日本最古・樹齢二千年と言われるエドヒガン桜。
想像も及ばない、悠久に感じられるほどの時をその場で過ごし、
毎年変わらない花を咲かせる大きな桜の木。
その連綿と続く歴史の一粒になるために、ぜひ直接この目で
花を眺めたいと思い、出かけることにしました。
山梨県北杜市にある、実相寺というお寺の「山高神代桜」を訪れます。
春の共演。
JR韮崎駅からバスに乗り、お寺まで揺られます。
実相寺の入口には、目の覚めるような鮮やかな水仙と桜の共演。
満開の春を祝い、宴を開いているような雰囲気です。
門をくぐれば、枝垂れ桜が迎えてくれます。
桜の雨。
空から太陽の光とともに降り注ぐ薄紅色の花。
見上げれば眩しくて、とても温かな気持ちになります。
立派な木でした。
実相寺の境内にはたくさんのいろいろな種類の桜の木が植わっていて
4月上旬、花が満開になると広い空でさえも埋め尽くされます。
本堂でお参りをしたあとは、春の訪れを満喫します。
鐘の音。
鐘楼から響く鐘の音も、どこかこの春を喜んでいるようです。
境内には、桜だけでなく、水仙をはじめ
春の花が色とりどりに咲き誇っています。
一方で、遠景の山脈にはまだ雪が頂に残り、
冬から春への変わり目に立ち会ったような気分になります。
見上げれば。
ピンク色の薄いカーテンが、光に透かされて
ふわふわと揺れているように見えました。
一筋。
鳥が去り、飛行機雲が流星のようにまっすぐと
桜の木々に落ちてくる。
こんな空の風景にも桜はよく映えますね。
それにしても山梨は飛行機の通り道なのでしょうか・・・
この日も飛行機雲をたくさん見つけました。
以前来たときもたくさん見ました。
この真っ直ぐなライン、大好きです。
大きな桜の木は上だけでなく、手の届くところにも枝を伸ばしてくれていて
そっと手を触れると、枝の先が小さく揺れました。
風が吹くと、花がさわさわと音を立てるのがまたいじらしいです。
花毬のような。
こんな景色を眺めながら、境内の奥へ進むと
目的の「山高神代桜」があります。
生きていくということ。
すごい存在感。たくさんの支柱に支えられながら、
なおどっしりとそこに構えている姿はこの木の誇りを感じます。
生きるというのは、桜でもひとでも変わらない、こういうことなんだ
という力強さを感じました。
二千年という時が、どういう感覚のモノなのか
自分も含めて、人間は永遠に知ることができない。
この神代桜に話を聞いてみたいですが、それも叶わないので、
彼の今の立ち姿から感じ取るしかないです。
一度も生を休むことなく、毎年こうして花を咲かせて
たくさんの人を幸せにしてきたのだと思うと、感嘆の息しか出ないですね。
まっすぐに。
下から見上げて、手を伸ばしても届きはしませんが、
重ねることはできます。
時が過ぎて、できなくなることもあるし、変わるものもあるけれど、
それでも今を一番美しく生きるという、この桜の姿は目に焼き付きます。
日本三大桜のひとつにも数えられるこの桜の姿は
美しさ・華やかさだけではなく、もっと根本的な、根に深い部分に
訴えかけてくるような強さがありました。
お寺から外に出ても、桜並木がしばらく続き
近くには地元の素材を使った屋台のお店なども出ていて
花を眺めながら食事も楽しめます。
ここで桜の写真を撮りながら気づいたことがひとつ。
星の海。
光に透けて、花弁が真っ白になると、
花の中心の濃い紅色の部分がまるで星のように浮き上がります。
実際に星の形なので、たくさんの星が浮かんでいるように見えて
とても面白いなぁと。
手の届く星です。
生命が溢れだすこの季節に、神代桜の力強さから
自分もまた生きる気力をもらいました。
淡い色合いに浸されて、身体も軽くなりますね。
素晴らしかったです、実相寺。
このあと、同じく山梨県北杜市の桜の名所である
「わに塚」の桜を見に移動します。
こちらはまたがらりと雰囲気が変わって、儚さのある桜です。
それはまた次回に。
*その2・わに塚の桜はこちら
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