- イニシエーション・ラブ (文春文庫)/乾 くるみ
- ¥600
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僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて……。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説――と思いきや、最後から2行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。「必ず2回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。
この前「リピート 」のレビューを書いた時に さんに「騙されたと思って読んでみてください」と言われたので、早速読んでみました。
最初はね、正直陳腐な恋愛小説だなーと思って読んでいたんですよ。まさかこんな沢山の仕掛けがあったなんて。
さん、教えていただきありがとうございました。最後まで読んで、最後の最後でこの本の面白さがわかりました。そして本の紹介に「必ず2回読みたくなる」とあったように、もういろんなことが気になってもう一度読み返しちゃいました。side-A
代打で呼ばれて行った初めての合コン。合コンで出会った相手と簡単に付き合えるような軽い女とは付き合いたくない。だから合コンにも全く乗り気ではなかった。しかしその席でマユに出会い、そして恋に落ちた。やがて二人は初々しい交際がスタートさせ、夏休み、クリスマスと共に過ごし、大学時代の最後の年を一緒に過ごした。
side-B
マユの為に大企業を蹴って、地元静岡の会社に就職したたっくん。しかし入社してすぐに東京への勤務を命じられてしまう。たっくんが週末だけ静岡に帰って来るという遠距離恋愛になってしまった二人。そして東京生活に慣れだしたたっくんと、地元静岡にいるマユの間で次第にすれ違いが生じていってしまう。
この本、正直感想書きにくいです。というかネタバレしないで感想書ける自信がない・・・。ので、この本を読もうと思っている方は読まないでください。まったく何の知識もない状態で読まないとこの本は楽しめないと思いますので。そして読み始めたら陳腐な恋愛小説だと思っても、投げ出さずに我慢して読み続けてください。
時代はまだ携帯電話も普及していない80年代なので、ちょっとレトロな雰囲気が漂ってます。ドラマの話題で出てくるのが、男女7人だったりとかね。
誰とも付き合ったことがたっくんが、マユに恋をし、そしてそれを成就させていく過程が描かれているのですが、ちょっとうまくいきすぎじゃないの?というぐらいうまくコトが運んでいきます。そしてはっきり言ってしまえば、本当なんかつまらない恋愛小説を読まされているような感覚なんですよ。そして恋愛初心者だったたっくんは、マユと付き合うことによって、見た目もにも気を遣うようになったり、マユの為に車の免許を取ったりと、確実に変わっていきます。でもなんだかこの二人の付き合いは本当初々しくてかわいらしい感じでした。
ただ社会人になったたっくんは、最初の初々しさはどこへやら?いつの間にかすごい自信に満ち溢れた男に様変わり。それでもマユのことはすごく大切にしていて、東京に転勤になってからも毎週末きちんと静岡に帰っていくたっくんは偉いなー、マユのことを本当大切にしているんだなーと思ってましたけど。
だって平日毎日働いて、週末は毎週東京と静岡の往復って相当大変ですよ。休む暇ないですからね。そして東京で身近に魅力的な女性が現れて、心惹かれつつも、たっくんは簡単にマユを捨てたりはしなかったですし。
でもなんとなく読んでる途中で違和感があったんですよ。多々、あれ?っと思うことが。だけどそれもただ小説が陳腐なだけなんだと思ってあまり気にしてませんでした。まさかそれらが全部伏線だったなんて、全く気づかなかった私・・・。
そもそもたっくんがあまりにも変わりすぎてたんですよね。まるで別人。(おっとネタバレなので白文字にしました。)
でもさー、読みながら、マユちゃんかわいそうって思っちゃったんですよ。そしてやっぱり遠距離って難しいね、とか、あんなに思い合ってたのに、こうやって気持ちが離れていっちゃうんだよね、とかいろいろ思ったんですよ。たっくんと石丸さんにちょっとムカついたりもしたんですよ。そもそもたっくんに近づいた石丸さんの存在も陳腐でしたね。なんだこの女は。この積極性は自分によほど自信があるからこそ、ですよね。
だけど、だけど。ラスト2行目を読んで愕然。
え??マジで?
いや、そうかなぁと思ったところはありましたけど、でもまさか本当にそうだとは思わなかったよ。というか完全にミスリードを誘う描き方でしたからね。でもそのラスト2行を読んで、すべての違和感の意味がわかりましたよ。本当騙された。しばらく唖然。
そしてそのラスト2行で「え?」と思った後に、次から次へと疑問が沸いてきて再読しちゃいました。気になることがたくさんありすぎたので、ネタバレ感想を探してしまいました。
ありました。
ゴンザさんの【ゴンザの園】 というブログに詳しく解説されてます。これはすごいわかりやすいです。そして数々の謎をすべてゴンザさんが解決してくれていましたし、私が全く気づいていなかったことも沢山描かれていて、驚きと納得の連続でした。ラスト2行ですり替えトリックにみんな気づくわけですが、時制のトリックはすぐには気づきませんでした。それから天童がリピート にも出てきているというのもゴンザさんのブログで知りました。ゴンザさんありがとうございました。
そしてゴンザさんの解説を読んで、マユを恐ろしく感じました。コイツすごい。全然可哀想なんかじゃないじゃん。超計算女じゃん。
『初めての相手がたっくんで、本当に良かったと思う。』
『二度目の相手もたっくん。三度目の相手もたっくん。これからずっと、死ぬまで相手はたっくん一人。』
この言葉が恐ろしくて仕方なかった・・・。オンナは恐ろしい?
いやー、すっかり騙されました。もっと深く読まないとダメですね。反省。
★★★☆