2019年7月25日『中島らものたまらん人々』 | 前山和繁Blog

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このごろ、過去に書いた記事の誤っている箇所が気になり始めてきた、直したい箇所もいくつかあるが、なかなかできないでいる。

英語学習の記事も時折書くことにした。

 

再読『中島らものたまらん人々』

 

「菅原センセの”ここ一番”」を読み返したらぼけとつっこみの関係があったことに今更ながら気が付いた。恍惚の菅原先生がぼけであり、パンク青年の方がつっこみ役なのである。菅原先生が父性や権威として全く機能しておらず、一貫性すら失われかけている恍惚に生きているその家に書生をしているパンク青年の方が反父性、反権威、の立場で一貫している。

 

いわば、ぼけとつっこみの立場が逆転しているようなおかしみが感じられる。

 

これがもし作中の登場人物の一人がパンク青年ではなく、笑点の大喜利の座布団運びを目指す青年だったら先生と書生の双方がぼけ役になってしまい物語が成立しなくなってしまう。

 

座布団運びを目指す青年などというものが登場したところで反父性、反権威、反キリストのいずれにもなりえない以上、たとえ相手が恍惚老人だったとしても、つっこみ役には成りえない。

 

*

 

文体を変えたら絶望的な境遇が隠せない人々ばかりが登場しているにもかかわらず、この本を読んで1度も笑わない読者はいないであろう。読者を笑わせることへのすさまじい意志を感じる。

 

この『中島らものたまらん人々』は初版が87年にサンマーク出版から刊行された。80年代にはここまで野放図な本が出版できる豊かさがあった。