ナイチンゲール(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

ナイチンゲール(ネタバレ)

※今回の記事は、先週の金曜日に更新した「異端の鳥」との“ハードな暴力映画繋がり”としてなんとなくアップしてみましたが、心底どうでもいい文章がダラダラと垂れ流されているので、そういうのが苦手な人は読まない方が良いです。

 

 

 

 

<この映画を観るまでの経緯>

 

すみません、映画の内容とはあまり関係ないんですが、このブログは僕の備忘録を兼ねているので、本作を観るまでの経緯を書き残しておきますよ。「ナイチンゲール」と聞くと、小学生の頃に「ナイチンゲールは男と女、どっち?(`∀´)」「“ナイチン”だから、女だ!m9・∀・) チンコナシ!」なんてやり取りを聞いた程度の印象しかなくて。ハッキリ言って、そんなタイトルの映画にあまり興味はなかったんですけど、今年の3月下旬、映画仲間のスターリング・エレファントさんほか複数の方にオススメされましてね。まぁ、いろいろな方に映画を勧められることは多々あって、さすがに僕もすべてを観る時間はないワケですが(汗)、ちょうど僕の娘のマナ子(仮名/9歳)が漫画で描かれたフローレンス・ナイチンゲールの自伝にハマッて、将来の夢が「お花屋さん」から「看護師」に変わったのもあって、なんとなく「観ておこうかな」気分になったのです。

 

娘が愛読しているのは「ナイチンゲール 愛に生きたクリミアの天使」ございます。

 

もうね、幼い頃から動物とか癒しまくってましたよ (´∀`) アラアラ

 

ただ、4月頭、コロナ禍のせいで映画館が一時休館状態になったため、観る機会を逸しましてね …。そうなると、余計に気になってくるのが人間心理の不思議なところ。「あのポスターのビジュアルからすると、クリミア戦争を相当ハードに描いているのだろうな」「戦場で女性たちが看護師として活動する中、性暴力事件とかもあったのかもしれん」なんて勝手な予想は膨らむ一方であり、劇場が営業を再開した6月、いそいそと公式サイトをチェックしてみれば、近場で上映しているのは「あつぎのえいがかんkiki」「アップリンク吉祥寺」しかなかったというね。所詮、僕は“普通に働く初老のオッサン”でしかなく、映画鑑賞とブログはあくまで趣味であり、もちろん仕事や家庭が最優先。そうすると6月下旬は、厚木まで行く時間が作れないため、吉祥寺で観たい…。つーか、厚木まで行くのは自宅から2時間近くかかるものの、吉祥寺は超近い街だから、そりゃあスムースに吉祥寺で観たかったんですが、しかし。ちくしょう、アップリンクは6月半ばにパワハラ問題が発覚したばかりだったんですよね… (´・ω・`) ウーン

 

6月頃、公式サイトに載っていたスケジュールでございます。

 

アップリンクのパワハラ問題については、こちらの記事を参照のこと。

 

正直、こういう問題を第三者があーだこーだ言うのもどうかとは思うんですが(当事者同士の問題ではあるし)、とはいえ、告発を受けてのアップリンク側の対応に真摯さを感じなかったので、とりあえず僕はこの問題が終わるまではアップリンク系列の映画館には足を運ばないことにいたしました。となると、本作を観るためには、片道約2000円&2時間40分かけて宇都宮まで行かなければならなくなったワケで。それはそれでかなりキツいものの、ちくしょう、「従業員にパワハラをして現在もその問題が解決されていない劇場」にはお金を落としたくないという気持ちの方が強いので、仕方ない、宇都宮で観よう…と思っていたんですけれども。ふと公式サイトをチェックしたら、なんと新しい上映館が追加されていたじゃ、あ〜りませんか!(チャーリー浜の口調を真似ながらーー)
 
ああん、下高井戸シネマが増えていたのです!ヽ(TДT)ノ ウワァァァン!
 
