山梨のはるのうたげ、その2です。
*その1~山高神代桜~はこちら 。
実相寺で樹齢二千年の桜の木を見上げ、
木から発せられる生きる力を全身で感じたあと、
向かいの果樹園に寄り道しました。
桜のピンクとはまた違い、こちらは真っ白です。
雪ふり。
山麓に降り積もる雪のように満開です。
何の花だろうと思い、あとで調べたところ、
梨の花みたいです。
なるほど、さすがフルーツ王国やまなし。
食べるだけでなく、四季を通してこういう楽しみもあるんですね。
梨の花はあまり意識して見たことなかったので、新鮮でした。
雪の結晶みたいです。
シューティング・スター。
流星のように過ぎ去る飛行機雲。
やっぱり山梨は通り道なんでしょうかね、よく見る。
梨の木は樹氷のように真っ白です。
きっともう少ししたらみずみずしい梨の実が
たくさん成るんでしょう。
さて、バスに乗り込んで、韮崎駅方面を目指します。
途中下車したところに、次の桜の木があります。
それが、「わに塚のさくら」です。
独り。
まだ芽吹きをじっと待っている一面の畑の中に、小高い丘があって
そこに一本だけじっと立ちつくしている、絵のような桜です。
まだ色のない景色の中に、そこだけパッと淡い紅色を差す
その姿に、目を奪われます。
神代桜が力強さなら、こちらは一瞬の儚さや美しさ。
球面。
枝ぶりがとてもよく、まあるくこんもりと花を咲かせるエドヒガンザクラ。
丘にのぼると、盆地を取り囲む山々が青く空に溶け込む姿が見えます。
それも、この桜が一緒に、優しく温かく見守っているような。
はるのいろ。
桜のふもとには、その咲きぶりに応えるように、祝福するように、
スミレやタンポポなどの春の花が咲いていました。
桜を透かして、遠くの山が墨を流したように薄く広がります。
里に春がやってきた、その景色を目の当たりにしているようです。
花と鉄塔。
この桜に寄り添うように立つのは鋼の塔だけです。
どちらも空に向かって何かを祈るような、訴えるような、
そんな雰囲気があります。
それにしても空が広い。
六線譜。
そしてどこまでも青いです。
桜も青く染まりそう。
午後は日の光の向きが山のうしろ側に来るので、桜は影になります。
午前中は花に光が当たってとても綺麗に撮れるそうですよ。
さて、「わに塚」とはまたかわいらしい名前ですが、
ヤマトタケルノミコトの子供である、王子武田王のお墓であると言われ
漢字では「王仁塚」と書くそうです。
昔、この土地を治めた人が眠る場所だったんですね。
(諸説あるようですが)
その上に、何百年と咲き続ける一本の桜の木。
そう考えると、彼の魂が桜に姿を変えて
今でもこの地を見守っているかのようにも見えます。
悠久の時を。
たったこの一本、これだけの場所です。
でも、その一本が孤独に、ただひたすら地面と垂直に立つ姿には
美しさそのものが体現されているように感じました。
うまく言葉にできませんが、この桜の木を見上げていると
強さと儚さ、春の喜びと独りの寂しさ、いろいろな感情が押し寄せます。
ただひとことでいえば、そういう体感もひっくるめて
とても素晴らしいです。
これからも、何年も何十年も何百年も、また時を重ねてつないで、
この土地の山や人とともに、在り続けてほしいなぁと思う木です。