この記事は私が音大でやっている授業内容の1部分を
学生の予習、復習の目的でこちらのページに記載しています。


How to improvise とはどんなクラスか?

アドリブをどうやってやるのか?
又はアドリブがどうやったら上手くなるのか?
という疑問に答える?というよりも、

アドリブには
こんな考え方が…
こんな練習方が…

「有るよ」

といったようなアドリブに関する情報の「カタログ」
というイメージで授業計画を作りました。


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今回は始めに、

"3 Elements of phrases"
フレーズの3つの要素

からお話しします。

アドリブ・フレーズという料理を作るための材料です。

この場合のアドリブ・フレーズとは、
1940年代に隆盛を極めた、
ビバップという音楽の中に見られるフレーズです。
ビバップのフレーズはどうやって作られているか?
といった内容です。

ちなみに・・・

ジャズのアドリブとは、
「リズムとハーモニーを訓練した奏者が、それらを利用して、即興で作る楽曲」
という様な定義が出来ますが、
リズムを排して音使いだけで見た場合、
3つの時代的特徴が見られると思います。

チャーリー・パーカー以前(デキシー、スイング)
チャーリー・パーカーの時代(ビバップ、ハードバップ)
ポスト・チャーリー・パーカー(コンテンポラリージャズ)
と、いうように。

ビックリマークチャーリーパーカー以前のアドリブスタイル(デキシー、スイング時代=1920~1930)は、
コードトーン中心で「ピコピコ」した感じのアドリブが中心だった


ビックリマークチャーリーパーカーの頃のアドリブスタイル(ビバップ、ハードバップ時代=1940~1950)は
コードトーンとアプローチノートとスケールという
3つの要素を使ってメロディラインを組み立てていた・・・
「クネクネ」という要素が加わって今のジャズソロの原型が整った。


ビックリマークそして、システムの時代のアドリブスタイル(コンテンポラリージャズ=1960~現在)は、
コードトーンとアプローチノートとスケール、
そしてハイブリッドという新たな理論、
「不思議な」メロディ要素が加わって、現在のジャズスタイルになっている。

これは僕の個人的見解なので悪しからず・・・


そしてこれからお話しするのは、
ジャズフレージングの基礎=ビバップ時代の、
「コードトーン」と「アプローチノート」と「スケール」の3つの要素を、
それぞれ「分けて」練習すると良いよ!
というお話です。


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まずはコードトーンを使ったアドリブの仕方!
Chord Tone Soloing
です。


コードトーンとは
コードを構成する音達です。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

トライアドは3声の和音で次の4種類を使います。

1.3.5(Major)
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1.b3.5(minor)
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1.3.#5(Augmented)
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1.b3.b5(Diminished)
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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

7thコードは4声の和音で次の5種類を使います。

1.3.5.M7(Major7)
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1.3.5.b7(Dominant7)
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1.b3.5.b7(minor7)
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1.b3.b5.b7(minor7b5)
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1.b3.b5.bb7(Diminished)
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上記の
トライアド(4種類)
7thコード(5種類)
を覚えればジャズに出てくる、だいたいのコード進行に対応できます。


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「コードトーンソロイング」と言うのは、
コードのサウンドを和音ではなくシングルノートで、
「メロディ」として使用する、
アドリブの為のテクニック、又はそれの練習法というふうに定義します。

アドリブと言うのは自由に音を選別し、
それによってメロディを創作して、
リズムと言う「流れに」次から次へと乗っけてく・・・
それが、楽しい!
というものなのですが、

この「コードトーンソロイング」という練習法は、
「使う音を限定する」といった手法です。

すなわち、アドリブから「音の選別の自由」を奪うのですね。
これによって演奏者の技術の次の2点を鍛える事になります。

1.自分の楽器の中にあるコードの「位置」を覚える。
2.リズムの創作に集中して練習する事が出来る(しなくてはならない)

という2点です。

使う音を限定してそれ以外の要素(リズム)を自由に創作する、
これはアドリブの訓練には有効な手段と言えます。

非常にシンプルな練習法ですが、多くの事を学べると思います。


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それでは実際の例を見てください。


初歩の初歩は、
ルートだけで良いんです。

ルートのみ!
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このルートのみの練習は後々、
アプローチノートテクニックを連取するときに、
大変有用な練習です。

