時は止むことなく | 恋愛前夜

恋愛前夜

はじめまして。
ここは、私が大好きな漫画から想像した小説を中心に載せているブログです。
作者さま、出版社さま、その他関係者さまとは一切関係ありません。
好きが深まって、個人的に小説を書いています。
心の広い方、二次小説に理解のある方のみお読み下さい。

蓮の恋心に本人よりも先に気付いたのも、キョーコちゃんの想いに気付いたのも多分俺が最初なのだ。
付き合いだした2人のその関係の危うさに気付いたのも。

付き合うことになったと蓮から聞いた時、俺は素直に嬉しかった。
可愛い弟や妹のような2人。ずっと応援してきた恋だったから。

蓮は、歳の割りに考えも行動も壮年の大人のようで、抱かれたい男ナンバーワンとして世間を賑わし、若手実力派俳優の名のもとに芸能界で活躍している。
それは、付き合いだしたキョーコちゃんを前にしても変わらなかった。
彼女を大切にしているのはわかる。もしかしたら、2人きりの時は態度が違うのかもしれない。
柔和な笑み
格好良い仕草
温厚紳士の敦賀蓮。

けれどどこか作り物のような気がして、何かを隠しているんだと長年の付き合いでわかるようになった。

人間、誰もが大なり小なり隠したい事はある。
蓮の場合は、大きな隠し事を抱えているように思えた。

それに対して、俺は別に追求するつもりはない。
時が経てば話せる日もくるかもしれないと思うからだ。
でもそれは、敦賀蓮のマネージャーだから思うことであって、恋人であるキョーコちゃんは違う。
付き合う前の方が蓮は素の感情を彼女にぶつけていた。

蓮、お前それをわかっているのか?

俺は、溜め息を吐きながら蓮を見た。
蓮は、スタジオで以前も共演したことのある女優と楽しそうに話している。
キョーコちゃんと付き合いはじめてから、一定の距離を保つのは忘れないが蓮のガードが緩くなったのか、こんな場面をよく見かけるようになった。

今までゴシップなんてされたことのない蓮が、何度かスポーツ紙を賑わす。

「大丈夫です、キョーコは俺のことちゃんとわかってくれてますよ」

その都度、心配する俺に蓮は嬉しそうに笑うから、最近は何も言えない。

交際を公表していないこともあって、以前は先輩後輩として近くにいた蓮とキョーコちゃんは共演しても近くにいることはない。
俺が焦燥感を抱いたって仕方ないってわかってる。
これは、2人の問題だ。

キョーコちゃんがそっとスタジオを出ていくのを目の端に捉え、俺は思わず後を追ってしまった。
キョーコちゃんの腕を捕ると振り返った彼女はやっぱり泣いていた。
期待に満ちていた表情が俺の姿を認めて、小さく歪む。
蓮だと思ったんだろうな。
不器用な彼女の恋に胸がチクリと傷んだ。


終わりへのカウントダウンが始まる。