小説「罪の声」

塩田武士さん

2016年に発表された作品

 

昭和の未解決事件

あの”グリコ・森永事件”をモチーフにして描かれたサスペンス小説です。

 

複数の企業を脅迫した この事件では

犯人グループが 子供の声を使って

捜査を翻弄していました。

 

ある日、自宅で 不可解な手帳と古いテープ を見つけてしまった「曽根俊也」。

そのテープを聞いたとき、これは あの未解決事件で使用された音声で、その声は俊也の子供の頃の声ではないかと気付いてしまった、というところから始まる。身内の関与を疑い、亡き父親の親友・堀田に手助けしてもらいながら真相を探り始める。

俊也の視点。

 

一方、大日新聞社では年末の特別記事として、昭和の未解決事件の特集が組まれることになり、社会部キャップ・鳥居に呼び出されたのは記者の「阿久津英士」。

与えられた情報を元に取材を開始するも難航を極めるなか、思いがけないところから糸口をつかみ、やがて真相に近付いていく。

阿久津の視点。

 

2つの眼が物語を進行していきます。

 

これは小説であり”フィクション”なのですが、実際の事件の時系列と詳細を反映した構成となっており、作家の塩田さん自身が元新聞記者ということもあり、ことに至るまでの 過程 の描かれ方は克明で読み入ってしまいます。実際の事件の おぼろげな真相まで迫ったのではないかと思えるほどの筆力でした。


その一方で、ここまで突き詰めた展開だからこその 経緯の裏側 など、それらの辻褄が急に繋がってしまったりなど、ややドラマ性に欠ける部分は時折あれどもという具合で、だけど、すべてを描きだしたらもっと分厚い本になっていたでしょうし、焦点を絞るという意味では良く出来た内容で、どうなるのか知りたくて手放せない本でした。

 

企業を脅し、人の命を弄び、子供を巻き込んだ残酷な事件だったことを改めて思い知り、この小説を通して事件の内容や時系列を知り、警察の所轄問題 なわばり的な背景、人の心理とか。時代背景など。もろもろが紐解かれていき、すごいどっしり来るのに、辿り着いた真相は極めて虚しく。だけど、未来に向けた物語だった。読み終わったあとの達成感が大きい。

 

今だったら多くの防犯カメラや携帯電話などあるけど、当時は携帯は普及しておらず めちゃくちゃアナログ。まさに人と人の直接対決というか、生々しい張り詰めた空気が伝わってくる。

 

 

この本。

以前放送していた、稲垣吾郎さんのテレビ番組「ゴロウデラックス」で2017年に紹介されていて、当時購入していたのですが、約7年間ほったらかしにしていました(;^ω^)(ゴロウデラックス復活希望お願い

 

せっかくの機会なのでと自宅用に読み始めたのですが、もう、先の展開が気になって気になってアセアセだけど、怖がりなので夜に読むのは怖くて、朝この本を読むために早起きしてまで読んでしまいました(笑)

 

ちなみに2020年には映画化もされていたようです。小説のなかでは重要な働きをしていた「堀田」は登場しない構成になっているそうでポーンどんな展開なのか、今更ながら映画も気になります。