今回のタイトルにはあえて、「禁止」ではなく「排除」という単語を用いた。

なぜなら、今回行う最前管理に関する議論は、そのシステムではなく、最前管理に携わる方々に焦点を当てたいためである。

 

執筆に至ったきっかけは、昨日、Twitterでこんな投稿を見掛けたためである。

「なんで最前でスマホ触るのマナー違反ってわかんないんだろう子宮からやり直した方がいい」

 

個人的には、最前管理というシステムには賛成だし、彼らの上記のような行いを咎めるなどするつもりはさらさらない。

では、どうしてそのような考えに至ったのか、の説明を一旦の目標として、以下、議論を進めていこうと思う。

 

 

 

初読者などのために、そもそも最前管理とは何なのか、について、軽く説明しておきたい。

 

たとえば、ハロプロやももクロなどのコンサートであれば、座席というのはランダムで決定される。当然、移動や交換はできない。

(一応、転売とかエリア別でのチケット種別などもあるだろうが、ここでは割愛して議論していく。)

 

しかし、ライブアイドルや地下アイドルと呼ばれる類いのアイドルであれば、ライブ活動は対バン形式であることが一般的だ。

この「対バン」というのは、複数のアイドルグループが1イベントに出演する形式のことで、15分や20分など、各グループに出番時間が与えられる。今はコロナ禍なので座席ではあるが、昔はスタンディングが一般的だったので、ファンがどこでライブを観るかは自由だ。

とはいえ、フロア後方よりも前方の方が、近くでアイドルが見れるとか一体感あるとかで、人気が強いものになっている。

特に「最前」、いわゆる一番前になると、事務所ファンや各グループファンごとに最前用のコミュニティがあって、最前を他の人に渡さないように入れ替わりで最前を管理する。これこそが「最前管理」である。

 

「最前管理」という単語は、このファン同士の一連のやり取り自体を指す場合があれば、携わっているファンを指す場合もある。

また、以上のことから、この用語が使われるのはライブアイドル界が中心である。

 

加えて、「最前管理」は、マイナスなイメージで用いられることが多い。

 

 

 

本来であれば、最前とは、各グループの専ヲタ同士が譲り合うもので、そうでない者が管理するものではなかった。しかし、若年層ファンの増加や、常に一番近くで推しを見たい、などという者が増えた結果、いつの間にか最前が管理されるようになった。

 

おそらく、これだけであれば、別に最前管理が悪者扱いされることも無かったと思う。

しかし、彼らの行いというところが、何かと問題視されることがある。

 

まず目立つのは、冒頭に挙げたアイドルの声の通り、目当て以外のアイドルでスマホをいじる者が散見されることだろう。

いくら興味無いとか、事務所的等で無縁だからといって、全くライブ観ないのはいかがなものなのか、という考えだろう。

 

ただ、じゃあ、どうすればいいのだろうか。私は、こう異を唱える者に、逆に問いたい。

ライブを観るとしても、真顔でいいのだろうか。それで本当にアイドルは幸せなのだろうか。

繕ってニコニコしていればいいのだろうか。運動だと割り切ってマサイしていればいいのだろうか。

極論、もしも、パフォーマンスを感じ取れ、と思考や精神の在り様を強いるのであれば、それこそ質の悪い人間否定だ。

 

 

 

さて、ここから筆者の主張を展開させていきたい。

 

先ほどのどう振る舞うべきか、を続ければ、おそらく、どう偽ったとしてもNGだろう。嘘の応援をアイドルが喜ぶわけがない。

となると、続いて予想される反論としては、楽しめないなら最前を離れろ、というものだろう。

 

ただ、対バンイベントのシステム上、どこにいても問題は無いわけだし、それならより前方に居たいのは当然だろう。

では、誰が最前を許されるか、となると、やはり誰よりも早く入場した者となってくる。

 

