B級映画を語れるのはそれだけ映画を愛して、映画にまみれている人が、A級に入らない映画をB級と称するものなのではないかと思う。
そりゃそうだ、映画はミーハー的に見るぐらいの人がこれはというB級映画に出会うのは相当低い確率なのだ。そんなものは、普通の人の目に触れることはない。DVDや映画館で指名できないのである。
そういう意味では、映画をそんなに見てない自分がB級映画を語るなどというのは片腹痛いわ、と笑われそうではある。もちろん、笑われて構わないのであるが、A級ではないということは初見でもわかる映画でありながらそのほかの要素で魅力的に感じてしまう映画がB級映画といえよう。
しかし、バカにしたようなイメージのあるB級映画も、Bの下にはCがあったりするのでB級が最下位ではないところがポイントである。
ある側面では非常に魅力的なのがB級というものなのであろう。
数少ない映画経験でいえば、そのB級のものとして印象的なのが、
シベリア超特急
である。これは、映画評論家であり、2008年に急逝した水野靖郎が渾身の力を入れて作ったB級大作シリーズ映画である。水野氏がかつて映画の宣伝マンだったときに日本に紹介したヒッチコックのバルカン超特急をリスペクトしてつけたその名称は、かつてマレーの虎とイギリスに恐れられた第25軍司令官山下奉文その人が欧州から帰還する際にシベリア鉄道を利用したという歴史的事実に乗っかってつくった、ミステリー?である。
急逝したことで未完であることをWikipediaなどで知ったのはつい最近のことであった。
好きなものは、フルネームで呼ぶのももどかしい。マクドナルドがマクドになるように、長いラノベタイトルが4文字程度になる(はがないとか俺妹とか俺ガイルとか)そういうものの例外ではないのはこのタイトルである。
シベ超
親しみを込めて、シベチョー、と呼ばれているのである。
しかし、これを最初に読んだのは、この作品の思い入れたっぷりの監督マイクミズノこと水野晴郎ではなく、このシリーズに見初められた、微エロだいすきみうらじゅん氏ということであった。しかし、そのシベ超の舞台化のきっかけをみうら氏が作ったと言われるほど、水野氏とみうら氏の関係性は相当怪しいものであったという。ここでいう怪しさの定義はない。
水野氏といえば、アメリカンポリスのコスプレを趣味としていたとか、いろいろな噂に事欠かない人ではあったが、映画評論家のあるべき姿とも言える様子もまさにそのとおりであったりして、期待を裏切らない漢でもあったのである。
日テレ系でやっていた金曜ロードショーの解説者としてのイメージが強く、「いやぁ、映画って本当にいいもんですね~」という名言は彼の最強イメージとなっている。その上に、アメリカンポリスとシベ超が重なってくるのである。その重奏ぶりはなんとも言えないものとして頭の片隅に鎮座する。
そんな水野氏を久々に見たのは、この記事でたまたま見つけた動画であった。
残念ながら、再現ドラマでの中島飛行機の社長は、ハナ肇であったが、中島飛行機の後身の一つである富士重工業の太田市にある工場敷地で富嶽の形を再現する際のレポーターとして活躍していた。もしかしたら、シベ超でも山下大将のように出演者でなく解説者であったほうがいいのかもしれない・・と一瞬思ったがそれはそれ。いやぁ、久しぶりに見たなぁ。若いなぁ、と思ったら動画がそもそもだいぶ前のものだったというオチである。
しかし、B29に対抗できたかもしれない大型長距離爆撃機(空中戦艦と称していた。こっちのほうがかっこいい)がニューヨークを爆撃するシーンはなかなかの圧巻である。
シベ超は、まともに見えると、Wikipediaでもあげられているように
- 走行中の列車を舞台にした映画では画面を上下動させることで走っている感覚を演出するのが常套手段だが、この映画ではそれが行われておらず、列車がベニヤ板であることがはっきり見える。
- 登場人物を紹介するために車掌が切符を切る形(車内改札)で一人一人登場人物を画面に見せる。
- 車掌が殺されているにもかかわらず、何事もなかったように列車が走り続ける。
- 俳優としての経験もないに等しく、訓練も受けていない稚拙な水野晴郎の演技。
- ラストにカメラ目線で発言される不自然な台詞。
- (第3作)出番待ちしている水野晴郎が不意にカメラに映ってしまっている(業界用語で言う「見切れている」)。水野によれば、これも自らの映画に姿を見せるのが恒例となっていたヒッチコックへのオマージュ。
これらのことを水野本人も含めた出演者が述べていたというのだから、どれだけシベ超が好きなんだ!と思えるぐらいの代物である。
B級映画をB級映画たらしめるのは、普通に見れば駄映画とも揶揄されがちな作品の隙間隙間に見える見えない光を見出す心の目があるかどうか。あるいは、思い入れが強すぎて現実が見えない態度のどちらかが必要であろう。
いずれにしても、水野氏の愛らしさは、こういうところがあってこそのものではないだろうかと思うのである。
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