松本零士インタビュー〈パート1〉 | アディクトリポート

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2/1に更新された、
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スター・ブレイザーズ公式サイトの記事の翻訳です。

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インタビュー記事(パート1)は簡潔にまとまっていますが、実際はここと、ここにも書いたように、松本先生の話はあっちこっちに飛びまくるので、ここに至るまでには、かなりの編集作業が必要でした。

そこらへんは、エルドレッド氏もインタビューの前振りで、こう振り返っています。

早速本題にとりかかり、ぎっしり4ページにも及ぶ用意した質問項目を、私(ティム・エルドレッド)から質問するのだが、松本先生は自分の話の都合に合わせて、どんどん脱線しまくる。

15分が経過しても、まだ2問目の質問が終わらないので、居合わせた一同6名は、互いに顔を見交わして、不安なことしきり。
いったい今日は、何時間かかるのか……。
(通訳の武田)想土(そうど・英語名はSword=ソード・刀)は、頃合いを見計らって、先生を本題に引き戻し、数分後にはようやく、インタビューは正しい軌道に乗り出した。

さすがにこの頃までにわかってきたのは、松本先生は自分であらかじめ用意しておられるご自身の答に、こちらが尋ねてもいないし、する予定もない質問の方を、あてはめているということだった。

というのも、先生は私たちが自分に関して、あらかじめどれほどの予備知識があるのかは知りようがないから、全く知らない人に一から説明するという、ふだんどおりのインタビューへの受け答えに徹すべしと決めてかかっておられるためだ。

そうなると時間はいくらあっても足りないから、想土は先生の解答を、その場で一字一句英語に訳すのをやめてしまった。インタビューは録音してあるから、後でじっくり訳せばいい。

というわけで後日、想土が送ってきた訳文を読むに至ってようやく、これから皆さんが読み通すのと同じ感覚で、初めて先生が何を語ってくださったのかに、今さらながらに接する次第となった。


では、お読みください!
※なお、英文と見比べればわかりますが、以下は訳文ではなく、元になったインタビューテキストの日本語を復元していますので、細部が若干異なります。

パート1『宇宙戦艦ヤマト』

--「宇宙戦艦ヤマト」のキャラクターの成り立ちについて教えてください。

古代進のススムというのは、実は私の弟の、すすむ(将)という名前なんです。

私は機械工学科志望だったんですが、家が貧乏だからと大学に行くのをあきらめて、絵を描く方に回ったんです。

その代わり弟が同じ学部を志望してましたんで、『お前は行けよ』と励ましました。
親父にも、せめて弟は行かせてくれと頼みました。
ついにはオレが行かせてやるとまで大見得を切って、上京してきたんです。

それで弟は、専門家中の専門家になって、最終的には三菱重工技術本部の技官になりまして、その前は長崎研究所の所長もやっておりました。
要するにH-IIAロケット、これですね、(と、応接室のデスクトップモデルを指さす)こういうものの心臓部なんかを設計した男です。
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もちろん博士号も、全部取りました。
だから私と弟は兄弟分業で、私のかなわなかった夢の半分は、弟がやってくれました。

ちょうど今、ヒミコという遊覧船が隅田川を走っていますが、あれも私がデザインして、それを弟が補強して次の設計に回したんです。だからあれは、弟と一緒に作った船といえますね。
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--先生のキャラクターは、ススム、マモル、ワタル、マナブ等、動詞をつけることが多いですが?

いや、それは単なる偶然ですね。日本の名前は動詞が多いですから。
自分の本名のアキラだって、「日のごとくなる」という意味で、零士は「終わりなきサムライ」という意味です。

他にも命名の秘密を打ち明けますと、森雪というのは、森木深雪、モリキミユキ、今ピアニストになってる人ですが、その人からたくさん、ファンレターをもらったんです。
その人の名前をもらって、真ん中の2文字を消しました。

沖田十三の十三は、SF作家の海野十三、ウンノジュウザ、またはウンノジュウゾウに由来しています。
沖田は、船は沖を走るからという意味と、新撰組の沖田総司からの、二つの意味です。
沖田艦長のモデルは、ああいう顔つきをしていた、私の父親です。

