そのきっかけになった有名な事件が過去にありました。
1964年にニューヨークで起こった「キティ・ジェノヴィーズ事件」です。女性が暴漢に襲われた時、目撃者や叫び声を耳にしたものが38人いたにもかかわらず、誰も警察に通報しませんでした。
その結果、女性は死亡してしまいました。マスコミは「都会の人は冷たい」と大きく報道し注目を集めました。
人を助ける心理について、社会心理学者のビブ・ラタネとジョン・ダーリーがある実験を行ないました。
1人の学生にニューヨークの通りで痙攣発作が起きたふりをしてもらい、その時の通行人の反応を調べました。結果は次の通りでした。
#人の数によって異なる
(1)通行人が1人だけの時
約85%の通行人が助けてくれました。
(2)通行人が5人以上いる時
助けてくれたのは約30%だけでした。
この時の心理として、「誰も助けようとしないから大丈夫だろう」「自分も同じように行動しておこう」「自分だけ目立ちたくない」「ただの酔っ払いかも」と言った意識が働き、その結果多くの人がいるのに誰も助けないということになるのです。
このように多くの人がいることで、1人1人の責任感が薄れている状態を「傍観者効果」と言います。傍観者が多いほど、この傾向は強くなるようです。
#心理集団のメカニズム
①多元的無知
他者が積極的に行動しないことによって、事態は緊急性を要しないと考える。
②責任分散
他者と同調することで責任や非難が分散されると考える 。
③評価懸念
行動を起こした時、その結果に対して周囲からのネガティブな評価を恐れる 。
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#傍観者になりそうになったら
(1)自分を見つめ直す
傍観者効果によって被害を放置してしまうリスクに気づき、まずは自分が傍観者であることをやめる。
(2)仲間と話し合う、周囲に声をかける
周りの仲間に声をかけて傍観者であることに気づかせる。気づいた人数が多くなればなるほど、傍観者効果は小さくなっていく。
(3)自分が傍観された時の立場を考える
「傍観者効果」を放置していれば自分が被害者になるリスクがあることを覚えておく。
確かに東日本大震災の時は、お互いに助け合ってはいました。
では、街中を歩いている際に誰かに何らかのトラブルがあった場合、我々は果たして「傍観者」にならないで済むのでしょうか?。
目の前で突然倒れた人がいて、心肺停止の状態だったとしたら、我々は心臓マッサージ(BLS)を行なう事ができるでしょうか?。
救急医である私としては、少なくともこれを読んでくれた方々には、BLSとAEDの講習を最寄りの消防署に問い合わせて講習を受けてほしいです。
そして「傍観者」にならないでもらいたいと思います。
また日本も、人を助けることに関する法整備を行なって欲しいものです。→善きサマリア人の法