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2008年10月04日(土)

石田衣良 『非正規レジスタンス』池袋ウエストゲートパークⅧ

テーマ:Book
非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパーク8/石田 衣良
¥1,600
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悪徳人材派遣会社に立ち向かうユニオンのメンバーが次々に襲撃された。格差社会に巣食う悪と渡り合うマコト。人気シリーズ第8弾。


池袋ウエストゲートパークシリーズの第8弾。シリーズ全部読んでいますが、ブログを始めてからは「灰色のピーターパン 」「Gボーイズ冬戦争 」に続いて3冊目です。


もうこれだけシリーズを重ねると、正直最初の頃のわくわく感みたいなものはありませんが、逆に落ち着いて安心して読める感じですね。


「今の日本を知りたかったらI・W・G・Pを読め!」というだけあって、毎回その時の旬な話題を題材にしているように思います。


今回テーマにしてるのは「格差社会」の下の方。


親指の恋人 」でも格差社会のことを描いていましたが、石田衣良さんは、今の日本が抱える「格差社会」の底辺の方の人たちをなんとかしたいという気持ちが強いんだろうな、というのが強く伝わってくる作品でした。石田さんは実際にそういう人たちを何人も目にしているのかもしれません。


千川フォールアウト・マザー

シングルマザー・ユイのお話。ユイと3歳の息子カズシが店にやってくると、いつも売り物にならない果物を袋に入れて渡す。夜働き、昼は育児で休む暇がなかったユイに起きた悲劇。しかしその後ユイが別人のような姿でマコトの前に現れた。


ユイみたいなシングルマザーの方は結構多いのかもしれません。子供がいるから昼間は働けず、夜しか働くことができない。正社員になることもできないから、安い給料でなんとか生活している崖っぷちの状態。そんな時に優しく声をかけられたら、誰でも正常な判断なんてできないのかもしれません。正社員で働けるか、働けないかってすごい差なんだ、と思いましたね。


池袋クリンナップス

毎週月曜の夜に黄色いバンダナをつけて西口公園に集まり、ゴミ拾いを始める人たち。誰に頼まれたわけでもない、ボランティアの輪。そのクリンナップの輪を広めたのは池袋ミッドシティを再開発したデベロッパーの一人息子・カズフミだった。そしてマコトも一緒にゴミ拾いをした翌日、カズフミが消えたという連絡が入り、さらに彼の父親の元に身代金の要求電話が入る。


先日読んだ「夜を守る」でもゴミ拾いしてましたね。石田さん、ボランティアのゴミ拾い斡旋か?カズフミの失踪、そして身代金要求と、誘拐事件のようではあるのですが、なんとなく切羽詰った感がなかったのでちょっと展開を予想してしまったら、予想通りでした。でもお金のある人が、カズフミみたいな行動を取ってくれたらどれだけ救われる人たちがいるだろう、と思いましたね。カズフミの「格差社会でちぎれてしまった人と人とを水平に結ぶための力になろう」、石田衣良さんはこうやって本を書くことで力になりたいのかもしれない、と思いました。


あと、マコトとタカシの会話がよかったです。

「本当に優秀な人間は自分のためじゃなく、街のみんなのために働くんだってさ」

「くだらない。おれたちはそんなこと、ずっと昔からやってるじゃないか。」


定年ブルドッグ

元彼からSMプレイ中の写真をばらまくと脅迫されている女・ハルナからの依頼を受ける。親は警察官だから警察には届けられないというのでしぶしぶOKするマコト。しかしハルナの親にも脅迫メールが届いていて、彼の部下の元警察官・大垣という男も密かにハルナを護衛していた。マコトと大垣は協力して元彼を懲らしめることにする。


これは定年ブルドッグこと、大垣のおかげですね。マコトの作戦は正直私もそれだけ?なーんて思っちゃいましたから。マコト一人だったら全然ダメでしたね。大垣&タカシたちの協力あっての解決。そして確執があった親子の話もまぁ綺麗過ぎると言えばそうですが、わかりあえてよかったなーなんて。そういえばこの話だけ格差社会からは離れててたかな。


非正規レジスタンス

非正規レジスタンス⇒ストーリー的には日雇い労働者の抵抗、みたいな感じのタイトルでしょうか。

マコトの店の前を、90分おきに通る青年。旋回が4回目を数えたとき、腐りかけのバナナをもって彼に声をかけ、そして話を聞く。その青年・サトシは人材派遣会社・ベターデイズに登録するフリーター。コインロッカーに持物を預け、ネットカフェで寝泊りするワンコールワーカーで、彼の夢は夜脚を伸ばして寝ること。

それから数日後、東京フリーターズユニオンを主宰するメイド服の女があらわれ、サトシが襲われたという話を聞く。


この話、多分誰かしらのモデルがいるんだろうな、と思いましたね。東京近郊に実家があるフリーターは違うと思いますが、地方から出てきたフリーターにはサトシのような境遇の人が結構いるのかもしれません。


身なりは普通の人と変わらないから気づかれない。でも家はなく、昼間は日雇い派遣で働き、荷物はコインロッカー、ネットカフェのナイトパックが始まる10時まで時間を潰して、ネットカフェでシャワーを浴び、リクライニングチェアで寝る。仕事だって毎日あるわけではないし、肉体的に辛いものも多い。健康保険にも入れないから病院にいくことすらできない。怪我をしてても働かないとホームレスになってしまうと無理をしてでも働く。

