ワインになる前のワイン | 生物学者ママの実験的スイス生活

生物学者ママの実験的スイス生活

スイスドイツ語圏最大の都市で、仕事と子育てに奮闘中の研究者ワーママ。人生の3分の1以上をすでにスイスで過ごし、すっかり現地に同化中。
夫ともはやチビではない息子たちとの家族4人の日々の生活を、生物学者としての視点で(独断と偏見も交えつつ)考察します。

私がもうひとつ楽しみにしている秋の味覚は、Sauserという発酵しかけのぶどうジュースだ。

スイスドイツ語読みだと、スーサー(サ行はほんのちょっとだけ濁る)、英語で話しているときには young wine と呼ぶ人もいる。

日本ではほとんど知られておらず、したがって汎用される日本語訳もないとおもうが、若ワインとか幼ワインとかいうのが妥当なところだろうか。

すでに絶版になってしまったが、もう何十年も前にスイスに暮らした氷雪学の伊藤一先生が書いた「スイス的生活術」という本にも登場し、そこでは、幼ワインと訳されていた。

 

秋に収穫したブドウをワインに仕込み、おそらく数週間から数ヶ月ほどの段階で出荷されるものだ。

まだアルコール度は低く(1.5%程度のものが多い)その分糖分はたっぷりのこっている。

見た目は泡立ったぶどうジュース、だがアルコールはそれなりに入っているので子供は飲めない。

 

赤と白があるが、赤のほうが流通は多く、スーパーでは赤しか見かけたことがない。

白は、昔住んでいた家の近くのローカルなグロッサリーと、ローザンヌ近郊のワイナリー(奥さんが日本人で毎年秋にブドウ収穫体験をさせてもらえる)でしかお目にかかったことがない。

味は共に、ぶどうジュースよりちょっと深みがある感じ。

ちょっとアルコールがはいっているのとワインより糖分が多いためかちょっと重めで、一度にそんなにたくさんは飲めない。

しかし、ブドウ好きにはたまらない、至福のぶどうジュース。

 

出回る時期は非常に限られていて、晩秋の一ヶ月くらいのみ。

レストランでもSauserを季節限定で出すところは多い。

ここで飲みそこねると、一年間会うことはできない。

日本と比べて、スイスの食べ物にはこのように季節感が感じられるものが多い。

 

まだ今年の分は出回っていないが、おそらくあと2週間もすれば再会できるはず。

今から楽しみだ。