母の日はオペラ座に | 生物学者ママの実験的スイス生活

生物学者ママの実験的スイス生活

スイスドイツ語圏最大の都市で、仕事と子育てに奮闘中の研究者ワーママ。人生の3分の1以上をすでにスイスで過ごし、すっかり現地に同化中。
夫ともはやチビではない息子たちとの家族4人の日々の生活を、生物学者としての視点で(独断と偏見も交えつつ)考察します。

日曜日は夫と一緒にチューリヒのオペラ座に出かけた。
ドビュッシーの「ペリアスとメリザンド」のプレミエ(新演出のお披露目舞台)ということで、夫がどうしても行きたいと言ったのだ。
子供達はシッターさんと一緒である。
忙しかったので、着物ではなく洋服ででかけた。

オペラ前に、オペラ座横のまあまあお気に入りのレストラン「シラー」に入った。
以前はお得な選べる3コースメニューがあったのだが、無くなってしまった。
前菜のフォアグラ3種盛りがおいしかったのに。
ここと、オペラ座を挟んで反対側のベルカントは、オペラの前に食べるのにちょうどよい。
値段も味も手頃である。
このあとオペラに行くからと言っておけば、開始時間も見計らって出してくれる。

レストランの中には母の日イベントと思われるグループがいっぱいいた。
若夫婦もしくは兄弟姉妹と、その父母とおぼしき組み合わせの、4-5人のグループである。

私もおびちゃんからはハートのフェルトの付いたカード、ぶぶちゃんからは羽根飾りを付けたペン(ともにデイケアで制作したもの)をもらった。
ただし、ぶぶちゃんの方は、自分が作ったのだから自分のものと認識していたようで、なかなか私に渡してはくれなかったが(笑)
レストランのお母さん達は花束を抱えている人が多かった。


肝心のオペラの方、新演出はちょっと普通とは違っていた。
字幕のスクリーンに、最初に「精神科医のゴローは、患者のメリザンドと恋に落ち、家に連れ帰って治療の続きを行うことにした」と出た。(ドイツ語と英語で)
その意外さ(演出の意外さと、そんな前置きをすること自体が異例なこと)にみんな一瞬びっくりしたのち、笑いが漏れた。

確かに面白い設定ではあるが、原作者のメーテルリンクが見たらどう思うかかなり微妙・・・
原作ではゴローは王子で、古典的な愛憎劇として描かれている。
煎じ詰めると、兄弟間の恋愛スキャンダルと悲劇である。
こう書くと身もフタもないが。

しかしながら、そういう設定の話にしてしまっても、無理のないホームドラマになっていた。
歌の間隙のパントマイム的な演技をうまく使って、状況をよく説明している所はかなりうまい演出だと思った。
・・・前置きがなかったらわからなかったかもしれないが。


チューリヒのオペラ座の演出は、新機軸をねらってか、はたまた予算の都合上か、現代風の設定に置き換えられていることが多い。
古典的な演出は、大道具も小道具もお金がかかるし、ひねるのが難しいのだろう。
他と比べると(ミラノとかウィーンとか)小さめの劇場なので、同じことをしても仕方ないという雰囲気だ。
古典的な演出では大舞台の迫力にはかなわない。
道具類はシンプルに、しかし意表を突いた演出が多い気がする。

たまに(私から見ると)ハズすこともあるのだが、今回はまず成功していたと思う。
少なくともオケはうまかったので、ドビュッシーの音楽が好きな人にはよいだろう。
(夫がいうには、このオペラ座のオケは現代に近い音楽ほど演奏がうまいとのこと)
nzzにも批評が載っているが、ちょっと凝りすぎた文章で私のドイツ語力では良くわからない。
まあまあ肯定的な感じだとは思うのだが。
http://www.nzz.ch/feuilleton/buehne/opernhaus-pelleas-legende-ld.18856