「君には人の心を見抜く力があるから」と
人間心理を主題にした 壮大な作品を書き上げるよう
プーシキンから託されたのだそうです
その点ではゴーゴリは この作品の第1部で
立派に目的を果たしたと言えそうです
トルストイの『戦争と平和』を読んでも
(長いのに!)
ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』を読んでも
(面白いのに!)
ベールイの『銀の鳩』を読んでも
(ちょっと違う世界に行っちゃってるかな
)「ロシア人というのは こういう人たち」というのが
なかなか分からないのですが
この『死せる魂』の第1部で
そういう欲求不満がイッキに解消されます
主人公のチチコフは
典型的なロシア人キャラではありません
凡庸そうな外見とか
控えめな態度で 相手の出方を見る感じが
日本のサラリーマンっぽっかったりします
「強烈なまでにロシア人」だったのは
チチコフが 訪問する領主たちで
突き抜けた個性が それぞれ楽しめますよ

病的なまでにケチな領主は
よくあるパターンですが 美学が欠けたケチであるため
却っていろいろ無駄が出るという
ワケのわからないことになってます
「妻と子供を亡くすまでは ああじゃなかったのに」
近所の人の述懐がリアルで物悲しい

あと 現代のロシア男にも多そうで心配なのが
乱暴者でホラ吹きの領主
本人以外には 意味不明の理屈をこねて
口を開くたび 他人から何か巻き上げようとする
もう善悪のハナシじゃなく パワーに圧倒されました
話のネタにはいいけど
実際こんな人に会ったら 疲れそう~

そういう強烈な面々の中では
いささか影が薄いかもしれませんが
私は テンテートニコフという領主がいちばん好き
ホネのない若様で
こんな時代に すでに引きこもりですが
まだ若いので 上記の二人のようにはならないかも
という希望が残されています
この人が想いを寄せている
隣の領地のお嬢サマもなんか魅力的です
同性愛者だと言われるゴーゴリにしては
よくこんなキャラを描けたなと思います
さほど重要キャラでないのが残念ですが
第1部は すっかり引き込まれて
さくさく読めます
これだけで ずいぶん長くなりましたので
「その2」で作品全体のまとめと
ゴーゴリの人となりなどに触れていく
(あくまでも)予定です