老年夫婦の離婚に際し扶養的要素を主にして財産分与額を算定した事例
東京高等裁判所昭和63年6月7日判決・判例時報1281号96頁は、老年夫婦の離婚にさいし扶養的要素を主にして財産分与額を算定した事例です。
判決文では、「第一審原告(注、妻)は現在七五歳であり、離婚によって婚姻費用の分担分の支払を受けることもなくなり、相続権も失う反面、これから一〇年はあると推定される老後を、生活の不安に晒されながら生きることになりかねず、右期間に相当する生活費、特に《証拠略》によると、昭和六一年当時で厚生年金からの収入のみを考察しても第一審被告太郎(注、夫)の負担すべき婚姻費用分担額は一〇万円をやや下回る金額に達することが認められるところ、その扶的要素や相続権を失うことを考慮すると、第一審被告太郎としては、その名義の不動産等はないが、前認定の収入、資産の状況等からして、第一審原告に対し、財産分与として金一二○○万円を支払うべきである。」と判示されています。
しかし、この裁判例は、年金分割の制度がなかった時代の裁判例です。
したがって、この裁判例には、あまり参考にはならないと思われる。