(現在 通し読みの段階なので
内容に厳密に正確でない部分があるかもしれませんが
ご容赦ください)
アメリカに着いて早々
ホモのカトリック神父から逃れるという災難のあと
ホテルの雑用係的な仕事にありついたフランク・マコートくん
低賃金の屈辱的な職場で どうにか生き抜いているフランクの
唯一といっていい楽しみは 映画

下宿に食べ物を持ち込んだら 怒られるし
それでなくともギリギリ生活のフランクは
いつも腹を空かせている
19歳という若い盛りなのだから 当然すぎるほどの当然
1950年代の当時から
映画館は 飲食物持ち込み禁止だったようですが
上記の理由で フランクは映画を観ながら食べようと思い
箱に入ったレモン味のメレンゲパイを
そっと持ち込みますが…
アメリカは良くも悪くも個人主義の国
いったん「これは権利だ」という考えに落ち着くと
容赦のない傾向があります
フランクの近くに座っていた観客たちも
彼がそおお~っとパイを取り出すと
いっせいにアンウェルカムな態度

私も時間の合間をぬって 映画館で映画を観るとき
食事しているヒマもないし
かといって静寂の中 私の腹の虫が響き渡っても困るので
そっと少量のチョコレートを持ち込んで
なるたけ 予告編の間に静かに食べます
一応 禁止事項には挙げられているものの
特に誰にもメーワクかけてないじゃない?
それすら注意されたら
多分 私は二度とその映画館にはいかない

そのとき上演されていたのは
フランクが前から楽しみにしていた『ハムレット』
しかし まだアメリカに来たばかりで
「腹が減った状態では 映画を楽しめない
映画を楽しむために 騒音を立てない限り
パイを食べるのは 僕の権利」
とまでは 図太くなれなかったフランク青年は
『ハムレット』に後ろ髪を引かれながらも
その場を立って トイレに行きます
トイレに入ったとき
手を洗う蛇口のあたりで 誰かがものを食べていたら
一瞬ビックリはしますが
「なんだ~ ヘンな人ぉ」と思うものの
黙ってその場を立ち去りますよね 日本人なら

立ち去りながら
「彼は余程おなかが空いていたのに違いない」とか
「何か事情があるのだろう」
などと ほぼ的確な推測をめぐらせ
いちいち騒ぎません
相手がフォークを突き立てて 襲いかかってこない限りは
フランクが夢中になってパイを食していたとき
何かのはずみで 自分の腕かどっかを切ってしまい
小スプラッター状態だったこともあると思うのだが
そのときトイレに入ってきた男性が 騒ぐこと騒ぐこと
ゆっくり話せばわかることなのに
フランクはアイルランド出身で 言葉の問題もほとんどない
しかし男性は騒ぎ続けて
どさくさの中 フランクの大事なメレンゲパイが入った箱を
踏みにじってしまう場面に言葉を失います
故意ではなかったかもしれないけど
男性はパイを踏みつぶしておいて 謝りもしない
フランクのことを完全にサイコ扱いです
映画館関係者も フランクも料金を払った客である事実は完全ムシで
「とっとと出ていってくれ」的対応

勤勉でまじめな青年が
(当時のアイルランド人が
給料を飲んでしまわないだけでも奇跡ですよ
)本人にも ややドジっ子なとこはあるものの
アメリカ社会から こんな洗礼を受ける
この場面は 読みながら本当につらいです
パイが踏みつぶされたとき
フランクのまだおぼろげな夢まで踏みつぶされた気がして
