岸本佐知子編訳『変愛小説集』 | ZZ・倶舎那・渋谷申博のブログ

ZZ・倶舎那・渋谷申博のブログ

渋谷申博としての本業は神社仏閣、神道・仏教に関する文を書くことです。ZZ・倶舎那は「もう一つ」のペンネームです。

変愛小説集 (講談社文庫)/講談社
¥864
Amazon.co.jp

 「恋愛」ではなく、「変愛」です。つまり、「変な恋愛の話」ばかりを集めた小説集です。いかにも岸本佐知子らしい。
 あとがきにもこうあります。

「白状してしまうと、そんなものばかり選んだのには、恋愛小説への意趣返しのような気持ちも、すこしはあったかもしれない。私が物心ついたころから、世の中は恋愛至上主義だった。歌も映画も本も恋愛をテーマにしたものであふれていた。そういう世の中に生きてきて、長いこと違和感や疎外感を味わわされてきた身としては、ひとつここで恋愛好きのみなさんが嫌がるようなものを集めてやれ、という思いがなかったとはいえない」

 しかし、一方でそうした小説は、編訳者自身が書いているいるように「ピュアでストレートな純愛小説」でもあるのです。
 とくに冒頭に載せられている木に恋する話(アリ・スミス「五月」)など、どんな話になっているのか興味津々です。
 念のために書いておきますが、私は植物に対して特別な感情をもっているわけでありません。私が「五月」に惹かれるのは、そうした異類婚の話に興味があるからです。
 シャロン・シンの『魔法使いとリリス』という作品には、魔法使いによって人間の姿にされた柳(リリス)という魅力的なキャラクターが登場します。その作品を読みながら、私はリリスにキャラ萌えしていたのですが、そんな楽しい読書経験ができるといいのですが。

魔法使いとリリス (ハヤカワ文庫FT)/早川書房
¥713
Amazon.co.jp