Your tears 中編  | 恋愛前夜

恋愛前夜

はじめまして。
ここは、私が大好きな漫画から想像した小説を中心に載せているブログです。
作者さま、出版社さま、その他関係者さまとは一切関係ありません。
好きが深まって、個人的に小説を書いています。
心の広い方、二次小説に理解のある方のみお読み下さい。

次から次へと流れ出ては、頬を伝って服にシミを作っていく。
涙なんて記憶の限り、殆ど流したことのなかった俺は、涙の止め方なんて分からず更に動揺する。
拭うことも忘れて、ただただ目の前にいるボヤケた牧野を見つめ続けていた。

「類どうしたの?泣かないで類」

俺の代わりに牧野が持っていたハンカチで、頬に伝う涙を拭ってくれる。されるがままになりながらも涙は止まる所か優しい牧野の声に、益々量を増やしたみたいだ。

「何か嫌なことあった?悲しいことあった?」

いやなこと?  そんなの  そんなの

「まき・・・」

ヒク。
喉がヒクついて、声が上手く出ない。

「うん」

「ま・・き・・・のっ」

「うん」

「まきの まきの まきの まきの まきのッ」

「うん」

壊れたロボットのように、何度も牧野の名前を呼ぶ。その度に牧野は返事を返してくれる。
ポン ポン ポン ポン ポン ポン・・・
返事と一緒に一定のリズムで背中を叩かれ、動揺と緊張、色々な感情で固まっていた体が段々と緩んでいくのがわかった。

牧野、好きだよ。NYに行かないで。俺のそばにずっといて。
行かないで。置いていかないで、牧野。

この気持ちを今すぐに牧野に告げたら。
牧野は、呆れるだろうか。困惑するだろうか。いっそ、本音をぶちまけて、嫌われてしまうのも良いかもしれない。
友人ですらいられなくなっても、親友の隣から俺に笑いかけるあんたを見なくて済むのなら。
苦しい苦しいよ牧野。
こんな気持ち捨ててしまいたい。
だけど
それでも好きなんだ!

もう ずっと 前から。

「・・・る・・・・・・い」

遠くで牧野が俺の名を呼ぶ声がする。
その声と温かな温もりに包まれながら、俺は意識を手放した。










目が覚めた時、俺のそばに牧野の姿はなく。
それから顔をまともに会わさないまま、暫くして、牧野はNYへと旅立って行った。