達がいる」というところで終わっている。

これが『ガンフロンティア』につながり、『ガンフロンティア』は『宇宙海賊キャプテンハーロック』につながっていくんです。

銃器についてですが、私は歴史にまつわるいろんなものが好きで、自分自身も銃器のコレクション、西部劇時代や南北戦争の頃のクラシックな拳銃やライフルとか、ウインチェスター銃、もっと古い時代の火縄銃、ロシアのパーカッション式まで、世界中あらゆる国の、古い銃ならひとしきり持っている。

その流れで、今度はあんたが審査員をやれと任命されて、自分が許可証を書く立場になりました。
世界中のどこの銃でも、1867年までに日本に渡って来ていたものはオーケーなんですが、現在の弾薬と合うか合わないかを鑑定する、東京都の銃砲刀剣類という、刀や古式銃の審査員、鑑定員という立場です。

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ですから南北戦争の時の、アメリカの重騎兵隊が持っていたコルトドラグーンという銃が、コスモドラグーンという宇宙銃の元になっていたり、実物を参考にマンガを描いている。


--『ニーベルングの指環』のネット連載の現状は? 完結するのでしょうか?

ええっと、『ニーベルングの指環』は、「ジークフリート」まで書いてますけど、まだ最後のところを書いてないですよね。
だからこれからいずれ、書かなきゃいけないです。

とはいえあれが、日本で最初の部類の電子配信専用のマンガで、日本で1日のヒット量が3万6千。
で、英語版を入れたら、36万に跳ね上がったんです。
ピークのある日は120万になって、パンクしてしまいました。
ですからそれで、世界は広いと気がつくわけです。

--キャプテン・ハーロックは、初期構想に最も近いものが1タイトルだけあるのか、彼を据えた作品は、全て同列の扱いなのか、どちらでしょう?
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-さんにん

同列です。ハーロック、エメラルダス、そしてハーロックの船に乗っていて、今は心になってるトチローですね。彼らは全員、私のどの作品の中でも同列の扱いです。

トチローは遠く、大山昇太(おおやまのぼった)の子孫なんです。大山敏郎。
外国でなまるから、トチローになっちゃった。

そして以前はデスシャドウ号と呼ばれていた、アルカディア号の心になっていて、エメラルダスの恋人なんです。
だからハーロックは、自分の親友の恋人を守る。手を出すものは許さんと。
そしてエメラルダスの方は、恋人が乗ってる船を守る。
お互いに、友人を守る、恋人を守るという絆で結ばれている。

ハーロックにはミーメというキャラクターが出て来ますが、これは『ニーベルングの指環』のキャラクターで、ニーベルング族の最後の一人です。彼女が死んだら、ニーベルング族は絶滅するわけです。それがハーロックと共に旅をしてる。
ミーメの名前は『指環』からでもあり、うちのネコの名前が、ミーくんだからでもあるんです。

--実写のキャラとして生身の俳優を起用するなら、ハーロックに適役なのは誰でしょう?

$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ほろどふ
これが一番難しいんですよね。(インタビュー時に居合わせたロシア青年、アントーン・ホロドフを指して)この方のような顔でないと。
今、『銀河鉄道999』の実写化の話が進行中なんですが、メーテルとエメラルダスは、日本の女優さんに、そっくりな人がいるわけですよ。
しかしハーロックで、はたと、今弱っている最中なんですよ。
外国に色々あたってみるしかないのかなと考えてます。

--新作『ゼロデサイズ』について、現時点でお話できるところをお聞かせください。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ぜろでさいず

まだこれは、企画がきちんと通っておりませんので、自分でもよくわからないです。
来年(2011年)に、OVAの可能性が高いでしょうね。あるいはテレビアニメか。







パート3につづく(いつアップするかは未定)

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