| その巨大な峠は、熊本と宮崎の県境にあった。
第5の故郷である宮崎ででの、30年以上前にもかかわらず、
強烈に脳裏に焼き付くその峠を自転車で越えたくて、夜に熊本を出発した。
真夜中に八代に着き、不気味さを通り越して、怖さと寂しさの真っ暗闇の中
球磨川沿いをひたすらペダルをこいで走る。
想像した程登り坂は無かったものの、人吉に着いた時、夜は明けていた。
そしていよいよここから、ループ橋そして加久籐峠のトンネルに至る
凄い登り坂が始まった。
かつて高校球児だった私は、宮崎から熊本へ遠征試合に行き、試合に負け
その帰りこの峠で当時の鬼監督が運転するマイクロバスから下ろされ、
灼熱の太陽の中、この登り坂を走らされた記憶が甦った。
若き日の追憶に後押しされながら、ひたすらループ橋を自転車で超えた。(続)