名前の由来の話を続けると、ガミラス、これはカミラ、カーミラから来ています。
魔女カーミラ。それに濁点を打って、ガミラスです。

デスラーというのは、デス(Death)、死ですね。ラー(Ra)、太陽。死の太陽。
そう言う意味では、名前に全部意味があります。

--デスラーの顔は、西崎プロデューサーに似せたのでしょうか? 
テレビシリーズで肌の色が青く変わる前など、特に似ている気がしますが。

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いや、私としては、そういうつもりはなかったんですが、似てますかね? 
あの人は先般ああいう結果になってしまいましたが、ただただビックリしました。
わけがわかりません。

名前の由来に話を戻すと、ハーロックだけは、子供の時の自分の暗号みたいなものでしたから、これは根拠がないんですが、小学生の頃、私は学校の行き帰り、道を歩く時に意味もわからず、「ハーロック、ハーロック」をかけ声にしてたんです。
だからハーロックという名前も、自然発生的に出て来たんです。これがハーロックの誕生です。

それからスターシャですね。星の天使という意味で、スターシャと命名しました。
当初はこういう女性をアニメーターが描けず、原画まで自分で描きましたよ。
スターシャの正面を描いた原画は、プロデューサーに乞われるままに貸したきり戻って来ませんが、実はあれは、遺伝子が描かせた顔なんです。

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私の先祖の、ひいばあちゃんの世代は、ヨーロッパとの接点があったんです。
明治維新の頃、1860年あたりのそんな昔からすでに接点があって、家族と一緒に、ヨーロッパの人と写真に写っている。
この人たちはハッキリ言えば、シーボルトの子孫ですね。

そういう環境だったために、それに関する書物も参考資料も、家にいっぱい置いてあったんですが、その頃の銀盤写真に、あの顔が残ってたんです。
それに気がついたのが15年ぐらい前で、友だちのお寺のせがれが、蔵に入ってたのを送ってきてくれたんですが、その顔を高校生ぐらいの時から描いてたわけです。
だから遺伝子というのは恐ろしい。
私の先祖と共に写っていた女性の顔、どういう間柄なのか、誰かの母なのか赤の他人なのかは謎ですが、とにかくその顔を知らないうちに復元して描いてるんですね。

弟は学者ですから、遺伝子を調べた方が良いとしきりに勧めるが、私はそのままミステリーにとどめておいた方がいいと、止めてるんです。

弟との関係で言うと、まずヤマトの波動砲とか波動エンジンとか、名称と理屈はこちらで考えます。
重力イコール時間、波動というのはスパイラルで進行するから、横から見ると波になる、といった具合に。
で、そのことを理論上間違いないかと、弟にまず送ったわけですね。
そしたら、あながちウソとはいえないという答が返ってくる。
このように理論上の裏付けを取って、全部確認したうえで使っています。
 
その逆の事例もあって、深海艇で、大圧力下で手動で開閉できる、ハッチのロックと開閉装置を描いてくれと依頼されたことがありました。
「そんなの、その道の専門家がいるだろう」と訊き返すと、「専門家は書き(描き)尽くしたので、この場合は門外漢の方が良いだろうという結論に達した」と言われたので、13パターンほど描いて手渡しました。
忘れたまま1年半ぐらいほったらかしで、「あれはどうなったんだ」とふと思い出して確認したら、「使ったよ」と、のどかな返事が返ってきました。

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--テレビ第1シリーズの「ヤマト」にも、キャプテンハーロックが登場予定でしたが、結局出番はありませんでした。
もしそのまま「ヤマト」にハーロックが登場していたら、他作品にそのままキャプテンハーロックが、同じ名前で登場していたでしょうか?


ええ、それはもちろん登場させますが、ただこれは不幸中の幸いで、『ヤマト』の視聴率が非常に悪くて、51話の予定が (編注:松本氏は51話分を予定。よみうりテレビ側に39話分に短縮された)26話で打ち切られたんです。
それでハーロックが登場する、小マゼランの舞台を消したんです。

もちろんハーロックは単体で、キャプテンハーロックとして作る予定でしたから、ただきっかけがあれば、なるべくそのきっかけを生かして、キャラのお披露目をしておきたくもあったんです。

--ハーロックは『ヤマト』の最初のマンガと小説には出て来ます。これもあなたのキャラクターとしてのハーロックでしょうか、それとも別物ですか?

