【光る社長 普通の社長】社外に出ることのススメ | 人生の水先案内人

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□アジア・ひと・しくみ研究所代表 新井健一

 

 仕事柄、さまざまな職種の経営者にお目にかかる機会があるが、経営が芳しくないと嘆く社長には、話が乗ってきたところで「週に何時間くらい社内にいらっしゃいますか」という質問を投げかけてみる。

 

 他愛のない質問のように思えるかもしれないが、答える時間数によって、経営状況や社長の力量が見えてくるからだ。

 

 経営コンサルタントや士業の間では、“社長の力量はその行動範囲で決まる”とも言われ、週のほとんどを社内だけで過ごす社長は大きな問題点を抱えているケースが多い。

 

 あくまでも傾向としてだが、経営者が特殊な技術をもって作業に従事しているなどの特別な場合を除き、社長が長時間会社に張り付いている企業は従業員のやる気が感じられず職場の雰囲気も悪い傾向がみられ、逆に社長が外に出て営業活動に専念している企業の従業員は、生き生きと積極的に仕事に取り組み職場の雰囲気もいいように感じる。

 

 社長が先頭に立ち、職場の士気を高めるのは間違いではないが、やり方を間違えると逆に倒産や廃業への道筋を作ってしまう場合がある。

 

例えば「社内に居続けて従業員の就業態度に目を光らせ、仕事の効率化を推進し、声をからしてコストダウンを呼びかける」などは、憂き目に遭いやすい、拙いやり方の一つだ。

 

 確かにすべきことではあるが、経営状況を良くするための決定打にはならない上、伝え方によっては従業員を萎縮させ、経営者や従業員の信頼関係が崩れてしまうなどの悪い影響も考えられる。

 

 そもそも仕事の効率化やコストダウンは、実働する人間が自発的に着手するのが理想で、従業員の尻をたたいてそうさせるよりも、従業員が「そうしたい」と思える環境をつくるのが経営者としては望ましい。

 

そして、その環境とはズバリ“社長元気で留守がいい”の状況をつくることだ。

 

 “やる気あふれる社員に囲まれて経営も順調”。こんな夢みたいな話を現実にするには、「社長は従業員を信じて会社から離れ、積極的に外に出て営業の成果を会社に持ち帰る」これに尽きると思う。

 

 従業員から「社長、たまには社内でノンビリしてください」と言われても、「飯の種は社内には一粒も落ちていないぞ」と言ってさっそうと外へ飛び出していくような魅力的な経営者だったら、従業員は必死になってその背中を追っていくだろう。

 

【プロフィル】新井健一

 あらい・けんいち 早大政経卒。

 

大手重機械メーカー、外資系コンサルティング会社、

医療・IT系ベンチャー役員などを経て、

経営コンサルタントとして独立。

人事分野で経営管理や経営戦略・人事制度の構築、

社員の能力開発・行動変容に至るまで一貫してデザインできる専門家。

45歳。神奈川県出身。