下高井戸シネマは、昨年、「記者たち 衝撃と畏怖の真実」を観るために初めて訪れた、いわゆる“二番館”的な劇場でして。あそこなら自宅から1時間以内だし、交通費も安く済むし、さらにさらにさらにさらに火曜日の割引サービスを利用すれば1100円で観られるのだから、なんていい気持ち、まるでアルデンテ。「そんなに遠くないのだから、今後はもっと贔屓の劇場にしよう (´∀`) ソウシヨウ」なんて偉そうなことを思いながら、9月15日(火)、いそいそと足を運んだのでした(その後、渋谷に移動して「ポルトガル、夏の終わり」を観た)。
 
火曜日なら1100円で観られるのさ… (`∀´) ククク...

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイチンゲール

 


原題:The Nightingale
2018/オーストラリア、カナダ、アメリカ 上映時間136分

監督・脚本:ジェニファー・ケント

製作:クリスティーナ・セイトン、ブルーナ・パパンドレア、スティーブン・ハッテンスキー、ジェニファー・ケント

製作総指揮:ブレンダ・ギルバート、ジェイソン・クロス、アンディ・ポラック、アーロン・L・ギルバート、ベン・ブラウニング、アリソン・コーエン

撮影:ラデック・ラドチュック

美術:アレックス・ホームズ

衣装:マーゴット・ウィルソン

編集:サイモン・ンジョー

音楽:ジェド・カーゼル

出演:アシュリン・フランシオーシ、サム・クラフリン、バイカリ・ガナンバル、デイモン・ヘリマン、ハリー・グリーンウッド、マイケル・シーズビー、ユエン・レスリー、チャーリー・ショットウェル

パンフレット:★★★(600円/値段が安い割に、プロダクションノートやキャストインタビューなど、読み応えアリ)

(あらすじ)
19世紀のオーストラリア・タスマニア地方。盗みを働いたことから囚人となったアイルランド人のクレア(アシュリン・フランシオーシ)は、一帯を支配するイギリス軍将校ホーキンス(サム・クラフリン)に囲われ、刑期を終えても釈放されることなく、拘束されていた。そのことに不満を抱いたクレアの夫エイデン(マイケル・シーズビー)にホーキンスは逆上し、仲間たちとともにクレアをレイプし、さらに彼女の目の前でエイデンと子どもを殺害してしまう。愛する者と尊厳を奪ったホーキンスへの復讐のため、クレアは先住民アボリジニのビリー(バイカリ・ガナンバル)に道案内を依頼し、将校らを追跡する旅に出る。(以上、映画.comより)


予告編はこんな感じ↓

 

 


90点

 

超ヘビーだけど良い映画でしたねぇ… (´・ω・`) シンミリ

 

 

観客は36人ぐらいだったと思います、たぶん。

 

 

まず、書いておきたいのは、本作は“クリミアの天使”と呼ばれたフローレンス・ナイチンゲールの話ではないということーー。映画の序盤、劇中で主人公の女性クレアが「ナイチンゲール=歌う鳥」的な風に扱われるので、すぐそのことに気付きましたよ。だから、それ故にもう一つ、分かりました。竹内まりやさん「真夜中のナイチンゲール」“クリミアの天使”と呼ばれたフローレンス・ナイチンゲールの歌ではないということーー。いや、今まではなんとなく「良い歌だなー」と思いつつも、歌詞をちゃんと把握してなかったし、病院を舞台にしたドラマの主題歌だったし…。まさか初めて聴いてから20年後にやっと知っただなんて、アタシってほんとバカ (ノω・、) グスン 要は「モンゴル帝国の基盤を築いた男の話かと思ったら羊肉を用いた焼肉料理のことだった」みたいな誤解をしていたワケですが(苦笑)、もし同じようなカン違いをしていた人の“気付き”になったのなら、このブログも何らかの価値はあったのでしょうな…って、いい加減、映画の話を書きます、すみません。

 

 

ナイチンゲール(サヨナキドリ)って、こんな感じの鳥みたいですな (´∀`=) カワイー

 

 

ということで聴いてください、竹内まりやさん「真夜中のナイチンゲール」(ラジオパーソナリティ風の口調にドヤ顔を添えてーー)

 

 

 

