政府は地域で複数の病院が連携して役割を分担しやすくする仕組みを2015年にも導入する。グループを束ねる持ち株会社のような法人を新設し、大学病院や公立、民間の各病院、介護施設などが傘下に入る。
地域内で高度医療から介護まで提供できるようにする。資金調達や仕入れをグループでまとめて運営を効率化し、医療費の伸びを抑える狙いもある。
新たな法人制度は、政府が6月の閣議決定を目指す成長戦略に盛り込む。年内に具体的な制度案をまとめ、医療法改正案を15年の通常国会に提出したい考えだ。
厚生労働省によると、病院は全国に8565(12年10月時点)あり、人口あたりの数は米国の約3倍、ドイツの約2倍だ。日本は病院の約7割が200ベッド未満と中小病院が多い。
これまでは高報酬を請求できる症状の重い急性期の患者を受け入れようと病院間で看護師を奪い合ってきた。
めったに使わない高額な医療機器を近接する病院がそろって購入するなど非効率が目立った。都道府県単位でグループ化すれば病院は薬や医療機器などをまとめて仕入れることができ、コストが下がる。
このため、持ち株会社の役割を果たす「非営利ホールディングカンパニー(仮称)」を新設。グループの経営方針を決め、経営企画や財務、人事などの組織・人員を集約する。
医療法人や、特養ホームを持つ社会福祉法人を傘下に置き、医療・介護関連の企業へ出資もできるようにする。
複数の病院が同グループに入り、急性期の病院、症状の安定した回復期の病院などと機能を分ければ、個々の病院が提供する医療サービスの質は高まる。
急性期病院に入院した患者が安定すれば、グループ内の回復期病院を紹介できる。患者は必要な医療や介護を手がける病院や施設を地域内で選びやすくなる。
新たな法人制度を活用した病院連携は、地域に医師を供給する大学病院を核としたグループ化がモデルになりそうだ。
例えば中国地方で国立大学付属の広島大学病院が同じ地域の県立病院などと統合を目指したり、岡山大学が病院連携に力を入れたりしている。
大学中心の病院のグループ化は米国が先行している。新たな治療や薬の臨床試験といった医療産業の発展に役立つ可能性もある。
現在、医療法人が合併するにはそれぞれの医療法人が株主総会にあたる「社員総会」で原則、議決権を持つ全ての社員の同意を得なければならない。一人ひとりの医師などが議決権を平等に持っており、同意を得るのは難しい。
新型法人では個人ではなくグループ内の病院が規模に応じて議決権を持つ見通し。大規模病院が主導権を握ることができ、民間、公立を問わず病院再編の機運が高まる可能性がある。