そこに当然あるべき物が、あるべき場所に存在しない状態とは、果たしていかがなものか・・・・・。
わかりやすくいえば、きつねうどんの油揚げがそこに無い・・・・・。これは単なる、かけうどんだ。
天ぷらそばの天ぷらがなぜかそこに無い・・・・・。これも単なる、かけそばだ。
俺は、具の無い、スープと麺だけで成り立っているかけうどん、かけそばに対し、なぜか男の哀愁を感じる。
この自由で飽食の時代、あらゆる食材があふれているにもかかわらず・・・・あえて何も具をのせないとは・・・・・。
戦場の男たちが、一番シンプルで安いメニューでつかのまの空腹を満たす・・・・。
俺はそこにストイック的な何かを感じずにはいられない。
その日、俺はスーパーマーケットで、おびただしい種類のカップラーメンの陳列を目の前にして、真剣な表情でまたもや仁王立ちしていた。俺が仁王立ちすれば、何かが起きる前触れなのか・・・・・。
ひと昔前であれば、メーカーも味の種類もそれほど多くは無かったので、商品を選ぶパターンは、必然的に決まっていたと記憶している。
しかしながら、昨今の即席カップラーメン市場の成長ぶりには目を見張るものがあるといえよう。もちろんカップラーメンの食べすぎは塩分の取り過ぎなど、身体にいい影響を及ぼさない事は明白である。
普段は健康面を考慮してなるべくカップラーメンには手を出さない派の俺ではあるが、この時ばかりはチョイと都合が違った。無性にカップラーメンが食べたいと、朝から身体が禁断症状を発していたのだ。
本当は1週間前からその欲望はちらちらと顔をのぞかせていたのだが・・・・・この1週間、ひたすら心を鬼にして
鋼鉄のパンツを穿き、ひたすらカップラーメンを我慢していたのである。しかし我慢にも限界というものがある。
金額にしてわずかワンコインで、満たされる欲情ならば、自らの手でそれを満たしてやるべきであろう。
そういうわけで、俺は暴発寸前の欲望をひっさげて、今宵のお相手の品定めをしていたわけだ。
はっきりいってこの時の俺は、誰でもよかった・・・・・。いや、どの商品でもよかったのだが・・・・・。
しかし最終的には、淡白にさらっとあっさりと責めるべきか・・・・濃厚にからみつくようなマッタリと責めるべきなのか・・・・・。
魅力的なパッケージの群れの中で選択に苦悩する俺のハートを最終的に射止めた商品があった・・・・・。
その名はというと・・・・・特製元祖ネギらーめん・・・・・・とパッケージにある。
なんと、普段は脇役であるはずのネギにスポットライトを浴びせ堂々とメインに押し出しているのだ。
ちなみに俺は大のネギ好きである。昔、何かの雑誌に、ネギを多めに食べ続けていたらいつのまにかオトコのあっちのパワーがアップし続けたという記事を読んでからというもの、いつしか無意識にネギを多めに摂取する男となってしまったわけだが・・・・・。今となってはそのネギの効能にとても感謝している・・・・・というのは半分冗談としても・・・・・とにかくネギを愛してやまない俺なのだ・・・・・。
もちろんカップ麺のネギなのだから、当然乾燥ネギだが、量的に自信があるに違いない・・・・・。なんといっても、元祖ネギらーめんという威風堂々な商品名であるからにして・・・・・ネギとしての効能の発揮も期待できる魅力あふれた商品に違いない・・・・・。俺はそう確信し、特製元祖ネギらーめんを今夜の相手に選んだのだ。
俺はネギらーめんを愛おしく抱きしめながら、自分の部屋に足早に戻った・・・・・。やかんをコンロにかけ湯が沸くのを待ちながら・・・・・この一週間我慢したかいがあったなという興奮を抑えきれぬまま、元祖ネギらーめんの着ているセロファンのタイトなパッケージをゆっくり、ゆっくりじらすかの様に丁寧に脱がせていった。残るはあと一枚・・・・・。慎重にフタを半分まで開いていくと、粉末スープの袋が恥ずかし気に顔を出した・・・・・。そしてさらに今回の主人公であるネギ様の入った袋が大胆にも登場かと思いきや・・・・・ネ、ネ、ネ、ネギの袋が・・・・・見当たらないではないか・・・・・・?????
