回を重ねて第8回!
なのに扱うのは、ウルトラセブン(7)。
これは5回目にイレギュラーなのを差し挟んでしまったため。
ですがあれは必要でした。どうしても。
若い人は、くれぐれも
ウルトラマンセブン
とか呼ばないように。
松ちゃんも、きっと怒るよ。
今回は書くこといっぱいありますよ。
では行ってみよー!
努力家で研究熱心な内山まもるは、ウルトラマンに最適な絵柄を先輩マンガ家の作品に探り、口元は人間のようにソフトに描くスタイルを確立した。
↑「帰マン」第6話のトビラ絵では、すでに自分流ウルトラマンのスタイル(絵柄)を完全に確立。
顔の輪郭、目の位置や角度は実物マスクに忠実ながら、口だけは人間風に描いている。
一方でセブンの口は、マスクに忠実にメカニカルに描き分けたが、
↓セブンを最初に描いた時点で、このできですよ!
「小二 9月増刊」の「決戦ウルトラ兄弟対11大怪獣」のトビラ。
↓マン系とは異なり、実物マスクを完全トレース。
これもまた、先輩マンガ研究の成果ではないかと踏んでいる。
「セブン」放映当時、マンガを担当したのは、
「ぼくら」(初回をのぞいて別冊付録)の一峰大二と、
↑一峰大二は連載当初、セブンの目を瞳のないサングラス状に描いていたが、後年に全て描き直して大きめの瞳を加えている。
↓そのため、これが一峰セブンの代表的な絵柄になった。
↓これは後年に描き直したものだが、基本的に一峰スタイルは頑固なまでに変わっていない。
「少年マガジン」に並行連載していた桑田次郎。
↓エレキングこそ途中で絵柄が変更されたが、主役のセブンの姿は終始一貫していた桑田版。
↓この十字架三連作を見れば、そこには画風うんぬんではなく、マンガ家としての美学が感じられる。
美しい!
骨太で大味、割り切った一峰タッチとは正反対に、繊細で洗練された桑田版セブン!
とにかく初代ウルトラマンのマンガ版の口は、(描かれた当時の実物、つまりAタイプどおりに)人間の口に近かったが、ウルトラセブンの口は、一峰版でも桑田版でも、実物に近い鋭角的な直線・曲線構成で描かれた。
構成要素が少なく、単純な形ゆえにバランスが取りにくいマンの顔に対して、セブンの顔はパーツがごちゃごちゃ密集していて、その全てをもれなく描き込めば、誰が描いてもそれなりにセブンに見える、という事情もあった。
つまり口だけ実物から変えてしまうと、そこだけ違和感があってセブンらしくなくなってしまうわけ。
とまあ、そんなこんなで、内山版のセブンはずっと実物どおりの口の形に描かれていて、
↑左から「小二」71年9月増刊「帰マン/決戦ウルトラ兄弟対11大怪獣」、
「エース」第1話 72年4月号、
「エース/ウルトラ5兄弟 たい ヤプール人」「小二」72年9月増刊
下あご付近の面取りが、次第に省略されていく。
これは、同じセブン系の顔の弟分のタロウの口(くち)が、簡素化して描かれる以降まで、ずっと踏襲された。
↑実際の血縁では、弟ではなくセブンの従兄弟(いとこ)にあたるウルトラマンタロウ。
1話(左)ではセブン同様の仮面分の口に描いていたが、1年間主役をつとめるキャラクター性(人間くささ)が必要との判断からか、2話(右)からマン系と同じ人間風の口にそろえられる。
↑これに伴い、「タロウ」連載中の73年からは、セブンの口も人間風に。
1973年「小二 9月増刊」の「かがやけ ウルトラの星」
↑「レオ」全話(左)も人型の口で、
その後の「小三」76年3月号の「復活!ウルトラ兄弟」(後の「ザ・ウルトラマン」ジャッカル編)で蘇るまで、ずっとそのままだった。
この復活セブン(右)は、タロウをさしおいて実物風の口に戻り、これ以降は基本的にそのまま。
また、最初は黒一色で描かれたボディは、重い印象を軽減するためか、「エース」からは斜線表現に改められた。
↑左から、「帰ってきたウルトラマン」客演の71年。
72年の「エース」客演、
73年の「タロウ」客演、
75年の「レオ」客演。
最後に、実物の姿に一貫してたいへん忠実だった内山まもるのウルトラセブン像なれど、2箇所だけ内山流に変えていた。
実物のセブンは、初代マンほどではないにせよ、マスクやスーツにバリエーションがあるが、とにかく一貫して首は銀色、
つまり白黒マンガでは白首になるはずなのに、内山セブンは黒首が多かった。
タロウが黒首だから、それと混同したのかと思ったが、
「ウルトラマンタロウ」(1973.4~74.3)
タロウが登場する2年も前から、なぜか黒首が散見される。
1971年夏の増刊で、はじめて内山マンガにセブンが登場。
しかし本編では実際は先にニセセブンが登場(左・中)。
そのため首が黒い(赤い)のは、あくまでもニセモノだからなのかと思ったが、後半登場の本物(右)も黒首だった。
↓72年の「エース」の「小二」誌上でも、前半まで黒(斜線)首、
↓特集ページのイラストでも黒(赤)首。
↓「エース」7話(ヒッポリト星人・ウルトラの父登場)から(左・中)、「タロウ」(右)の間は、ずっと白首。
なのに、↓「レオ」でまた、黒(斜線)首に戻ってしまう。
左は「小二」1話。
11話表紙(中)では斜線首だったセブンが、最終ページで白首(右)なのは、単に斜線を引き忘れたから?
まあ、「レオ」本編の1話↓で、耳がなくなってしまったのと比べれば、些細なことではあるが。
では、もう一つの「実物とは異なる内山セブンだけの特長」とは?
それはアイスラッガーである。
頭頂部のトサカを外して、脳波で操るこの必殺武器は、当然外す前と同じ形をしているはず。
ところが内山版は、本来のアイスラッガーから凹みがなくなり、代わりに頭に突き刺す?突起が2つついている形で、延々と描き続けられていた。
最初に登場した時は、ニセセブンが使っていたので、本物と区別するために、あえて別の形に描いたのかと思ったが……(あれ、ついさっき同じようなことを書いた気が…)
↓エースを救うために、本物のセブンが使ったアイスラッガーも、やはりこの形。
↓「タロウ」客演の時も、相変わらずこの形。
ずっとそのままかと思われたが、ついに是正される日がやってきた!
1975年、「小二」連載の「レオ」11話。
渾身の力を振り絞ったモロボシダンは、どうにかセブンに変身し、
アイスラッガーを形見にレオに渡して、MACのミサイルを背負って敵に体当たりして自爆。
とにかくこの時、初めて正しい形でアイスラッガーが描かれた。
↑
そこかいっ!
↑やっと気がついてくれたんですね、先生!
↓というわけで、溜飲の下がった最終12話。
ちなみにアイスラッガーとは、「ウルトラセブン」の仮タイトルが「ウルトラアイ」だった名残で、ほんとなら「セブンスラッガー」のはずなんですけど……
はい、ようやく今回はおしまいです。
次回(の内山まもるのウルトラマン)は、少し趣向を変える予定。
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