また、会場は笑いに包まれていた。
僕もようやく、場に馴染めつつあった。
ドシロートなら、ドシロートなりの楽しみ方をすればいいだけ。
たった一回で、全てを知ろうとするのはやめて、今日は一人一人の演技をしっかり観て帰ろうと思った。
こういう時に、僕を助けてくれるのは、渡辺みり愛。
初ライブとかで、特に推しメンも居ない人は、まず渡辺みり愛を観ていれば、間違いない。
きっと満足して帰れるハズ。
合言葉は『困った時の、渡辺みり愛』
それなち!
【 渡辺みり愛 】
この日の彼女は、噛んだりとか とちったりってのが全く無かった。
声もはっきりとして通っていたので、一番後ろの席まで、気持ちまでもが届いてきた。
セリフを言う彼女を観たかったのはもちろん、僕が最も観たかったのは、セリフが無い時。
特筆すべきは その、彼女のセリフが無い時。
セリフを待っている時の、表情や表現力が、抜群に上手かった。
彼女がその昔、子役を演じていたと知ったのは、つい最近。
そこにルーツがあり、土台がしっかりとしてるのは、確かにうなずけた。
【 井上小百合 】
チーム く の大黒柱。
居るだけで、安心する存在。
そして、その存在感が凄まじい。
彼女一人で、何人分なのだろうと思うくらいの大きさ。
観ていて安心出来るし、場を引き締めてくれていた。
演劇monster という異名は、伊達では無かった。
【 斎藤ちはる 】
一番舞台映えしていたのは彼女。
演技の一つ一つが力強く、訴える力が大きな武器。
演技だけでなく、表情の作り方や、その緩急が上手すぎるので、自然とこちらも引き込まれてしまう。
過去 プリンシパルで、、
北野日奈子 桜井玲香 白石麻衣 生田絵梨花 永島聖羅
と、そうそうたるメンバーを撃破して、役を勝ち取ったのは、僕の乃木坂46ファンとしての歴史の中でも、最大の伝説。
その後、それを超える伝説に、いまだに出会った事がない。
今でも、それは色あせる事なく、僕の心に残っている。
この日の彼女も、あの日観た感動を、いかんなく発揮し、再現してくれた。
【 桜井玲香 】
高座の出来は完璧。
実はネタとして、色々話してきましたが、しっかりと ちゃんと見届けましたよ(笑)
彼女を観ていると、観ているこちら側の期待感が高まってくる。
人を惹きつける人間味溢れる演技が、彼女の魅力。
こればかりは、練習量がどうのというレベルではない。
桜井玲香自身の、持ち味。
【 佐々木琴子 】
一番の驚き。意外性。ミステリアス。
これまで僕は、彼女の事をあまりよく知らなかった。
番組でもひな壇の後方に居て、振られない限りは、喋る姿もほとんど見た事がないままでいた。
個別握手会に行った事がなく、彼女の事を全く理解出来てない僕の印象は、『おとなしそう』 その一言。
その握手会も、特に全握のレポートが上がってきたのを読んでいると、どうやら握手会が苦手のような印象を受けるものばかりだった。
私服がダサい。握手会が苦手。
でもグループの中では、ぶっちぎりで一番の美貌!
何度だって言ってやる。
ぶっちぎりで一番の美貌!!
理由はこれ。
これを見て欲しい。
例の、東京メトロのキャンペーンポスターだ。
この時の僕の行動は、とにかく139駅もあるので、いかに早く、いかに効率よく回るかを最優先して動いていた。
撮影したら、来た電車に飛び乗る。
その繰り返し。
ただそんな『作業的』な僕の足を止めたのは、唯一このポスターだけだった。
撮り終わって振り返ったら、電車が入線してきた。
それに乗ろうと思い、何気なくこのポスターを見届けようと更に振り返ったら、後ろ髪を引くどころか、惹きつけられてしまった。
息を飲む
まさに その言葉がふさわしかった。
結局その場からなかなか離れられず、電車3本も見送って、このポスターをずっと眺めていた。
全メンバーのポスターの中でも、僕の足を止めさせたのは、このポスターだけ。
そして、スマホに2000枚を超えて保存していたポスター画像は、そのほとんどを削除したのに、この画像だけはいまだに消せないでいる。
だから、ぶっちぎりで一番の美貌!
初めから美しい、所謂お姫様キャラには、あまり興味は持たないが、例えば、私服がダサいとか、垢抜けないとか、田舎くさいとか言われてる子が、シンデレラのように生まれ変わる。
僕はそういう子に、めっぽう弱い。
ちょっと本気を出すだけで、このポテンシャル。
佐々木琴子は、いつ本気を出してくれるのだろうと、勝手にそう思い込んでいる自分がいた。
しかし、この日の彼女は、しっかりと何も分かっていない僕に、違う一面を魅せてくれた。
驚くほどはっきりとした、セリフ回し。
セリフを待つ時間も、申し分なし。
途中桜井玲香が、セリフを完全に忘れるというハプニングがあったが、彼女がしっかりとフォローしていた。
佐々木琴子は、また新しい武器や可能性を手に入れてしまった。
そんな強烈な印象を、僕にぶつけてくるような、見事な演技だった。
握手会が苦手なら、苦手のままでいい。
外見は申し分ないので、内面に関しては、本人に委ねるしかない。
でも今は、自分の得意分野や武器を磨いていけば、自ずと他も付いてくるのでは?
と思う、ドシロートであった。
つづく