『暗いところで待ち合わせ』 @シネスイッチ銀座 | 映画な日々。読書な日々。

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暗いところで待ち合わせ

交通事故が原因で視力を失ったミチルは、父親と二人暮し。しかしその父が死に、ミチルは親類の反対をよそに一人暮しを始める。彼女の家の下は駅のホームだ。ある日、一人の男がそのホームから転落し、入って来た列車にはねられて死亡する事件が起きた。その直後、一人の青年がミチルの家に忍び込む。やがて青年は彼女に気づかれないように息をひそめて居間で暮らし始めた。彼は死んだ男の同僚で、駅から逃走して殺人の容疑をかけられているアキヒロだった。[上映時間:129分]


”白”乙一作品の映画化です。なかなかよかったです。きちんと原作の良さが生かされていました。

多少ネタバレを含みますので、未見の方はご注意ください。



事故で視力を失った女性ミチルは父親と二人暮らし。ミチルは毎日部屋の窓を開け、外の空気を吸う。目は見えないけれど家の中はすべて把握していて、家の中であれば自由に動くことができるし、料理も作ることができる。しかし父親が突然亡くなってしまい、ミチルは一人ぼっちになってしまいます。そして住み慣れた一軒家で静かに一人の生活を始めます。


一方、職場での人間関係になじむことができずに孤立しているハーフの青年アキヒロは、ミチルの家の下にある駅で起きた転落事件の容疑者としての疑いをかけられ、ミチルの家に忍び込みます。ミチルの目が見えないことを知っていて家に忍び込み、居間の隅で息を潜めた生活を送り始めたアキヒロ。


家の中に何かがいる気配を感じるものの、その存在を追及することなく気づかないふりをして普段の生活を続けるミチル。


こうして始まった奇妙な同居生活。


台詞が少なくて静かなので、適度な緊張感があります。


自分の存在を隠していたアキヒロが思わずミチルを助けてしまうシーンが結構好きです。助けてもらったミチルは「ありがとう」と言います。そして他者の存在を確信したミチルは、部屋にいる”誰か”の為に食事を作る。それをありがたく食べるアキヒロ。原作でも結構好きなシーンでしたが、映像でもあったかいシーンでした。


アキヒロの存在を確信してからも、ミチルとアキヒロに会話はありません。でも感覚や空気でお互いの存在、優しさを感じとり、少しずつ近づいていく二人。


田中麗奈の静かで自然な演技がすごくよかったです。家の中に閉じこもり、静かに自分のリズムで生活するミチルを見事に演じていました。そして基本的には感情をあまり表に出さないミチルが、お葬式の時に窓から「お母さん!」と叫ぶシーンはすばらしかったです。


アキヒロ役のチェン・ポーリンは、シュガー&スパイスで、グランマの彼氏役だった人ですね。アキヒロは映画でハーフという設定にしたことで、職場でのいじめや疎外感、孤立感などがより強く伝わってきましたが、チェン・ポーリンのたどたどしい日本語は若干気になってしまいました。前半部分はほとんど言葉を発しないので良かったのですが、終盤ちょっとしゃべりすぎでしたね。最後まであまりしゃべらない方がよかった気がします。


前半部分はかなりいい出来で満足だったのですが、それだけに終盤が安っぽいサスペンスのようになってしまっていたのがちょっと残念でした。井川遥が飛び出してくるシーンは一瞬ホラーかと思ってしまいました。


それからミチルが一人で外を歩こうとしたシーンでの、周りの人の冷たさもちょっと気になりました。世間はこんなに冷たくないはず。


でも全体的に観終わった後、暖かい気持ちになれる素敵な映画だったと思います。やっぱり原作が良いからかな。


シネスイッチ銀座にて鑑賞


★★★

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