そして音を増やしていくのです。

トライアド(1、3、5)
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7thコード(1、3、5、7)
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上の例を見て解る事は、メロディを作る為には、
どんな音を使用するかではなく、どんなリズムで演奏するか、
という事がいかに重要か?
コード・トーンを使うだけでは魅力的なメロディーにはなりません。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

コード・トーン・ソロイングを練習するにあたって大切な事は

・コード・トーンを自分の楽器を使って覚える
・コード進行に沿ってインテンポで演奏できる事を目標に置く
・リズミッックなアイデアを使うよう心がける
・頭でコントロールする
・先読みの癖つける・・・
(次ぎにくるコードを想定し今のいる位置からスムーズにつなぐ事を心がけ、
そしてそれを習慣化するように訓練する)

など、練習するときに以上のような事を心がけると良いでしょう。


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リズミックなアイデアを得る為に既成の曲のリズムをモチーフにするのも良いでしょう。

たとえば

ビリーズバウンスをモチーフに・・・
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コンファーメーションをモチーフに・・・
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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ビリーズバウンスとコンファーメーションは
両方ともチャーリー・パーカーの曲です。


チャーリー・パーカー
(Charles Parker Jr, 、1920年8月29日 - 1955年3月12日)は、
ジャズのアルトサックス奏者。

彼はジャズのレジェンドで、天才サックス奏者ですが、
僕は彼の「作曲家」としての才能に今も圧倒され続けています。

作曲家チャーリーパーカーについてはこちらを参照してください。



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彼の曲をリズムのモチーフの例に使ったのには理由があります。

それは・・・

パーカーのメロディにはジャズの(ビバップの)
2代要素であるハーモニーとリズムが入ってるからです。
単旋律にも関わらずドラムとピアノが両方聞こえてきます。

これはジャズの歴史上極めて重要な事で、
チャーリーパーカーが持っていた、
特殊な「リズム感」と「ハーモニー感覚」が、
その後の「音楽を替えた!」といっても過言では無いと、
思うのです。


彼が活躍する以前の1930年代、スイングジャズと言われていた時代、
メロディは単純な繰り返し(リフと言われていた)の曲が多く、
コード進行とのシンクロ度合いもそんなに多く在りませんでした。

メロディはメロディ、伴奏は伴奏と言う風に・・・

そしてメロディの中にアクセントが少なく、メロディの間の手のような感じで
リズムセクションやブラスセクションが裏にアクセントを入れる、
といった分業になっていたのです。


1920年代のBix Beiderbecke
の頃のアドリブはベーシックな分散和音と装飾音(コブシ)が主な要素でした。
リズムものんびり、というか今思うと分かりやすい2ビートが中心です。




1930年代のBenny Goodman
の頃になるとリズムのスピード感もさることながら、
コード・トーンをもろ利用した大変華やかなメロディラインが目立ちます。




スイングの頃のミュージシャン達は大変テクニシャンが多く、
早いパッセージがアドリブにでてくる「速弾き」の元祖?
見たいな音楽ですね・・・?


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そういったスイング・ジャズをビバップに発展させていったのが、
チャーリーパーカーを中心としたビバップ世代のミュージシャン達。

単旋律のホーンのメロディの中にビートとアクセントとコード進行を、
同時に表現して行く手法を創造して行きました。
その、リズム&ハーモニーの一体型ジャズ・ムーブメントが
後にBe-Bopと言われるスタイルの元になって行った・・・

これは本当に革命的で、バンドの中の全員がリズムの表現者になって、
一丸となってそれを操る!!
強力なリズムの洪水ですね。

そして、彼らは
より複雑なハーモニー、
より複雑なリズムを
高度なテクニックで、
コントロールする術を身につけて行った。

それまでは踊りの伴奏だったジャズが、そのリズムとハーモニーを
理解しないと踊れない、聞けない、楽しめない!!

なんて、芸術的なんでしょう!(;^_^A

パーカーはタップダンスが大好きで、街角で踊ってる
タップダンサーのビリーを見てビリーズ・バウンスを思いついた、
と、なんかで読んだことがあります。

とまあ、かなりうんちくになってしまいましたが、
ビバップの要素であるハーモニーとリズムの融合の話は次回に続く・・・




これを作った人は暇なのかな?(失礼)