「シスの復讐」のタイトルでのブログも、今回の後編でおしまい。
なので、まずはシスについて。
テレ朝の深夜番組「虎ノ門」で、
井筒和幸監督が担当していた「こちトラ自腹じゃ! 」で、『シスの復讐』が選ばれた回に、カントクが、スタジオで「シスって何や?」と疑問を口にしていたが、たしかに映画劇中では、ほとんどシスについての説明がない。
「シスだと? もう1000年も姿を見せていないのに?」メイス・ウインドゥ----『エピソード1』
「やつらは常に2人。師と弟子、それだけしかおらんのじゃ」ヨーダ----『エピソード1』
で、シス(Sith)というのは、クソのShitのアナグラムじゃないかと勘ぐってたが、元ネタがあった。
*エドガー・ライス・バローズの小説「バースーム」(Barsoom)シリーズで、シスとは有毒な大型昆虫の名前である。
*先日、ディズニーに買収が発表されて話題のマーヴェル・コミックスの、1973年刊「スターロード(Star-Lord)」の1冊には、ルオスカー(Rruothk'ar)という悪役が登場するが、彼こそはシス卿(シスロード=Sith-Lord)だった。
さて、いよいよSWCJ(スター・ウォーズ・セレブレーション・ジャパン)の当日。
というより、その2日ほど前。
準備で早めに来日した、サンスイートとの会話。
「あの~、翻訳の直し料の支払いが、まだなんですが……」
「ああ、それについちゃあ、スタンと直接話さないとな。大丈夫、彼は信用できるから」
スタンからのメールでは、翻訳の予算、修正料に計上されたのは5000ドルということだった。
いよいよ開催初日の開場前の準備時間。
アーティストのコーナーは、まさに会場の隅っこに追いやられていた。
実は本場アメリカのSWCでは、アーティストのコーナーこそ大変な人気で、(作風による人気の多少はあるものの、)会場のほぼ中央に陣取っているのだが、CJでの冷遇ぶりはひどかった。
人気があるのも、日本人作家で文庫の表紙で有名な長野剛画伯だけで、他のアーティストの作品の売れ行きは散々だったらしいが、
それはともかく。
というより、そんなことになるとは思いもよらず、マクォーリーの画集だけは大人気になると確信しながら、販売ブースを探した。
画集自体は、限定グッズ販売コーナーで売られていたが、
アーティストコーナーでは、マクォーリーのリトグラフ2種の販売スペースがあって、そこにスタン・スタイスと、ジョン・スコーレリがいた。
二人に会うのは11年ぶりだが、「あなた(ジョン)は覚えてますけど、あなた(スタン)の方は……」と口ごもると、ジョン・スコーレリがすかさず、「ああ、あの頃はこいつも、髪の毛がフサフサだったからな」と説明する。
スタン・スタイスは、つるっぱげになっていた。
ギャラは、CJで画集が売れないと払えないし、主催者からの各業者への支払いは、1ヶ月以上後になると言う。
正直言って、会場に通う電車賃にさえ事欠く有様で、これには参った。
だけどスタン達も、同様に参っている。
印刷代さえ払えずに、責任者だから仕方なくなけなしの金で日本に来たらしい。
「あいつら(運営のルイス&ダニエルズ)は、どうしようもないクソ野郎だよ」と、口の悪いスタンは言い放つ。
TKは翻訳のごほうびに日本に連れてくる予定が、自分が翻訳者のタイトルを外されたことに腹を立てて、来ないことになったという。
「どの面(ツラ)下げて、来れるんだよ!」と心の中で思ったが、それは言わずに、スタンに、日本語翻訳の特殊性や押さえどころを説明した。
翻訳者とは別に、誤植をチェックする編集者も本来ならば必要になる。
だけど、今回は、私が両方出来るからやった。
そんなのは異例中の異例だと。
スタンはとにかく、半年でよくぞここまでできたんだから、それを言われても仕方ないというスタンスだった。
(スタン・スタイスのスタンスって、ややこしいね)
CJ2日目。
朝から会場をブラブラしてると、サンスイートと共に運営にあたっているメアリー・フランクリンが、私を見つけて、サンスイートと共に近づいてきた。
「お願いがあるのよ。ジョン・スコーレリが、マクォーリーのアートについて発表するスライドショーが午前中にあるんだけど、通訳を割りあてられなかったのよ。コレクターズパネルの発表と通訳は午後からでしょ。やってもらえない?」
……あのなー。
通訳スタッフはいたはずだが、1日目の私の度量を見て、もっと別のイベントに「引っ越し」、マクォーリーのプレゼンをバックレたらしい。
まあたしかに、発表の内容を、ぶっつけ本番でにわか通訳がこなせる感じもしなかったんで、二つ返事で引き受けた。
もちろんノーギャラです!