一応、本作のあらすじを雑に書いておくと、舞台は19世紀のオーストラリア・タスマニア地方。窃盗罪で流刑囚となったクレアは、刑期を終えたにもかかわらず自由の身になれず、生殺与奪を握るイギリス軍将校ホーキンスにレイプされたりと散々な日々を送ってましてね。ある日、夫エイデンが抗議したせいで、逆上したホーキンス&部下たちに襲撃されると、強姦された上に夫と赤子を目の前で殺されてしまうのです。直後、ホーキンスたちは出世のために北部のローンセストンに旅立ったので、何とか生き残ったクレアは道案内のためにアボリジナルのビリーを雇って復讐の旅に出発!(※最近は「アボリジニ」は差別的として「アボリジナル」という表現が主流になっているとか) 最初は差別感情全開でビリーに接するものの、次第にお互いを理解していく…というバディ&ロードムービー展開ですよ。で、いろいろあって部下の一人は殺害するも、人を殺すことへの罪悪感と虚しさを悟ったクレアは、軍人たちが集まる酒場でホーキンスに凌辱された事実と歌をぶつけることで復讐を諦めるんですが、ビリーはクズ野郎どもを放置できずにアボリジナルの武装をして単身襲撃! ホーキンスたちを殺害して逃走するも、自らも撃たれて負傷したビリーは、クレアと一緒に海から昇る太陽を眺めるのでしたーー (´・ω・`(´・ω・`し シンミリ

 

 

この二人、最初は対立しながらも、最終的には親友(というか戦友)のようになるのです。

 

 

いや〜、超キツかったですよ…(しみじみ)。もうね、サム・クラフリンが演じる本作の悪役ホーキンスが“父権社会が生んだサディズムの権化”みたいな男でして。序盤のレイプシーンや、夫と赤子が殺される展開だけでも十分ハードなのに、ホーキンスったらたまたま出会ったアボリジナルの母親も犯す&殺すわ、部下の扱いは酷いわ、自分を慕う道案内の男の子も殺すわ…。女性やアボリジナルはもちろんのこと、“自分より下だと思った人間”は容赦なくその尊厳や生命を踏みにじるので、「酷いにも程がある!Σ(゚д゚;)」とドン引きしました(ただ、単に父権社会をサディスティックに描くだけでなく、ホーキンスの部下のルースがいくら虐げられても犬のように従い続けるように、そのシステムの中で生きざるを得ない男の悲哀も描いていた印象。まぁ、ルースもクズ野郎なんですけどね)。人体が派手に損壊したりとか、直接的なゴア描写が連発されたりはしないものの、暴力シーンの演出が半端なく生々しいので、ハッキリ言って、暴力的な映画が苦手な人には間違いなくオススメできない作品だと思います(監督がインタビューで「暴力を受け、過去にトラウマになった女性は、今作を見るべきではないかもしれません」と語っているほど)。

 

 

ホーキンス、若干漂う小物感も含めて最悪でした。サム・クラフリン、良い仕事でしたな。

 

ホーキンスの所業を観た時の気持ちを代弁する愚地独歩を貼っておきますね(「範馬刃牙」第33巻より)。

 

ルース役のデイモン・ヘリマン、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」チャールズ・マンソンを演じてた人でビックリ。


 

もうね、当時のオーストラリアの背景を知ると、酷さが倍。一応、アボリジナルに対する「ブラック・ウォー」の悲惨さについてはいろいろと読んだことがありましたけど(人類史に残る大量虐殺ですよね)、そもそもイギリスの流刑地だったことについては、あまり深く考えたことがなかったんですよ。パンフによると、タスマニアは植民地の中でも強姦犯や殺人犯が送られる“生き地獄”と知られる場所にもかかわらず、本作の主人公であるクレアのように、女性の犯罪者は軽犯罪でも送られたそうでして。で、その理由は「性別のバランスをとるため」でしかなく、それでも流刑地には男性が女性の8倍いたというのだから、彼女たちにとってタスマニアがどれほどの地獄だったのか、想像に難くないというか。本作で描かれたアボリジナルや女性に対する所業の数々が実際におこなわれていたことは本当に恐ろしいし、こんな“自国の負の歴史”を堂々と撮ったジェニファー・ケント監督はスゴい人だと感心いたしました(ちゃんと専門家に監修してもらって、当時のアボリジナルの文化や言語を再現した姿勢も素晴らしい…というパンフ情報)。

 

