2024/8/3(土) 21:00
今思い出してもやはり、あれは奇跡だと呼びたくなってくる。
「真夏のセレナーデ 切ない涙にサヨナラ 優しい恋の言葉 二人 包み込んだ」
筆者がこの世界に飛び込んだのは、2015年のことだ。当時はアイドルを知っていたのは地上のみであって、ライブベースで活動するアイドルたちを全く知らなかった。たまたま見ていたSHOWROOMで青SHUN学園の存在を知り、勇気を出して主催ライブへ参戦したものだ。
そこからは、チケット購入→入場→楽しむ、みたいな流れも解ったので、ひたすらいろんな対バンに行って、というのは実は専ヲタ時代でもやってしまっていたことだが、それはさておき、当時活躍してかつ現在でも残っているアイドルグループというのは、当然ながら、そう多いものではない。女性アイドルというのは男性と比べても寿命が短いのが一般的である。正直、7年も続いている=LOVEが奇跡的なぐらいだ。しかもほぼメンバーの増減も無い。
話を戻せば、そんな当時、まだ地下アイドルやライブアイドル、いや、ライブアイドルという言葉すら無かった時代か、をあまり知らなかった頃、何度かライブを観ていたアイドルの中に、アキシブprojectも含まれている。当時はLIVE PLANETの中でも核を為すアイドルグループの一つであり、続けてDREAMING MONSTERが界隈の勢いや存在感強く、現場を手堅く創り上げてくる。それに対してアキシブは若年層のファンが多く、参戦する度に活気に圧倒されたのを昨日のように思い出す。
改めてWikipediaを見てみたが、New Worldで何度も熱くコールしたゆえちは2019年で卒業していたとは、驚いてしまうものだ。彼女に限らずとも、中堅あるいは人気メンバーの卒業というのは動員面に限らず、現場の活気という点でも強く影響を及ぼすものであり、特にコロナ以降か、それなりに強い対バンに昔の馴染みだからか良い出番時間にアキシブが出演しながらも、現場活気は到底昔と比べられたものじゃない、振りコピや地蔵観賞などに割り切って向き合うしかないと思っていた。
気付かぬうちにヒロインズへ加入し、女性が現場の中心を為す界隈、正直、観賞眺める系の位置付けでも問題無いのではと思っていた。筆者としても今回の参戦、どう転ぶかは一縷、良い化学反応があるんじゃないか程度で、期待は一切していなかった。まあ楽曲知っているし、今どういう子たちがアキシブを形成してライブを創っているのか知る程度でいいか、といった気持ちだった。
上記の通り、良い意味で予想を裏切られ、そして、苦しい時代もあったアイドルグループだ、現在籍で最も古参でも2022年なので、筆者としては、アイドル当人よりも運営側に、本当に長く頑張ってきてよかったね、と、励ましと感謝の言葉を伝えたくなってくる。ヒロインズ加入含め、刷新しているだろうし、昔から携わっている運営だってゼロな可能性だってある。それでも、信じていたい。アキシブprojectというアイドルグループの可能性を信じて、運営として長く携わっていた者が、たった一人でもいい、存在していてほしい。運営こそが一番に、グループを愛すべき存在だからこそだ。
とはいえ、アキシブ出演までは有利な並び順だったかというと、正直微妙だ。ヒロインズに所属しているグループは今回、アキシブを除けばパラディークとchuLaだけであり、間には、なんキニ、のらくら、AOAOといった感じで、グループ単一で固定動員を多く獲得するアイドルや、結成されたのは最近ながらも経験者在籍により全体としては同様に動員が多くなるアイドル、このいずれかであって、ヒロインズ一択で戦えなかったあたり、挑戦的と言えるだろう。
筆者は今回、女性専用エリアの横にあった、微妙なスペースで終始立ち回った。他のエリアはあまりにも地蔵が多く、無駄に密集しており、到底長居できたものじゃなかった。女性エリア脇が人が少なかった理由は2つ考えられ、一つはそもそも広くなくDUOという会場の関係上、柱があってステージ全体が見えないことだ。そしてもう一つが、いくら多様性の時代と言えど、女性エリア横で猛るように声援を飛ばすのは躊躇われるだろう。そんなわけで普通であれば回避するスペースなのだが、幾多と現場を経験し、かつライブの本質を楽曲や現場に求める筆者なので、自分がどの程度声援を飛ばせるか、とか、振りコピをできるか、というのはあくまで二の次であった。