同じです。
なにせ私は海賊が好きだったもんですからね。ドクロのマークをつけるのも、『ニーベルングの指環』に出てくる、不滅の騎士団のマーキングです。
骨となっても俺は戦うという。
それから『海賊ブラッド』(1935)に連なる、連続冒険活劇なんかの、映画の影響もあると思います。

--ガミラスの生物的なメカデザインの発想の原点は、どこからですか?
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-がみみ

これは宇宙人という、いわゆる異生物ですね。
地球にだって、生命体にはいろんなタイプがいるからという意味で……。
あとはメーターですね。
私が飛行機マニアだったもんですから、メーターやパネルは、ブラウン管のように丸みを帯びずに、今の液晶と同じように(と言いながら、取材用のノートパソコンの画面を指し示す)、平面のパネルをいっぱい描いてるんです。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-えきしょう
それは技術の進化というのは、いずれ必ずそうなるはずだと確信があったんですけど、実際その通りになりましたね。

不思議なことに、何十年も前に描いたようなこういうものが、今当たり前になってきたんです。
たとえば長崎の三菱重工で巨大な船に入った時に、ヤマトの艦橋と同じようなものがあったんです。
「なんでこんなにそっくりなんだ?」と尋ねたら、若い技師が、「見て育ったんだからしょうがないじゃないか」って言うんですよ(笑)。
そういう影響を与えてもいるわけです。

--ヤマトの敬礼のポーズは、何をヒントにしていますか?
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これは私も世界中の映画を観てましてね。
いろんな映画の中で、誓いを立てて敬礼する時に、どこの国の映画にもよく出てくるんです。

--ヤマトクルーのユニフォームのデザインは、袖の山型など、新撰組を参考にしたのですか?

そうですね。
他にもヤマトの矢印のマークは、飛行第六十四連隊というのがありまして、実際は悲劇的な最期を遂げるんですが、一番優秀な戦闘機隊の、隼の尾翼につけてたマーキングから連想しています。
子供の時に見たり読んだりした、いろんなマーキングや写真がごちゃ混ぜになって、ああいうものを形作っていくわけですね。

新撰組からは、制服のデザイン以外にも色々学びましたよ。
『新選組血風録』(1965)という、東映のテレビシリーズがありました。

$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ひこうき
↑(左)「新選組血風録」の劇中スチル/(右)中島飛行機開発・製造のキ43 一式戦闘機 「隼」。連合軍のコードネームはOscar(オスカー)。大日本帝国陸軍の飛行戦隊、飛行第64戦隊、通称加藤隼戦闘隊が、マレーシアおよびビルマ戦線で使用。第一飛行隊の矢印は白、第二は赤、第三は黄色。指揮官機は青だった。この項のみ、スティーブン・R・ビアースによる。

それまでの連続ドラマは佳境に入ると「つづく」と出てしまい、次が見られるかはわからないからガッカリする。
ところがこの作り方が一話完結で、一つの話は一人を主役に据えた逸話で、それを全話つなげると一つの大きな物語になるというものでした。
だから「ヤマト」もこれにならって、30分一話完結にこだわりました。

実は新撰組の故郷は日野で、ここはすぐそばですから。
また新撰組が流山に逃れていく時は、うちのすぐそばを通って行って、流山から北海道へ向かったんです。
近藤勇が処刑された板橋も、すぐ近くですしね。
そういう親近感や、何か不思議な縁も感じ、精神的な影響も受けました。

たとえば新撰組というのは、最後には負けるというのはわかっていても、あえて戦いを始めた以上、最後まで戦い、散っていきますよね。
死ぬとわかっていても戦う。信念を曲げない。
説を曲げるくらいなら、最初からやるなと覚悟している。

ところが私の父親に言われて、私も信じてることに、人は生きるために生まれて来たんだ。だからどんなことがあっても生きろというのがあって、これが私の親父の、私に対する厳命だったんですね。
命というのは生きるために生まれてくる。
死ぬために生まれてくる者なんかおらん。
それははっきり、子供の頃から、たたき込まれてたんです。
ですからヤマトの最初のテレビシリーズで、沖田艦長が言いますよね。
「明日のために、屈辱に耐えて生きろ」と、それが男だ。
これがその言葉なんです。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-おきた

--アメリカでは、『スター・ブレイザーズ』で初めてヤマトに接したので、日本版の『ヤマト2』に相当する部分を、『さらば』より先に観ました。
『2』で復活したデスラーは、地球と地球人を理解して、「古代、お前は生きろ」と言った場面に感銘を受けたのに、『さらば』ではそうなっていなくて、非常にガッカリしました。
今でも先生の精神は『2』の通りなんですか?