ただ、本作は暴力一辺倒で救いがない話かというと、そうでもないんですよ。当初、クレアは道案内のために雇ったアボリジナルのビリーを思いっきり差別しているんですが、一緒に困難を乗り越えるうちに心が通っていくくだりはとても感動的でした(近作で例えると「グリーンブック」のような「ベタな展開」ではありますけど、とはいえ、実際に人間関係なんてそんな感じなのだからノー問題)。差別の度合いでいえばアボリジナルの方が「人間狩り」といった筆舌に尽くしがたいほど悲惨な目に遭っているワケですが、アイルランド人&女性&囚人という属性でモノ扱いされているクレアもなかなかハードな状況なワケで。そんな痛みを知る者同士が互いを思いやるようになっていく姿には、やはり胸を打たれざるを得ない。本作で描かれる暴力が残酷であるからこそ、過酷な状況で支え合う2人の人間性がスゲー美しく見えるんですよね…。同じ人間だということにようやく気付いて、「ボーイ」というアボリジナルへの蔑称でしか呼ばなかったクレアが「ビリー」と名前で呼ぶようになる展開はグッときたし、クレアにとって「ナイチンゲール」は屈辱だったのに、ビリーは歌が得意な自分を「クロウタドリ」と誇っていたのも対比的で面白かったです。

 

 

クロウタドリは、こんな感じの鳥なんですって (´∀`=) カワイー

 

 

あと、基本的に僕は「復讐をしても何もならないかもしれないけど、とりあえず気分はスッキリするのでは?」派ではありますが、クレアが途中で復讐をやめる展開は非常に考えさせられましたよ。もし自分と娘が誰かに殺されたとしても、残された奥さんに復讐してもらうよりは、彼女なりに人生を豊かに生きる方に力を向けてほしい…というのは、それはそれとして。世の中、「暴力を振るえる人」「振るえない人」というのはあって、暴力なんて「振るえない」に越したことはないんですよね、当たり前ですけど(って、クレアも“命乞いをする部下”を1人殺してますがー)。結局、ビリーは復讐してしまうし、ホーキンスのようなクズはもちろん死んでしかるべきだし、それはそれで留飲が下がったものの、個人がリスクを抱えてまで相手にする必要はないのではないか。そのせいでビリーは(たぶん)死んでしまうワケだし、より大きな暴力が始まる可能性もあるワケだし…。とはいえ、人間には「尊厳を守る戦い」も大切ではあるし…。ううむ、何だか難しくて知恵熱が出てきました (ノω・、) アタマイタイ

 

 

アボリジナルの戦闘モードになったビリーはカッコ良かったけどさぁ…。難しい話ですな。

 


その他、思ったことを書いておくと、「役者さんたちは全員素晴らしかった!ヽ(`Д´)ノ」とか「映画序盤、ホーキンスたちがクレアの死をしっかり確認しなかったのは『女を舐めていた』からですかね?」とか「オーストラリアの原野、怖ぇっ!」とか「『母乳が出て痛い』なんて展開を描けるのは女性監督ならではの着眼点だと思った」とか「ホーキンスを騙して山奥に連れて行ったせいで射殺されたチャーリーおじさんが渋い!」とか「本作のクレアとビリーのように、僕らが生きる現実社会でも『虐げられている者同士が連帯すればいいのに』と思うけど、実際は『弱い者たちが夕暮れ、さらに弱い者を叩く』って感じになっちゃうんだよな…」とかとかとか。正直なところ、ごめんなさい、同じ「夫と子どもを殺された妻が復讐するムービー」なら「ライリー・ノース 復讐の女神」の方が断然好みではありますが(台無しな文章)、とはいえ、超ヘビーだけど良い映画でしたねぇ… (´・ω・`) シンミリ バイオレンスシーンはマジでキツめですが、クズは全員死んでくれるし、意外としみじみする雰囲気で終わるので、興味がある方はぜひ観てみてくださいな。

 

 

 

 

すでに配信で観られるし、ソフトも販売中なのです。

 

 

結構話題になったジェニファー・ケント監督作。観たいんですけどねー。

 

 

娘が愛読している漫画。でも看護師は本当に大変なお仕事だから、パパは心配で仕方ないのです…。

 

 

こちらも夫と子どもを殺された女性が復讐するバイオレンスムービー。僕の感想はこんな感じ。