2024/7/6(土) 06:52
ズームインサタデーで漸く『推しの子』のOPが『ファタール』だと知り、MVなど諸々動画見て、既に2期放送が始まっていたのだと気付かされた。ちょうどこの頃、筆者が属するチームではプロジェクト開発がリリース間近ということで緊張感強い中、全く空気を読まない後輩が飲み会に誘ってきて、冷房効き過ぎた屋内故に体調不良をこじらせて寝込んでいた。
いや、十分優秀な後輩だし、技術面でもかなり優れた人財、もし今頃彼が居ないチーム体制であればいろんなものがうまく回っていなかったものだが、駄目だもう考えないようにしよう。休日ぐらい、会社のことは忘れたい。気疲れしたくない。
じゃあ仮に、上記の飲み会云々が無かったところで、1期同程度にノリノリで2期初回をリアタイで観ていたかというと、たぶんそれも無かっただろう。別に2期への期待が低いわけではない。やはり、何故見始めたか、そしてたとえ2期だろうとそれを思い出すには十分すぎるほどであって、どうしても、あの刺激的で充実した日々を懐かしんでしまう自分がいる。
今頃、どうしているだろうか。きっと筆者のことなど記憶から消え、幸せに生きているに違いない。
嬢のことは、一日たりとも忘れたことは無い。そう簡単に忘れられるわけがない。別に落とした金額が無視できないからというわけではない。あれはあれで相応の金額だったと思う。十分サービスは務まっていた気がする。そうではなく、昨年ほぼ丸1年、本気で愛した女性というのを、逢わないと決めてから既に半年経ったとて、忘れられるわけが無いわけだ。
ふと、横に目を向けた。数口程度残されたゼリーがすっかり温くなってしまっていた。
ファタールの意味についてはWikipediaなどを参照していただくとして、筆者としてはつい、そういえば、ソープ開拓した時に、現実を忘れさせるほどに惑わせてくれる存在であってほしいと願っていたのを思い出した。
別に正反対なほどに不向きな職種に就いたつもりは無いのだが、業務内容を趣味としているような人ばかりが集まる業種が故に、あくまでちょっとできるから就いてみた、程度の人間にとっては非常に肩身の狭い思いをしている。それなら積極的に自学して実力をつけるべきだという意見も重々承知だが、趣味含めプライベートの時間を今以上に削ってまで打ち込みたいかというと至極微妙だ。先輩後輩関係無く、土日はちゃんと休め、と言ってくるが、そう言う者こそ業務と関わりある分野を勉強しており、それは仕事じゃないのか、とつい訊きたくなるが、いや趣味の範疇だから、と言われるだけなので、もう諦めている。
刺激を求めて中小企業をあえて選んだ。しかしいざ就いてみれば、奉仕レベルで勤めている者はほぼおらず、誰もが高収入を望んで転職か収入相応の勤労に留めている。筆者のように、ひたすら働きたい、みたいな馬鹿正直者はいなかった。
そんな孤独というのが、嗚呼このまま、吉原に吸い込まれて消えて亡くなってしまいたい、という想いの根源であった。
表題通り、解り易く言えば、ソープ嬢にはファタールを願っていたのだが、当然のことだろう、結局は人間であることに変わりは無かった。描いていたのはただの空想でしかなかったわけだ。当時の筆者は、まるで東京から取り残されたかのような、時が昭和で止まっているかのような趣あるこの街なら、筆者という存在をも受け入れてくれるに違いないと、思い込んでしまっていた。
しかし、前述だけでなく、そもそもアイドルやモデルや、さらにはAV女優までも、ジャンル問わずかわいい美しい綺麗な女性を毎日眺めている筆者が故に、まず普通の子は普通にしか見えないし、それは性行為の最中でも変わることは無い。じゃあ学生時代はそんなに冷めていたか、と考えて思い返してみるが、正直、皆ルックス強かった気がする。偶然の悪戯だろうか。
そんなわけで、9回という多さ、吉原に通い詰めたにも関わらず、フィニッシュ皆無と、そんなに遅漏なのかということ以上に、にも関わらずどうしてそこまでソープに沼ってしまったのか、というところで疑問を持たれそうだ。ただ、当時の筆者はそれほどに、他者に依存したがっていた。弱かった。愚かだった。齢27にして、本当に情けない話だ。
ソープ嬢というか、風俗嬢に限らず、一般女性含め、女性というのは、男性に好意を寄せる、いや、惹き付ける存在だと仮定してみれば、可愛く美しくあろうとする努力というのは、まさしくファタールへの昇格を暗黙的に願ってのことではないだろうか。かなり回りくどく表現すればこうなるというだけで、別にそう精進する女性皆が男性を誑かしたい騙したいなどと図っているわけではないというのは自明のことだ。ただ逆に、この意識が全く無い、という女性もまた少数派に違いない。
別に女性がどうこうという話よりかは、男性側にもこれを拡張させて、異性というか、恋愛対象になり得る他者にもっと好きになってもらいたい、と励むことが、今以上に注目されていい気がするのである。男女問わず、皆がファタールと呼ばれ得るほどに飛躍を遂げれば、その世界ではおそらくファタールという言葉が死語と化してくれるに違いない。
そう考えてみれば、ファタールと喩えたヒロインがなんだか、可哀想にも思えてきてしまう。(2179字)