国際ジャーナリストのベンジャミン・フルフォード氏の「もしトランプが米大統領に復活したら」(2024年5月10日発行)という著書から

 

トランプの「打倒ディープ・ステート」の決意

 トランプの掲げるスローガン,「Make America Great AgainMAGA=偉大なアメリカを取り戻す)」「アメリカ・ファースト(アメリカ第一主義)」について,多くの日本人は誤解している。とくに,「アメリカ・ファースト」は「国粋主義」「覇権主義」「人種差別主義」と批判的に受け取られることが多いが,これらは実際のニュアンスとかなり異なる。

 最初に,「アメリカ・ファースト」という言葉が使われるようになったのは,第一次世界大戦の時期だ。「アメリカ人にとっていちばん大事なのはアメリカ国内のことであり,他国の戦争に介入している余裕はない」という考えから,国際的に中立であることを表明するための言葉だった。そしてトランプの言う「アメリカ・ファースト」も,それとほぼ同じ意味なのだ。

 第二次世界大戦以降のアメリカは,世界の覇者を目指して様々なプロジェクトを展開してきた。だがその半面,アメリカの国力は衰退し,アメリカ国内のインフラはほったらかしになり,アメリカの国民は貧しくなってしまった。だから世界の覇者を目指すようなことはもうやめて,「アメリカに豊かさを取り戻す」ことを優先しようというのが,「アメリカ・ファースト」に込められた真意である。

 トランプが「防衛費を相応に負担しないNATO加盟国は守らない」とたびたび発言しているのも,「NATOを見捨てる」と言いたいわけではない。大統領時代には,EUを「敵」とまで言ったこともあるが,本音のところでは「資金や軍備の面でアメリカばかりに負担がかかる現状を保つのは,経済的にもう無理」と,アメリカの窮状を訴えているのだ。

 大統領になる前のトランプは,この「アメリカ・ファースト」さえ実行していけば,アメリカは豊かさを取り戻せると考えていた。しかし,いざ大統領になってみると,想像をはるかに超えてアメリカを取り巻く状況が最悪なことを知る。

 ここでトランプは,諸悪の根源であるディープ・ステートの打倒へと舵を切った。

 これまでの世界はロックフェラーやロスチャイルドらディープ・ステートの思惑によって動かされてきた。そしてアメリカは,ディープ・ステートの目的を達成するための”手駒”として利用され続けた。米国民は何十年もの間,ディープ・ステートにだまされ,搾取されてきた。そんな絶望社会を変革しなければならない――トランプの気持ちを代弁すれば,きっとこういうことになるだろう。

 アメリカやイギリスなどのアングロサクソンは「我々は貴族と戦って,自由で平等な民主主義の社会を勝ち取った」という歴史認識を持っている。それなのに現在のアメリカや欧州は,いつの間にか超格差社会となり,まるで貴族支配そのままの状況になっている。だからそれを終わらせたい。一部の選ばれた血筋による支配はもうごめんだ,というのが,トランプとそれをバックアップするグループの行動理念になっている。

 実質的な倒産状態にあるアメリカは,もはや世界に対して命令する力も権限も持っていない。それを認めたくないアメリカの現体制=ディープ・ステートに対して,他の国々は「もう勘弁してくれ」とノーを突きつけている。GDPPPPベース)は世界全体の2割程度,人口は世界の4%にすぎないアメリカが,全世界を支配することはもう終わらせたい――。こうした意識の変革が世界中で起き始め,ハザール王国が崩壊した約1000年前に始まったディープ・ステートによる世界支配計画は,確実に終焉へ向かっている。