管見 プロメテウスの罠 38-1 | 夢破窓在のブログ

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管見 プロメテウスの罠 38-1

第三十八章  医師前線へ

P50 実弾を撃ったことがない兵士が最前線で戦うようなもの。

<SCRAP>
P53 
避難住民の検査では数千カウント(cpm)が続出していた。
シーベルトが被曝量を表すのに対し、これは1分間に体から出る放射線の数を測った値、この時は1万3000cpm以上が除染対象だった。

コメント:
cpmはアルファー線やベータ線で放出されている粒子の数を表す単位です。
ベータ線の場合、1分間に何個の電子が観測されたかということになります。
「体から出る放射線」と言いますが、衣装の下にまで核種が入り込んでいたとは考えられません。顔などの露出部分のことを「体」と言っているのか判りませんが、衣服の表面を測定して「体から出た」と表現するのは疑問です。

続出していた数千カウントが6000カウントだったとします。1分間に6000個の電子が放出されているという事は1秒間あたり100回崩壊しているということですから100ベクレルという話になります。
こちらは測定器の筒に飛び込んだ量ですから、測定器の筒の面積あたりの崩壊量になります。

衣服の測定値が100ベクレルだったとして、測定器を1m離して測定をしてみるとします。セシウムのベータ線の1崩壊当りのエネルギーは最大1.176MeV、平均0.392MeVです。平均的なエネルギーの電子は1mも飛んでくることはありませんから測定値は数十cpmになると予想されます。

ベータ線の電子はアルファー線のアルファー粒子に比べて電荷が小さく、二つがくっついて飛んでくることがあったり、エネルギーが弱くてセンサーまで届かなかったりするので正確には把握できません。

ベータ線はシャツ1枚も透過することは出来ません。Cs137のベータ線は2mも離れていれば届く事はありません。
避難住民の衣料から数千cpmがカウントされても体がベータ線を被曝することはありません。肌を直接曝した顔や坊主頭や手先が浴びることになります。
100ベクレルの電子に触れて人体にどれほど影響が出るかと言う事になりますが、筒の面積当たり0.392x100=39.2MeVのエネルギーを浴びたからといって何が起こるとも思えません。

ベーター線の電子の数と同じ数のガンマー線光子が放射されます。
Cs137では1ベクレル0.6617MeV。100ベクレル(6000cpm)では66.17MeV。
こちらは衣服を透過して人体に照射されます。
ジュールに換算して、
 66.17÷6.24x10^12=10.6x10^-12ジュール/秒
1時間当たりでは、
 10.6x10^-12x60x60=3.82x10^-8ジュール/hr
体の表面積が測定器の円筒の面積の1500倍であるとすると、
 3.82x10^-8x1500=5.73x10-5ジュール/hr
これを60kgの体で受取れば、1kg当たりでは、
 5.73x10^-5÷60=0.955x10^-6グレイ/hr
約1マイクロSv/hrの被曝になります。
着ているものを脱いでシャワーを浴びればどうということもありません。
何もしなくても、人体は3日で交代する上皮細胞で守られています。
まったく気にする量ではありません。

避難なんかせずに家の中にいれば、浴びずに済んだのです。
浴びたからどうと言うものでもありませんが。

この記事だけ他の記事と違ってベータ線の量を測定してあれこれ書いていますが、他の記事と同じ測定器で「ベクレル」なり「シーベルト」でガンマー線で統一して話をするべきです。

<SCRAP>
P55
(14日午後)
長崎大学医学部助教、国内に30人ほどしかいない緊急被爆医療の専門家。
チェルノブイリでは駆けつけた消防士が死んでいる。助教の頭に死がちらついた。