指摘者がもしファンであれば、そう思うあなたがまず、最前管理よりも早く入場して対抗するべきなのだ。

イベントのシステム上、最前管理が可能だし、最前管理を管理するフロアスタッフもいるわけではない。

そもそも、じゃあ何組最前に居たら最前管理になるのか、など測ることは不可能と言っていいだろう。

(もし1組だけに限るのだとしたら、同事務所アイドルが連続して出演する場合などでも毎回最前リセットするのか)

 

また、指摘者がアイドルであれば、遅い出番時間に出演する、もしくは対バンへの出演自体が不遇だと言わざるを得ない。

一般的には、対バンでは遅い時間の出演が人気ある証拠ではあるが、最前管理に阻害されない可能性としては逆だろう。

アイドル運営側での簡単な回避策としては、対バンではなく内輪イベント出演に軸足を切り替えることだろう。

 

 

 

ただ、どれもこれも、根本的な解決策ではないように思える。

では、なぜそもそも、最前管理、特に若者だが、アイドルに一番近い場所でありながらスマホをいじるのか、について考えてみたい。

 

たとえば、めちゃくちゃハマっているスマホゲームがあれば、他アイドルなどは観ずにスマホをいじるだろう。

または、LINEなどで連絡があれば確認して、そこからTwitterや他アプリ使用などに展開していくだろう。

 

つまりは、娯楽的や情報的なタスクがあって、その優先度が、目当てアイドル以外のライブ観賞の優先度を超えているためだ。

そこで、これを覆すためには、となると、ライブへの興味、そして関心を強める「何か」が欲しいところである。

 

それこそが、アイドル自身が、より素晴らしい、魅力あるライブパフォーマンスをすることではないだろうか。

 

 

 

最前管理は若者が中心なので、ここからは対若者と仮定して議論していきたい。

 

そもそも今の時代、アイドル音楽は、家に居ても十分楽しめる時代になった。

ライブアイドルに絞っても、ストリーミングはかなり充実しているし、YouTubeも未だ衰えを知らない。

音源を楽しみたい、だけならば、別にわざわざライブに行く必要は無い。

 

昔であれば、ライブは強い非日常性、大声を出したり動き回ったり()して、盛り上がることが可能だった。

しかし、今日では、災厄とも呼べるレベルの感染症の流行によって、声援は全面禁止になった。

そして、ホール会場でのライブ開催が中心となり、身を寄せ合って楽しむことも不可能となった。

結果、軒並み現場は崩壊し、非日常性の創製は、現場からライブそのものへと移っていった。

それこそが、ライブアイドルの質の向上、プロデュースの多様化などあって、今日のライブアイドル界となっている。

 

話を戻すと、今日ではライブに行っても沸けない時代、ではなぜ若者はライブに行くのか。

それは結局、ライブ音楽が好きだから、そしてかつアイドルが好きだから。これに尽きるのでは、と筆者は考える。

だからこそ、よりその価値を高めたい、で最前の担保、で最前管理が定着、というのはそれほど理解し難いものでもない気がする。

何度も言うが、システム上、できてしまうのだから。やってのける者が現れても、何ら不思議ではない。

 

 

 

ここで肝心なことを書くが、要は、目当て以外のアイドルへの興味関心の可能性は、ゼロだとは限らないということだ。

これこそが、昔と今での、最前管理に携わる者の考え方の変化ではないかと、筆者は考える。

 

逆に言ってしまえば、再筆ではあるが、そのアイドルが魅力的なライブをできていないことでの「無関心化」が起きているのだ。

なので、筆者個人の見解としては、一番の原因は、その瞬間、ライブを行っているアイドルのパフォーマンスである。

 

あとは、プロデュースが本当にどうしようもなくて、アイドルがどう足掻いても魅力的に映らないケースも無いことはない。

最近、筆者が対バン参戦が少ないのは、これも影響している。

もちろん、大方、ライブアイドルのライブは観たためでもあるが、ハズレを引くリスクが、新規開拓でそれほど少なくない。

なので、出演者が大半真新しい対バンでも、絶対大丈夫と信頼できるアイドルがいなければ、まず参戦はしない。

 