そうです。ですからその次回作(『新たなる旅立ち』)では……もはやタイトルさえうろおぼえですが、プロデューサーと大ゲンカになりました。
なんでも殺すのが好きなんですよ。
でも私はそれはイヤなんです。
なんのためにそんなことをするんだと思います。
だって創作者が物語とキャラクターをつくる際は、存分に生かそうと決めて、思いのありったけを込めるわけです。
それをあっさり殺されたら、自分や、自分の兄弟や子供が殺されたみたいな、本当にイヤな気分になります。
そこが創作家とプロデューサーの違いなんです。
だから実際にものすごく腹を立てましてね。
オレはここから先は知らんぞと、脚本をたたきつけて帰って来たんです。
だったら自分は自分でつくると。
お涙ちょうだいで死なせるのにはつきあいきれない。
この意見の相違には辟易しました。
私は死なせたくない、それに尽きます。

--『ヤマト』や他のSFアニメのストーリーには、主人公が自分の命を投げ出して、愛する者の命を救うという、英雄的犠牲が描かれることが多いですね。
9/11のように多数の命が犠牲になる事件を経た今、先生のこうしたストーリーへのご意見は?


他者の命を守るために、自分が盾になる状況もあるだろうし、それで人命を救えるならばそれもいい。
しかし自分も死んではならない。
一方で大勢の人命を救うというのはとても大事なことだから、その両方を成立させるには、もうお互いにケンカしてる場合ではない。
そこへたどりつくわけです。

--『永遠のジュラ』篇のような、『ヤマト』の外伝を今後執筆される可能性はありますか?

実は『新・宇宙戦艦ヤマト』、グレートヤマト、単行本も2~3日前に再刊されてますが、これは全く別の物語として書いてますから、私の自由にしていいんです。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ぐれーと
だからいずれこれをアニメーションか、あるいは映画化します。

これは乗組員、主人公たちは死にません。
歯を食いしばってでも生き抜いて、不幸にして倒れる人もいるにせよ、主人公たちは絶対に死なない。

それは『999』でも同じで、延々と旅をする。
ハーロックでもエメラルダスでも、死ぬことはいやだ、絶対にいけないという。
人は生きるために生まれて来た。
命は生きるために生まれて来た。
死ぬために生きるバカはいない。
それがもう、私の作品の基本中の基本なんです。

--一応『G(グレート)ヤマト』の原作は終了していますが、再開するのですか?

ええ、まだやります。
一度書き始めたら延々とやるのが、自分のヘンな性分でしてね。
『999』ももう、30~40年続けて書いてますんでね。
それで一番最後に、自分の作ったキャラクター全部の、とびっきりの大冒険、カーテンコールをやりたい。
しかしそれをやったら終わりになりそうな気がするので、本当に自分が意識する時までは……俺も最後だと意識する時までは、絶対にやりません。

--『ヤマト』の音楽について、思い出があれば教えてください。

そうですね、『ヤマト』は音楽に恵まれてましたね。
ヤマトのテーマは、ベートーベンの交響曲第三番の第二楽章みたいなのをと、勝手な注文を出しましたが、宮川泰さんは「よっしゃ、わかった」と。
曲調は違うんだけど、なんとなく雰囲気に通じるところがありますね。
音楽といえば、つねづね自分の作品に『ツァラトゥストラはかく語りき』を使いたかったのに、『2001年宇宙の旅』(1968)を見て、ほぞをかむような、先にやられたかという思いでした。
間に合わなかったかと。

--『ヤマト』が日本の文化にもたらした、最大の影響はなんだと思われますか?
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-かたる

科学技術と天文学への興味を喚起したことでしょうかね。
それと、一人一人の人の思いですね。
映画やアニメの中には悪役が出るかも知れないけど、悪役にもそれなりの理由がある。
それこそが争いのタネであるが、いずれはそれが消えて行く。
生命体という、命を守るためには消えて行く。


パート1はここまで!

まだ1/3ですよ。

次回(パート2)が明日とは、お約束できません。

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