で、ぶっつけ本番の内容だけど、無難に通訳をこなせたのは、このための準備かのように画集を訳していたからだった。
だからスコーレリに内容を聞き返したのは一度きりで、あとは彼がしゃべってないことでも、本の中身の情報を加えて日本語に盛り込んだ。
終わったら、お客さんの一人が、「とてもよくわかりました。おもしろかったです」と、うれしい感想を伝えてくれた。
というわけで、別にTK氏のことを意図的にどかそうとしたわけじゃなく、自然な成り行きで、結局マクォーリーの件には、たずさわることになった。
私はそもそも絵描きなんだから、
一番の絵の師匠はマクォーリーということにもなる。
あんな絵は、一生かかっても描けないけどね。
彼が日本に来ること、彼の画集を日本で出すことを10年以上前に託されながら、それを果たせなかったおわびのような気もしていた。
で、ようやく
CJてんまつ報告(3)運命の仕事〈前編〉
の冒頭に書き記した、
クリエイティブな仕事って言うのは不思議なもので、自分がやるべき仕事は、ガツガツしなくても、巡り巡って自然と自分に託されることになる。
ただし、長い時間がかかるけど。
という一文の説明を仕切った次第。長いよ!
だけど、TK氏は、そういう風には思ってないらしい。
それはこのブログを始めたおかげでわかったこと。
CJ開催をミクシィで告知したら、公式発表前にはやめてくれと削除要請があった。
そのことをある日のブログで書いたら、
その削除要請をしてきた人物(ケンジ)から、コメントが来た。
それがなんと、TKだった!
(以下本項に関するところのみ、抜粋)
■申し訳ございませんでした
武田様
私、ケンジことTK(武士の情けで伏せ字)と申します。
私は根に持つタイプではありません。セレブレーション・ジャパンでは沢山の嫌なことがあり、病気になってしまいました。自分で訳した本が人にあたかも自分で訳したように出版されたときももう死ぬ思いでした。
……根に持ってるじゃん!
「自分(TK)で訳した本が人(私)にあたかも自分で訳したように出版された」って、この期に及んでわざわざケンカまで売ってきてるし!
私は争いを好む人間ではありませんが、売られたケンカは買いますよ!(「相棒」の杉下右京)
人に迷惑かけてるのはTK本人なのに、その自覚が全くなくて、無実の被害者ぶってる他罰的な傾向も相変わらず問題だしさ。
私の判断、行動基準は、どれだけ他者が利益や恩恵を受け、どれだけ利己的な人が得してしまうのを食い止めるかってことだから。
そんなわけで、TK氏については今後もネチネチと続きますので、皆様お楽しみに。
話を戻してCJ終了翌日。
昼の便で帰国するアメリカ人達は、幕張の海岸沿いのホテルにいた。
彼らに用事があって、朝早くから出かけると、スタンとジョンが朝食から戻るところにバッタリ。
私「CJはどうでしたか?」
スタン「最悪だ。俺の方がずっとうまく仕切るよ」
……ということは、画集もあまり売れなかったらしい。
私「売れ残った画集はどうするんですか?」
スタン「全部捨てちまうよ」
えっ、そんな! うろたえる私を見て、スタンはにやりと笑い、
「ウソだよ。全部持って帰る」
と言った。
それから一月たっても、二月たっても、ギャラは支払われなかった。
ようやく12月に、3000ドルが振り込まれた。
TKはいつ、いくらもらったのかなあ。
スタンとジョンの出版社、ドリームズ・アンド・ヴィジョンズ・プレスは、この画集のおかげで経済的に大打撃を被り、ついこの前までサイトが閉じてしまっていた。
今日この記事のために確認したら復活していたサイトでは、CJ限定だったマクォーリーの画集も販売されているし、100部限定の、サイン入りハードカバーも新たに販売されている。
パーキンソン病のマクォーリーにサインが書けるのか、ハードカバーとわずかな追加ページのために、(記述は日本語のまま)本体価格250ドルも払うのはどうかと思うが、同社にとっても窮余の策だし、スタンとジョンは悪くないので、お金持ちの人は買ってあげてね~。
私には一銭も入らないけど。
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