 

 

そもそも、今の時代の若者というのは、そこまでバカじゃない。

 

アイドルに一番近い場所で、明らかに無関心であれば、良く思われないのは容易に想像できる。

端的に言えば、嫌われてもいいと思って彼らはスマホをいじるのである。

 

と考えれば、果たして彼らの行いというのは、マナー違反、だけで片付けるべきなのかは、正直難しいところがある。

昨今は徐々に改善されてはきているが、やはり依然として、パフォーマンスの質の低いライブアイドルは数多く存在する。

ライブアイドル界というのがそれほどフィーチャーされない、知名度が上がらないというのは、足を引っ張る存在がいるからだ。

 

若いからこそ、過度に考えて繕うなどしない、その自然な振る舞いこそが、まさしく「評価的行動」だと考えるべきではないだろうか。

この結果、ライブアイドルが精査されて、世界が変わっていく。筆者としては、そんな可能性にも期待したいところだ。

 

 

 

余談ではあるが、最前というか、前方に価値がある、というのは、システム側でも安定して取り入れるようになった。

 

どういうことかというと、前方エリア、の旨でチケット種別を2種類設ける対バンが、今日では一般的になっている。

これは別に、最前管理の撲滅、が一番の目的ではないだろう。もちろん、ある程度軽減はするだろうが。

 

むしろ、イベント運営側としては、最前管理がいれば、安定して高いチケ種で買ってくれる「御得意様」と感じているかもしれない。

なお、一応、通常エリアでの最前管理、も可能ではあるが、ステージからの距離が遠いことが多いので、そんなに頻発はしない所感。

 

気付けば、コロナで明らかに経営不振になるはずなのに、劇的なライブアイドル界縮小には至っていない。

よくよく考えてみれば、この前方エリアチケットの種別追加、がかなり大きな効果になっているのかもしれない。

となると、ある意味、最前管理とは前方エリアの価値というのを示してくれた存在として、感謝すべきなのかもしれない。

 

 

 

最後に、今回の議論の発端となった、アイドルについて、紹介しておきたい。

 

水琴りつ。グループ名は『rosé collage』、所属はLIVE PLANET。

所属はフォローからは辿れないけど、LIVE PLANETの公式垢のプロフ欄に書いてある。

 

Googleカレンダー確認してみたけど、それほど場数多くないし、情報も少ない。

グループ垢も確認してみたけど、やっぱりライブ全然してない。月10本ぐらい。

 

コロナ禍とはいえ、ライブアイドルであれば月20本程度はライブしてるし、それぐらいしないと知名度は定着しない。

一応事務所が古参なので、それで事務所ファンが流れてはあるだろうけど、対外部ファン認知はかなり厳しいはず。

ちなみに、筆者も本アイドルのライブは観たことが無い。グループ名自体もTwitterでたまに見る程度。

 

最前管理をマナー違反だと主張するぐらいなら、別にアイドルじゃなくてもこの子は生きていける気がする。

グループ知名度の割にTwitterフォロワー多いし、インスタでも人気あるぐらいなので。

むしろ、アイドルじゃなくてインフルエンサー特化でビジネスやった方が、儲かるし幸せだと思う。

 

 

 

なので、ただ純粋に「バズりたかったから」。その程度のツイートな気がしてならない。

 

そう考えれば、むしろ、ライブアイドル界そのものを嘗められたような気がしてならない。

筆者としては、正面から向き合って真面目に議論していきたいので、今回の記事を仕上げられたのはよかったけど、やっぱり「二の次」程度でアイドルをやっているような者は、あまり応援する気にはなれない。

 

念のため書いていくが、筆者個人としては、今後も最前管理の方々には頑張っていただきたい。

冷たい態度をとられたとしても、嘘偽りなく、そして純粋に、ライブ音楽に情緒を解する人間として。(4831字)