そんな場所だからこそ解ったことだが、出演した7組、すべて女性の動員が普通に多かった。まあ無難に考えれば、パラディークやなんキニ、のらりくらりが多くてあとは過疎、なのだが、実際は全くそうではなく、メンバー一人一人がしっかり推されている、というのが非常に印象的であった。いくら多様性の時代と言えど、依然として女性動員というのは女性アイドル対バンでは限定的であり、サコフェスなどは解り易い例だが現場の治安という問題もまだ完全に払拭されたわけではない。だからこそ、如何に女性がライブへ足を運んで、パフォーマンスや現場を楽しんでもらって、また来たいと思わせられるかが肝心であって、女性中心の現場を聖域と称する筆者としては、そんな意識もまた頭の片隅に入れて臨んだものであった。ただ改めて、そんなファンの方々の振る舞いを視界の隅で視認して感じた限りとしては、やっぱり、ライブを楽しみたいとちゃんと思ってくれているのが、本当に有難いことだ。もちろん物販がメインではあるが、ライブ音楽に興味関心を抱いて応援してくれている、向き合ってくれている、というのが、必ずや、応援されているアイドル側としても嬉しいことに違いない。どんなに当人が音楽が好き、ライブが好きだと思っていても、応援する者の存在や関心に影響されるものだし、その如何によって寿命というのもまた決まってくるものだ。グループの歴史の長短関係無く、アイドル個々人を確かに愛し、向き合っている。改めてそう想いを馳せれば、本当に有難いことだし、その奇跡にもまた、涙が出てしまいそうだ。一日でも長く、続いてほしい。
今回の対バンでは、7組中5組が終演後物販、かつ再入場禁止だったので、物販回収のためには最後まで残る必要があった。そのため、トリであるアキシブ出番時点では確かに人は多かったが、この日はTIFも開催されていたので、物販回収待つ時間も惜しい、と、ライブ終わるや否や会場を出てお台場へ向かう者というのは、そう少なくなかった。と考えてみれば、今回は奇跡的に、適度に混んで沸けたトリだったのかもしれない。それにしても、TIFと同時に開催されている対バンにも関わらずあの動員量、この視点でもやはり、ライブアイドル界全体ではなく、特定のアイドルを推して、という愛し方がスタンダードになってくれて、かつ、それで世界がしっかり回るほどに、動員レベルでのファン人口というのは十二分に増え、良い循環というのが生まれているに違いない。
多少アキシブに偏った内容だったので、対バン全体の情報をもっと記しておくと、出番順に、①OLNew、②パラディーク、③なんキニ!、④のらりくらり、⑤chuLa、⑥AOAO、⑦アキシブproject、という並びであった。ざっくり所感を記すとしたら、①実力面でも動員面でも大箱対バン出演は早かった印象、②③グループコンセプトに沿って良い塩梅の現場の温度感、④TIFで活気盛んな者が少なかったのでヒロインズサマーフェスと比べて平和なのが良かった女子動員優遇された対バンにもっと積極的に出演して良い、⑤個人知名度が低いので楽曲でどうにか救われた感じパフォーマンスはもっと攻めて良い、⑥演者だけでなく運営までもが嫉妬しそうな完璧なプロデュース、⑦圧倒的な熱量を帯びた現場そしてパフォーマンスの成長も重なり涙、といった感じだ。
で、終わらせるのも勿体なく感じるアイドルについては、以下に追記しよう。
②こちらものらくら同様に、女子動員優遇された対バンにもっと積極的に出ても良いが、正直、絞るぐらいのレベルでいい。アイドル経験の有無関係無く、個人ベースで皆、アイドルとしての魅せ方が上手いし、もっと追求したくなるような余地も残している。なので、他のヒロインズアイドルに本推しはいるけど、よく対バン出てくれるし2推し3推し枠を狙える可能性、これは十分にあると考える。
③新メンバーの成長が、この短いスパンでの参戦でも感じられた。表情がとても明るくなり、パフォーマンスの一つ一つに自信が増しているような所感だ。今の時代、ライブアイドルとして就いてくれる者のレベルは一層と上がり、加えて、なんキニオーディションを受けて選ばれる者なので、個人的には既に古参メンバー同等に戦える魅力を有していると考える。ただそれでも、長くなんキニを務めてきた先輩メンバーの支持は強い。卒業後の新たななんキニが楽しみである。
