伊藤健太郎 『男のための自分探し』 | 映画な日々。読書な日々。

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男のための自分探し/伊藤 健太郎
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自分らしく生きるとは?

本当の幸せはどこに?

永遠の問いに、21世紀の学問「科学哲学」で迫ります。恋愛、結婚、浮気、自由、死、幸福などをキーワードに、「男」の心と体の謎に切り込んだ、全く新しい「自分探し」です。


男のための自分探しというタイトルですが、章によっては男に限った話ではなく、「男のための」がなくてもOKな内容でした。


でもこれ、多少わかりやすく書かれてはいますが、「哲学書」なんですよ。だからちょっと難しかったですねぇ。


なぜ人は「自分探し」をするのか。

それは「今の自分は本当の自分ではない」と感じるから。

そして問う前に「問い」を問え。

つまり自分探しとは何を探すことなのか、その「問い」の意味を明らかにしている本です。

でも結構極論です。


前半は恋愛的要素のお話です。

しょっぱな、「誤解を恐れずに言えば、「結婚」は人生の唯一にして最大の幸福です。」と。

これらを進化論や大脳生理学、哲学、心理学・・・あらゆるところから解明していきます。


この辺は結構面白かったですよ。

恋人同士を結びつけるのは空想と夢。

恋は麻薬。

愛は4年で終わる。

なるほどーと思わされる部分多数です。

そして最後に哲学者ニーチェの言葉で締めくくっています。

「安定した結婚には、趣味や興味の一致が欠かせない要素だとよくいわれます。友達として末永くつきあえる人を探しましょう・・・。


また結婚が幸せなのは、子孫を増す営みだからなんだって。体は自分の血筋を保つのにプラスになることを、「きもちいい」と思うようにできているらしい。そして「きもちいい体験」は繰り返したいと思うようにプログラムされてる。


恋愛的要素(愛・性・結婚)の前半はかなり興味深く面白く読みました。そして後半で本書のタイトルの真相に迫っていく感じでした。が、結構難しかったー。


沢山哲学者がでてくるんですよ。

ソクラテス、ニーチェ、ハイデガー、ウィトゲンシュタイン、サルトル、ヘーゲル、パスカル、ロック、ヒューム、カント、プラントン、フロムetc・・・。

もちろん前半にも出てきてはいるのですが、後半はその頻度が高い!


彼らはこう言ってます的な感じで書かれているのですが、だんだん頭がこんがらがってきました。哲学ってムズカシイ。


「自分は何も知らないと知った者が、最大の賢者である」というソクラテス。ソクラテスみたいに理詰めで質問されてったら誰だって言葉に詰まっちゃいますよ。その相手は全く無知だったわけではないだろうし、何も知らなかったわけではない。だけどとことん突き詰めていくと結局「わからない」となってしまう。ソクラテスみたいな人と会話はしたくないわ・・・。


「私」とは何か?

本当の私は見ることも触ることもできない。

昨日の私と今日の私は同じか?

私と私の体は別。

言ってることはわかるんですよ。だけどそれらも極論じゃない??

私は私だよ、言葉で上手く説明できなくったっていいじゃん。細胞の塊だろうとなんだろうと、私なんだよ、って感じ。そういうことを問い詰めていったら、何もかもがわからなくなっちゃいます。でもこれが哲学?


でね、哲学的にいろいろ考察した結果、結局は「幸福に生きよ!」

それはこんな難しく考えなくても出てくる言葉ですよね。

だけど結論は同じでも、今までいろいろ考えた過程が大切だってことなのかなぁ?


そもそも幸せな人は、自分が幸せな時は、満たされてる時は「幸せって何?」「本当の自分は?」なんてことは考えたりしないですよね。


そういうのを考える時って、いろんなことが上手くいかなかったり、失敗しちゃったり、やりたいことがわからなくなったり。そうやって落ちてる時。


これを読んだからと言って、「自分らしく生きるとは?」「本当の幸せとは?」がわかるわけではないと思います。だけど漠然と自分探しをしようとするのではなく、人間の心理や行動について哲学的にみた結果、じゃあ自分はいったい何を知りたいのか、今の自分は何が問題なのか、何が足りないのか、そういうことを考えるきっかけにはなると思います。


そして沢山の哲学者の言葉を読みながら、いつの時代でも人はみんな同じようなことを悩み、考えているんだな、と思えると思います。


難しかったと書きましたが、こういう本が苦手な私でも読めたので、多分普通の哲学書を読むよりは全然読みやすいしわかりやすいのではないかと思います。哲学の入門書的に読むにはぴったりかも。


★★☆