高校の2年生だった。
今日はヒットを打てるかな。このまま行ったら生涯打率が3割を切ってしまう。
現役生活の終焉を迎えつつある長嶋選手を心配したものだ。
田舎に住んでた私は、ご多分に漏れず巨人ファン。だって野球放送は巨人の試合しかなかったから。
かっこよくて、楽しくて、おもしろかった長嶋選手。
そうそう、そのころ野球選手の形態模写をよくやって、とても仲間にうけていた。
長嶋選手のバッターボックスでのせわしない動き。
バットを握ったつもりになって。両手の人差し指だけはバットを握らずまっすぐにして、両手でバットをぐいぐいと絞る。
ぐいっと握ったかと思うと、右肩のあたりからバットを下におろして、円弧を描きながらまたピッチャーの方へ向けて上に持ち上げて。
またぐいぐいと絞って、右手を放して口元に持って行ってコホンと咳をする。
同じようにバットを右肩から下におろしながら、円弧を描いてピッチャーの方に向けて前の方で立てる。これを2回繰り返す。
今度は前の方に向けて立てていたバットを逆方向で下に下しながら円弧を描いて、右肩上に、普通に構えた位置に持ってきながら、同時に左足をピッチャーの方に向けて踏み出す。
これで長嶋選手の構えが出来上がり。そしてそわそわしながら、ちらちらキャッチャーの方をカンニングするように見て、そのままのポーズでピッチャーの投球を待つ。
ピッチャーが投げたのを受けて、スイングを始めるが、途中で突然バットを止めて、振ったか振らないかわからない中途半端な体勢でキャッチャーの捕球音を聞く。
これをやると、うけてうけて、皆が笑ってくれたものだ。
せっかちで、そそっかしくて、それでいて鋭い打球をかっ飛ばす長嶋選手をみんなが好きだった。
長嶋氏の逝去をうけて、一つの時代が終わったと報道したメディアもあったけど。
後年病気で半身が不自由になり、言葉も聞き取れなくなって、車椅子になった時点で、もうあの頃の長嶋選手の時代は終わってしまったんだなあと感じていた。
この度は、高齢の昔の野球人が召されていったんだなという感慨。
ありがとう長嶋選手。私が生まれた年にプロ野球選手になり、こんな自分でも野球をやってみようという気にさせてくれた人。
同じ時代に生きることができて心から感謝しています。