個人的に興味のある一条朝を舞台とした大河ドラマ「光る君へ」が終了しました。自分が生きている間は見られないであろうと思っていたので本当に嬉しかったです。普段、本や展示物でイメージしていたものが映像として見られて感慨深いものがありました。
以下、批判も交えながら主な感想を書いていきたいと思います。
俳優さんの演技は圧巻でした。さすがプロの仕事! まひろ役の方は左利きなのにこのドラマのために右利きに矯正されたと聞いて驚きました。また、三郎役の方の顔芸や、出家シーンでカツラを使わず本当に剃ったと聞き、体を張っているなと思いました。
若干不安だった実資役の方もまさかのハマリ役! ラストの方になると文字通り「朝廷の重鎮」というオーラを醸し出していて頼もしかったですね。はん〇ゃ金田さんも思ったより平安装束が似合うと思いましたし、オリキャラの乙丸夫婦やいとさんもいい味を出していました。
天皇を演じられた方々もハマリ役ばかりでしたが、もったいないことに、最終回でいきなり彰子が言及していた「皇統の分裂」がほとんど解説されていなかったため、各天皇同士の関係もよくわからず、天皇の行動の理由について、初めて平安大河を見る視聴者の方には説明不足だったかな? と思いました。
もうネット上でも語りつくされていると思いますので私が今更言及することでもないかもしれませんが、一応補足しておきます。
天皇は「父から子へ」即位していくイメージがあるかもしれませんが、この時代は「兄弟間継承」も割とありました。「光る君へ」第一話当時の天皇は円融天皇(一条天皇の父親)でしたが、円融天皇は、もともと兄冷泉天皇の第一皇子(花山天皇)が即位するまでの「つなぎ」の天皇という扱いでした。ところがドラマでは冷泉天皇の存在すら言及されていなかったため、円融天皇と花山天皇の関係について「親子」と誤解されていないかな? という懸念はありました。(本当は叔父と甥)
兄弟間で家督相続というのはお家騒動の元になりやすいもので、円融天皇も兼家の次女詮子との間に皇子(後の一条天皇)が産まれると皇位につけたくなったのでしょう、兼家はもっと分かりやすい野心家ですので、円融天皇にも花山天皇にも譲位してもらって、自分の幼い孫に即位してもらって、国政を牛耳りたくなったのだと思われます。さすがに円融天皇の食事に毒を盛ることはしなかったでしょうが、女好きで自由奔放で、しかも若い花山天皇が弘徽殿女御の死に落ち込んでいるところを好機ととらえ、出家に追い込んだのは確実でしょう。先ほども書きましたが本来は花山天皇のほうが嫡流なので、彼が長く在位して、皇子がたくさん出来れば兼家は困るわけですから。
こうして兼家の野望通り一条天皇が即位し、冷泉天皇と兼家の長女超子の間に産まれた三条天皇が皇太子となりました。兼家は天皇・皇太子の祖父となって権力を握れれば良く、皇統がどうなろうとどうでもよかったのでしょう。(そしてその考えは三郎も同じという…)
一条天皇が定子や彰子とイチャイチャしている間ずっと三条天皇は皇太子として過ごしてきて、彼には「私こそ嫡流である」というプライドがあったことでしょう。彼には兼家娘、道隆娘原子(定子の妹)が入内していましたが二人とも子供を産まず亡くなり、唯一、済時娘だけが子宝に恵まれている状態でした。もちろん、三郎も次女を入内させましたが皇女しか産まれず、三条天皇は済時娘の皇子たちに跡を継がせるために、済時娘を無茶をしてでも皇后に立てたのでしょう。もちろん、長年連れ添った済時娘に対する愛情もあったと思います。
三条天皇が体調が悪化しても三郎にいびられても、頑なに譲位を拒んだ理由をドラマの中できちんと書いてくれなかったのはもったいないと思いました。三郎次女はオッサン呼ばわりしていましたが、三条天皇役の方はイケメンなので、何が不満なのかよくわかりませんでした(苦笑)。花山天皇役の方が強烈でインパクトのあるキャラクターを演じてくださったので、せめて「花山天皇の異母弟」という説明は入れて欲しかったですね。
和泉式部の恋の相手である「宮様」も、三条天皇の同母弟たちであるという説明もあれば、もっと良かったですね。
思ったより長くなったので次回に続きます。