サトシがノートに綴った「あきらめない・・・泣かない・・・うらまない・・・切れない・・・」は切なかったですよ。こんな境遇にあってもそう強く思っていられるのってすごい。


サトシは自分はホームレスではないと言い張ってましたけど、家がない=ホームレスですよね。絶対にこの生活からは抜け出してやる!って思っていてもなかなか抜け出せない現状があるんだということを知りました。


なんとかして格差社会の底辺の実情を浮き彫りにして、改善させたいという石田さんの思いが伝わってくるお話ばかりでした。自分の今の生活は普通で当たり前だと思っていましたが、これを読んでその普通がいかに恵まれた境遇にあるのかを実感して、親に感謝しないといけないな、と思いましたね。


★★★☆

コメント

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1 ■無題

「夜を守る」で珍しく上野舞台にして町を綺麗にしてたけど
IWGPでまた池袋掃除してたから、石田さん読者の若者に啓蒙?と思いました(´∀`)

先日 大阪の個室ビデオ店の放火で亡くなった人のニュース見て、
ネカフェを回る人と同じかなって 真っ先にこの本思い浮かべてしまいました

2 ■バニラさんへ

こんばんは。
そうですね、夜を守るでもこの作品でも若者が町を綺麗にしてて、私も同じこと思いました。

ネットカフェ、、、結構便利ですけど、本当の問題をうまく隠してしまっているかもしれませんね。

3 ■無題

シリーズ全部読んできたので、キャラの行動や気持ちもわかって、安心して読める感じです。
「格差社会」考えさせられましたね。
マコトもすっかり大人になったなあと思いました。
今後のシリーズ展開が気になります。

4 ■無題

先日の「放火」事件が思い起こされます。

自分の夢を持ちながらも、住所を持てない人々。
便利な時代と言えば、聞こえはいいが、なんか間違った方向に向かっているようで、恐い時代です。

5 ■無題

こんばんは。
毎回、安心して読める物語ですよね。
最初の頃と違って、登場人物が抱えてる問題が重くなっているような気がします。
働いても、働いても、何もよくならない生活。
そんな人たちもいるんですよね。
masakoさんが描いていた「自分の今の生活は普通であたりまえ」って気持ち、私も持っていましたが、本当にそれが恵まれたものなんだろうな手思いました。

6 ■藍色さんへ

こんばんは。
確かにこのシリーズは全部読んでた方がいろいろわかっていいですよね~。
格差社会は本当考えさせられました。こんな現状だったとは恥ずかしながら知らなかったので。
今後も社会問題をいろいろ取り上げていきそうですよね。

7 ■じゅずじさんへ

こんばんは。
私もその事件は思い出しました。
本当便利な世の中が新たな問題を生んでしまっているようにも思いますよね。
少しでも改善されていくといいですが・・・

8 ■ななさんへ

こんばんは。
はい、安心して読めますね。これなら失敗はないと。
本当こんなに苦労している人たちがいるなんて知りませんでした。自分がいかにありがたい環境にいるかを感謝しないといけないと思いましたから。本当当たり前のことを当たり前にするって結構難しいことなのかもしれませんね。

9 ■無題

こんばんは。
毎回、安心して読めるって実はすごいですよね~。マンネリとか文句言うのも楽しかったり?

今回はマコトのおかあさんがかっこよくて良かったです。そんなおかあさんに弱いマコトもいいです。

10 ■ちきちきさんへ

こんばんは。
本当、確かにマンネリという言葉も出てきてしまいますが、これだけ長い間楽しませてくれるシリーズはやっぱりすごいです。
マコトのお母さん、格好良かったですね。

11 ■「自己責任」という呪縛

こんばんは
はじめまして
京都でライターをやってます
ぼくも、IWGPシリーズの割と熱心な読者です
今回のテーマは、いつにも増して社会性の高いものでしたね
ぼくも、同様のテーマで路上生活者や非正規切りにあった若い人たちを取材したことがあります
その実感から言っても、とてもリアルな話だと思います
とくに貧困の連鎖に巻き込まれるサトシの描写は秀逸です
オペラ好きの首相とその仲間たちがとなえた「自己責任」というイデオロギーの呪縛にとらわれ、底なしの格差社会に落下していく
どれだけ虐げられても、みずからを責める
サトシがノートに綴った散文は、そんな現代青年のメンタリティを表現し、あまりに切なく胸を打つものでした
masakoさんは、「強く思っていられるのはすごい」と綴られていますが、ぼくは逆に、ひとりぼっちで「自己責任」に追いつめられた、悲鳴のように思えてなりません
ぼくたちは、路上にくらす人や、非正規切りにあった人たちに、まずこういいます
「ようがんばったな。あんたは悪くないんやで」と


12 ■>nidlanさんへ

こんばんは。
実際に取材されたことがあるnidlanさんがリアルとおっしゃるなら、この物語は見事に彼らの現状を描いているんですね。

>悲鳴のように思えてなりません
確かにそうかもしれません。
悲鳴かもしれないけれども、強く思える気持ちがないともっと落ちていってしまうような気がするので、サトシみたいに踏ん張ろうという気持ちがある人はまだ頑張れるのではないでしょうか。

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