去年から今年初めにかけ
半年ぐらいかかって
読み終えることができました。
小説「左岸」
女性側の物語は江國香織さん
小説「右岸」
男性側の物語は辻仁成さん
江國さんと辻さん
この作家の組み合わせといえば
「冷静と情熱のあいだ」ですが
こちらは
ある約束が軸になるお話なのに対し
「左岸」と「右岸」は
幼馴染で同じ歳の女と男
双方の物語に横たわるのは
出会いと別れ。
そして、また巡り会い…。
同じ時代を生きてきた
別々の人生が描かれていきます。
離れたり、時に近づいたり
また離れたりしながら
やっぱり接近して
だけど触れ合えきれず
交わりきることはなく
でも決して途絶えることのない縁
並行した人生の旅。
「左岸」は女性・茉莉の人生
因果は巡る
上巻を読み終えたときに達成感がまずあった、そして下巻を読み始めた時、茉莉に環境の変化や新たな出会いが訪れても、また同じようなことを辿る、因果は巡る話か?と察知し、言ってしまえば”話のオチ”が見えたような気持ちになり ちょっと読む気が萎えた。だけど実は決してまったく同じ展開にはならないから やっかいな話。
共感しながら読めたら話に のめり込めたかもしれないけど、そういう話ではなく、他人事として客観的な視点のまま見続けているような感覚。
どの人でもそうだと思うけど、人生とは 良くも悪くも 勢いがつくときと停滞するときがあり、それが文章の勢いにも表れていて、茉莉自身が停滞気味だと私も読むスピードが停滞し、何がが起こり動きがでて勢いが出始めると、グワッと前のめりで読み進む。
ぼやぼやと関わっているうちに、気が付くと緩急の波に乗ってトンネルを抜けてた。下巻の最初に感じていたような”話のオチ”は見えなくなっていて、ただただ茉莉がどうなっていくのか、その行方を追いかけていました。
「右岸」は男性・九の人生
出会い直しながら使命を果たす
「左岸」の茉莉は現実世界の中の物語だったのに対して、九は超能力者なんです。
九には特殊な能力があり、超能力があるがゆえの活躍と悲劇。そして現実世界の中で生きながら、亡くなった人を感じて常人には見えないものを見て 常人には受け取れない言葉を受け取れていたり、前世とか使命を背負う。それゆえの苦悩、記憶喪失など。劇的にドラマティックが詰め込まれている。
ガーーーッと全速力の展開が緻密な文に反映され、その流れにのって めくるめく展開のなかに引き込まれていく。人生の真理に辿り着き、運命の荷を下ろすまでを追いかけました。
私は「左岸」の茉莉の物語から先に読んで、「右岸」の九の物語で答え合わせをした。
この2つの物語のなか、それぞれ別々に様々な人達と出会うのですが、偶然にも両方の物語に関わり 影響を与える人物もいます。だけど同じ人物でも相手との関わり方によって印象が異なる。いろいろな人間模様。
茉莉の物語の中にいた九と、九の物語の中にいた茉莉。実際の茉莉と九。
互いへの思い入れの温度差も興味深かった。
「右岸」の中に この2つの物語の意義が語られていた。
"人生と人生の間には川がある"
私たちは こちら側と あちら側にいて、お互いの人生を見ることは出来ない。人間の数だけ岸辺がある、だから、岸辺に立って、大切な人のことを思う、という言葉。
(小説とは まったく関係ない感想ですが)
この2冊の本を読んで、あまりに違いすぎる2人の人生を見届けて得たのは”それぞれに見えている世界は違っている”という実感だった。
理屈では分かっていても やっぱり自分の見方だけで見てしまうことが。前よりちょっと冷静に。客観的になれたりなんかして。
なにせ、
全然違う 2人の人生だったから
だけど不思議な縁で結ばれた2人。
数ページごとしか進まない
ちびちびした読書なので
時間がかかったなぁ(^◇^;)
とにもかくにも
読み終えられてよかったです。