コメント:
チェルノブイリは核反応中の事故でした。事故直後から熱中性子の生成はどんどん減って行きますが、あちらは減速材が黒鉛でしたから、減速材に水を使っている時のように蒸発したり、流れ去ったりしないので、しばらく核反応が継続されたと思われます。その間中性子線が発生していました。制御棒が適切に挿入された福島とは状況が全くことなります。
チェルノブイリの消防士が亡くなったのは中性子線被曝が原因です。
JCO事故に比べて距離を置いて被曝していましたから時間当たりの被曝量は遥かに少ないのですが、何時間も浴び続けることになりました。

「緊急被爆医療の専門家」ですから被曝する放射線の種類や量について事故の状況に鑑みて推算を行なうのでしょうが、福島の状況で中性子線被曝を想定した事が考えられません。
制御棒が適切に挿入された福島で、炉の近くに人もいないのに、中性子線被曝を想定して「死がちらつく」というのは余りにもお粗末です。
これで「緊急被爆医療の専門家」と言うのは信じられません。
「助教」が「治療」に参加するのは何の問題もありませんが、専門家として事故対策に口を出すのはいかがなものでしょうか?

<SCRAP>
P56
原発治療直後は体表面で6000カウント(cpm)とされ、すぐに13000以上に変更された。
医療調査本部は除染基準を10万cpm以上にすることを13日夜の会議で決めた。

コメント:
単純にベクレルで書き直すと、
原発治療直後は体表面で100ベクレルとされ、すぐに217ベクレル以上に変更された。医療調査本部は除染基準を1667ベクレル以上にすることを13日夜の会議で決めた。(測定器の筒の面積当たりです)
という話になります。
事故直後はシーベルトという単位で話がされていました。マスコミが数値がやたら大きくて気に入ったからとベクレルという単位を使い始めました。ところがcpmという単位で線量を測っていた人もいたのですね。統一する必要があります。
新聞社が記事ごとに単位を変えて、ベータ線もガンマー線もごっちゃにして報道されたら読者は事態を把握できません。

気になる人は頭を洗って、避難してきた時に来ていた服は水洗いすれば、それだけで良いと思います。
除染というのをどうやるのか知りませんが、セシウム化合物は大変水に溶けやすいものです。風呂に入って着替えるほうが除染効果は大きいのです。
衣装は水で洗えばセシウムは拡散します。

<SCRAP>
P57
ここまで体表面の汚染が激しいということは、空気中に大量の放射性物質が含まれる筈だ。もう検査の段階は過ぎている。
安定ヨウ素剤の服用を検討するべきだ。

「安定ヨウ素剤の服用は原子力安全委員会がスピーディの予測数値を見ながら決める。君が考える事ではないから」

コメント:
体表面?衣服表面ではないのですか?
6000cpm→100ベクレル。先程の計算で1マイクロSv/hr。
「ここまで体表面の汚染が激しい」などと言えるでしょうか?
空気中に大量の放射性物質がふくまれているのかどうかは、サーベイメータでも使って測れば良いのです。
体に付着、蓄積された放射線量で、それもcpmで測って、空気中の量がどうのこうの言う感覚はとても専門家のものとは思えません。

沃素剤ですか?もう説明するのがいやになってしまいます。
本当に原子力安全委員会はSPEEDIの予測数値を見ながら決めるつもりだったのでしょうか?
あの放出量の数値決定もどうやって決めているか判らない、炉から出てくる筈のない沃素がすいすい何十kmも移動して、24時間屋外にいたとしたら被曝量はxx、なんてやっているSPEEDIで話を決められたらたまったものではありません。

そして、こんな程度の低い長崎大学の「助教」に沃素剤の服用や除染の方針決定を考えらてはたまりません。


<SCRAP>
P60
足の傷口が開き、そこから内部被曝する危険性のある隊員もいた。

コメント:
内部被曝というのは、筋肉などに取り込まれたセシウムや甲状腺に蓄えられた沃素の放射線を浴び続ける状況を言うのではないでしょうか?
息をして吸い込むのも、皮膚が触れるのも、傷口が空気に触れるのも話は変らないと思います。なんで「内部被曝の危険性」という話になるのか判りません。
(続く)