日本政府と欧州連合(EU)は燃料電池車や医療・介護ロボットなど5分野で、規格や規制を統一する方針だ。
燃料タンクなど部品の基準をそろえ、両市場で共通製品を販売できるようにする。量産でコストを下げやすくなり、消費者からみても燃料電池車や介護ロボットの販売価格が下がる効果が期待できる。
日欧は2日、ブリュッセルで専門家会合を開き
(1)燃料電池車
(2)医療・介護ロボット
(3)化学物質の管理
(4)鉱物の登録制度
(5)個人情報の取り扱い
などの5分野で規格や規制を統一する方針を確認した。5分野はいずれも企業から規格統一の要望があり、来年春までに具体案をつくる。
規格の国際標準化(総合2面きょうのことば)も日欧共同で進め、米国やアジア市場にも広げたい考えだ。
燃料電池車の規格では、重要部品である水素燃料を入れるタンクの形や素材の基準を統一する。安全試験の手続きも一本化する方向だ。
燃料電池車はトヨタ自動車(7203)が今年度中に市販を始めるなど国内勢が先行する。市場は国内が2020年に3500億円規模、欧州も3千億円以上に伸びるとされる。
日本勢は国内向けに製造した燃料電池車の規格を大幅に変えずに欧州でも販売でき、市場開拓に弾みがつく。市販開始時は700万円程度する見通しだが、規格統一でコストが下がれば価格も下がって普及が進む可能性がある。
医療や介護に使うロボットの規格もそろえる。ロボットは利用方法を誤れば転倒するなどして利用者のけがにつながるリスクもある。
安全に使える性能や素材などの基準を決め、安全試験の手法も統一する。国際規格として日欧が共同で米国やアジア各国に導入を提案する。
筑波大学発ベンチャーのサイバーダインが医療用ロボットを開発するなど同分野は日本に強みがある。
▼規格の国際標準化とは 製品の素材や形、性能、安全性・丈夫さには、それぞれの国ごとに独自の決まり(規格)がある。例えば日本では「電気用品安全法」が洗濯機やエアコンなどの家電製品、「ガス事業法」がガスストーブやガスコンロなど、「高圧ガス保安法」が石油コンビナートのガスタンクなどの規格を定めている。
近年はこうした規格を国際的に同じものにしようとする動きが活発になっている。日本は昨年、ベトナムやインドネシアなど東南アジア5カ国と共同で、家電製品の国際規格を提案した。日本製の冷蔵庫が東南アジアでも売れやすくする狙いがある。特に再生可能エネルギーや3D印刷機、バイオ関連技術など、これから成長が見込める分野での国際規格づくりが急ピッチで進んでいる。
国際規格づくりは国際標準化機構(ISO)や国際電気標準会議(IEC)などで議論する。各国は自国に有利な国際規格をつくろうと、水面下での交渉や票の囲い込みに力を入れる。
一方で日本が規格をほかの国と同じものにそろえると、海外製品が市場に大量に流入して日本企業の売り上げが減る可能性もある。安全規制の緩い他国の製品を使えばケガなどのリスクが増すため、重大な消費者事故を避けるためにも規格づくりを主導することが重要になる。