④キャッチーなダンスが多いので、声援を無しにしても全然楽しめるライブだと思う。これはコロナ禍などでの感染対策とかではなく、声援飛ばす者が皆無と化した場合でもライブや現場が成立し得るか、という話である。個々人のルックスも良く、ヒロインズアイドルのような女子力バチバチ強ルックスとかいう方向性ではなく、等身大に親近感の持てる内側から滲み出る可愛さというのが、グループ名も込みで、のらりくらりというアイドルグループにしかできない魅せ方だと思っている。ただ現状としては、ヒロインズサマーフェスなど野外ライブに出ればSECURITYが中央で監視して静止に務める状況なので、一層とUtaGe!と分けて戦略設計するのもアリだと思っている。
⑥chuLaでそれなりに沸けて、かつ終演後物販待ちやアキシブ出番待ちなどでフロアはかなり人が増えて、振りコピするのも難しい状況だった。そんな中、コロナ禍などで鍛えた、ライブ観賞及び分析な立ち回りに転換したところ、次から次へと魅力が見つかってきた。ピンク担当の白咲ひとみはビヨーンズの西田汐里を彷彿とさせるような表情管理および圧倒的な歌唱力。重要なパートを務めることが多かったが、注意深く聴いてもどこもピッチも声量も感情も、全部質良く仕上げてくる。本当に驚いた。このレベルの人財がライブアイドルとして獲得できていることは、確かな財産である。そして赤担当の楠えむはAKBの佐藤綺星を彷彿とさせる超アイドルだった。かといって偶像カワイイで終わらせずに某Aメロでの低音歌唱もしっかりこなしていた。セトリの最後の楽曲では、落ちをこの2名で構成してきたことには、驚きと納得が織り交ざった感情で満たされた。上記人財面に限らず、歌割りや楽曲テイスト、どの要素で抽出しても確かに素晴らしいアイドルグループである。AOAO、生のライブパフォーマンスというのを、ライブアイドルを務める者よりかは、運営を務める者に一度は観てほしいと、強く思えるほどに、良く完成されたアイドルグループである。
さて最後に、真夏のセレナーデの落ちで、どのような感情で涙するに至ったか、書き忘れてしまいそうだったので、備忘録も兼ねて書き残しておこう。楽曲が始まった時点で、落ちでの聴き惚れてしまう歌唱を思い出していた。しかし務めた者は既に壇上から去ってしまった。別に旧体制と全く同じクオリティで無くて全然良い。ただそれでも、ちゃんと歌として、楽曲の落ちとして成立するだけの歌唱力であってほしい、そう願って、他パートでの加勢立ち回りとは変え、聴くことに専念した。
落ち。本記事冒頭に記した歌詞の前半部分が聴こえてきた。確かに今の体制、かつヒロインズという位置付けからすれば甘めな歌声でも全然成立する。いいじゃないか。肝心は後半だ。そして筆者の耳に入ってきたのは、熱気、そして愛溢れる、猛るような声援であった。
あの箇所で声援が飛ばされるというのは、旧体制ではまず無かったし、歌声を尊重するというよりかは、沸き重視しがちな筆者からすれば、声援を飛ばさなくても良い休憩ポイントな印象であった。しかし本現場、いや、今日のアキシブ現場と呼ぶべきだろう、そんな既成概念を覆し、少しでも多く、そして強く、愛を叫ぶ。筆者としては、その方が好きだ。ライブというのは、わかりやすく愛を伝えられる場とも考えている。筆者の抱く現場の信念、そこにまた一つ、本現場が近付いたのかと、あの一瞬、耳に入った声援で、そう直感的に抱き、涙してしまった。俯き肩を震わせるほどに。
何度も書くが、アキシブ現場はもう、昔ほどの熱気を得るのは無理だとずっと思っていた。それでもまあ成立するプロデュース設計にはなっているとも思う。ただその一方で、やっぱり懐かしんでしまい、声援と共に楽曲よ在れ、という想いは棄て切れなかった。抱く理想というのは、一人で実現させるには非現実的であり、かといって大衆に何らか働きかけるのも違うと思う。
諦めかけていた現場に、再び炎が宿った。現場に熱く生きる者としては、これ以上の幸せは無い。(5400字)
日時:2024/8/3(土)、11時~13時50分
会場:渋谷DUO
タイトル:サマーセッション
出演組数:7組
MVP:アキシブproject