セブン&アイ・ホールディングス(3382)が大手食品・飲料メーカーと連携したプライベートブランド商品や専用商品に力を入れている。清涼飲料最大手のコカ・コーラグループが初めてセブン―イレブン・ジャパン専用の「コカ・コーラ」を発売。
コンビニエンスストアで全国に約1万7千の店舗網とブランド力を持つセブンの影響力が高まり、売れる商品づくりへ小売店とメーカーの構図も変わりつつある。
セブンイレブンはコンビニ専用の新商品「コカ・コーラ レモン」(500ミリリットル、151円)を発売した。コーラにレモンの風味を加えて爽やかな味わいを持たせたのが特徴で、全国の店舗で3カ月程度販売する。コカ・コーラを特定の小売店向けに供給するのは世界的にも極めてまれ。限定販売をアピールして集客増につなげる狙いだ。
強まる求心力
コカ・コーラにとって小売業界での最大の取引先はセブン&アイ。セブンは数年前から限定商品を提案していたが、「企業の根幹となるメガブランドだけに、なかなか首を縦に振ってくれなかった」(セブン)。コカ・コーラが今回一歩踏み込んだ背景には、単なる販路として以上のセブンの存在感がある。
コカ・コーラと競合するサントリーホールディングスはコーヒー「ボス」で1月にセブンとの共同開発商品を投入。4月にはセブンのPB「セブンゴールド」で高級ビールを売り出した。
店頭での存在感を高め、清涼飲料ではシェア競争でコカ・コーラを猛追する。2012年のコカ・コーラの販売シェアは日経推定で28.1%、サントリーは21.8%で00年に約15ポイントあった差は6ポイント強まで縮まった。
こうした状況に「コカ・コーラが焦りを募らせ、関係を強化するため専用商品を受け入れた」という業界の声もある。
既にセブンのPBではキリンビバレッジが紅茶、伊藤園が緑茶飲料を手掛けており、今後コカ・コーラがPBコーラを供給する可能性もゼロではない。
加工食品でもセブンと大手メーカーの取り組みが拡大。日清食品(2897)とはセブンゴールドで「日清名店仕込みシリーズ」を展開し、江崎グリコ(2206)は主力菓子「ポッキー」で共同開発商品を手掛けた。
取引先のブランド力を取り込むことで品質などをうまく訴求するのがセブン流。メーカーにとっても「プライド」を守りつつ、コンビニの棚という魅力的な販路を広げられる利点が大きい。
1日約1700万人が訪れるセブンイレブンの集客力はメーカーの商品開発にも影響を与える。
キリンビールは12年にセブンとビール「グランドキリン」を開発。高級感のある瓶や、発酵中にホップを漬け込んで複雑な香味を引き出す新製法を採用し、初年度から販売目標を大きく上回った。
こうした知見は今年6月にギフト限定で発売した高級ビール「一番搾りプレミアム」にも活用。キリンの磯崎功典社長は「セブンとの共同開発が商品施策で大きな財産になった」と話す。
「ウィンウィン」に見える商品面の連携拡大だが、セブン、メーカーともに課題はある。
依存にはリスク
セブン&アイのPB「セブンプレミアム」の13年度の売上高は6700億円。14年度は8000億円を目指し、利益率の高いPBの開発に今後も力を入れていく。
現在、セブンイレブンの売上高の6割(たばこ・雑誌を除く)が同社でしか売っていない独自商品が占め、15年度末には7割まで引き上げる計画だ。
自社でしか扱わない商品をそろえすぎると、例えばテレビCMが流れている商品が置いていないケースもあり得る。
売り場が狭いコンビニには3000品目程度しか置けず、品ぞろえのバランスが崩れると、集客強化策が逆に客足を遠ざけてしまう可能性もある。
コンビニの店頭は商品の入れ替えが激しく、メーカーに対し常にセブンが売り上げを担保してくれるわけではない。
サッポロビールは12年秋にセブンのPB商品としてビール「100%MALT(モルト)」を投入したが、販売量が伸びず2年たたずに販売を終了した。過度な「セブン依存」はメーカーにとって「もろ刃の剣」となる可能性もはらむ。