んん・・・なるほど・・・・・そういうことか・・・・・麺の底にわざわざ隠しているんだな・・・・・この恥ずかしがりやが・・・・・隠しているほうが、想像が掻き立てられて余計に俺が燃えるってことを知っているかのような演出だ・・・・・。この元祖ネギらーめん、素人ではないな・・・・・隠す美学というもののプロセスを見事に体現しているつもりだな・・・・・・。
俺は、容器の中で横たわる麺を指先で優しくそっとつまみ持ち上げた。何回も何回も熱い視線で確認したが・・・・・。
・・・・・・しかし、そこにもネギ様は姿を見せないではないか。
・・・・・・ネギが・・・・・ネギが・・・・・・ネギが・・・・・・
いねえよ・・・・・!このネギらーめんには・・・・・ネギがいねえぞおおおおお!!!!!事件だ・・・・・
俺は思わず叫んだ・・・・・・ベランダのすずめがビックリして羽ばたいた・・・・・そして次の瞬間、俺はひざから崩れ落ちた・・・・・・。
食品のパッケージには必ずといっていいほど、もし万が一、この商品に不都合がありましたら、フタ、外装フィルム、現品をお客様センター宛にご送付下さいという表記がしてあるものだ。実際、滅多にないことであろう。
今までの人生で、もちろん今回が初めての経験であったのだが。このようなケースの場合、メーカーに不良品の現品を送れば、果たして何を送り返してくれるのかな・・・・・というのが子供の時からの素朴な疑問であったのだ。
今回はこの疑問を解決するには又と無い機会かもしれない・・・・・。
俺はとりあえず火照った頭をクールダウンし、そのパッケージに記載されたお客様相談センターに早速電話をかけた。応対した担当者にネギらーめんに肝心のネギが入っていなかったことだけを告げたのでは印象が薄いかもしれない・・・・・。さらに、ネギらーめんを店頭で購入するまでのここ1週間のカップ麺禁欲生活の日々の苦悩との闘い・・・・・ネギという食材の持つ素晴らしい効能とそれにたいするネギ信者としての愛と誇り・・・・・みたいな内容を真剣な口調で約20分間にわたり電話の向こうの相手に対して演説したのである。すると、その担当者の男性は、最後には俺のネギに対する気持ちを理解してくれたようで・・・・・今回、ネギの素晴らしさに目覚めた・・・・・これからはネギをもっと研究したい・・・・・ネギを見る目が変わった・・・・・・とまで言わしめるまでに至ったのだ。それらをきちんとふまえた上で、今回のネギの未封入の件に関しては、お客様に深くお詫びするとともに、弊社からの誠意を送らせて欲しい・・・・・だからすぐに現品を送ってくれということであった・・・・・。言われるまま俺はすぐに送ったのである・・・・・・。
ネギ抜きネギらーめんが俺のもとから旅立ってから1週間がたった・・・・・。
俺は期待に胸を膨らませながら、ネギ軍団が届くのを今か今かと待っていた。あのとき電話で話した担当者の口調の感じだと、かなりの物を送って来るのかもしれない・・・・・。大量に送られて来て、この部屋がネギらーめんだらけになったら、どうしようか・・・・・。ネギらーめん用の専用棚とか買わないといけないかもしれない・・・・・まあこういうのを嬉しい誤算っていうのか・・・・・。いずれにしても何かの懸賞にでも当たった様な気分だった・・・・・。
そして、ある日。ピンポーン・・・・・宅配便です・・・・・・。
ついにやってきたか・・・・・・おお、俺はこの歴史的瞬間を待っていたんだ・・・・・・。
配達員から少し大きめで頑丈そうな割れ物注意のステッカーが貼ってある箱を受け取った・・・・・。
梱包のガムテープをゆっくりとゆっくりと、愛おしい感じでめくった・・・・・。
続いて観音開きのふたの部分を優しく開いてみた。するとクッション材が一面に敷き詰められている。
なるほど・・・・・こいつをめくれば、そこには・・・・・・そこには・・・・・・またもやクッション材が・・・・・。
通常では考えられないレベルのおびただしい量の白い光沢のあるクッション材しか俺には見えない。
・・・・・ここでも隠す美学なのか・・・・・箱の中から次々とクッション材がこぼれていく・・・・・・
それはまるで超高級クリスタルのバカラのグラスに施すかのごとくクッション材の使い方だった。
そしてようやく、箱の底から、厳重なる警護体制のもと搬送されてきた、1コのネギらーめん様がお姿を現されたのであった・・・・・。な、なに・・・・・・1コ・・・・・・なんだ・・・・・!!1コしか入ってねえよおおおおおお!!!
俺は前回にもまして、思わずひとり叫んだ・・・・・ベランダのすずめが驚いてまた羽ばたいた・・・・・。
俺はこの1週間で2回、部屋の中で叫んだことになる・・・・・。
原因はいずれも、元祖ネギらーめんということだ。
あの電話の担当者の誠意は、ネギを守り抜く気持ちが入りすぎで空回り感はあったが、確かに素晴らしいのかもしれない。
彼が少しでもネギに目覚めてくれたら、今回はそれでよしとしよう・・・・・・。
そんなことを考えながら、俺はひとり、部屋で元祖ネギらーめんをすすった。
なんだかネギのことがまた好きになった・・・・・
また、買いに行こう・・・・・・。第2回目のネギなしのネギらーめんを追い求めて・・・・・。
万が一の商品の不都合な点を追い求めて・・・・・。
ネ・・・・・ネバー
ギ・・・・・ギブアップ
それは、素晴らしい言葉だ・・・・・。不屈の精神・・・・・。
NEVER GIVE UP・・・・・で行こう・・・・・我が人生・・・・・・。
with You ・・・・・
PS.アメブロ開設1周年を迎えました。皆様のおかげです。今後とも宜しくお願いいたします。
BY ZZZ-MONKEY
終わり